Lメモ・学園男女混合テニス大会! 第31章 「史上希な大博打」 投稿者:YOSSYFLAME


「ふう…」
控室。なにやらため息を吐いているのは、
次の試合、第3ブロック2回戦第2試合に出場する姫川琴音。
「琴音ちゃん、どうしたんですか?」
「あ、東西さん…」
彼女のパートナー・東西が優しく声をかける。
「コーヒー買って来たんですが、どうですか?」
「あ、すみません…、いただきます…」
そうして琴音の横に腰掛ける東西。
「緊張していますか?」
「え…、…はい…」
東西の問いに俯きながら答える琴音。
彼女らの1回戦はSOS、藍原瑞穂組。
紆余曲折あって、かなり有利な条件で闘うことができた二人は、難なく緒戦を飾ることができた。
しかし、である。
次の相手は優勝候補の一角、運動部にこの人ありとまで言われた新城沙織と、そのパートナー城下和樹との闘いなのである。
琴音が緊張するのも無理はない。
そんな彼女に優しく、
「大丈夫ですって、もし負けることになろうとも全力で戦えば、きっといいことがありますから。」
「でも…」
「僕らが練習してきたことを、そのまま出せばいいだけの話ですから。」
「…………」
そのまま俯いてしまう琴音。
東西はあえて何も言うことなく、そんな琴音を見つめていた。
全ては試合が始まってからだ。
そんなことを思いながら。



『さあ!  いよいよ第3ブロックも大詰めが迫ってきました!
2回戦第2試合、東西選手、姫川選手  対  城下選手、新城選手の対戦です!』
実況の緒方理奈もハイテンションが近づいてきた。
どうでもいいが、彼女ら実況役はどこにでも出没するが、それは一体どういう原理なのであろうか?
まあ、そんなことはそれこそどうでもいいが。
『両選手入場してください!』
理奈の声を合図に東西と琴音が入場してくる。
コートが歓声に包まれる。
「さて、頑張ってくださいよ。なにせ私達を倒したチームなんですから、あなたたちは。」
SOSが観客席に陣取って応援に来ている。
「…でも、私にとっては複雑です。」
「そうだな…」
藍原瑞穂と岩下信も、Bコートに来て観戦していた。
「ああ、藍原さんは新城さんと仲がよろしかったんですよね。
でもいいんですよ。こういうのは自分の思うままに応援すればいいんですから。」
そう瑞穂を宥めるSOS。
「…それもそうですね。」
瑞穂は笑って頷いた。

『ん?  城下選手、新城選手、入場してください!』
理奈が呼べども向こう側のコートからは何の反応もない。
俄かにざわつく観衆。
「…まさか試合放棄ってことはないと思いますが…」
SOSが呟いたその時、

「お待たせしましたーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」

元気のいい掛け声と共に現れたのは、まさしく沙織と城下の二人。
よほど急いできたのか、息を切らしている二人。
しかも、そのユニフォームは…
「あの、二人ともなんでバレーのユニフォームなんですか?」
「決まってるわよ。」
両手を腰に当ててえっへんと胸を反らす沙織。
「私達はバレー部のPRのためにこの大会に出場したのよ!
この格好こそが私達のユニフォームなのよっ!」
ごおおおお。
沙織の後ろに紅蓮の炎が巻き上がる。
「……………まあ別に、ユニフォーム自体に制限までしてはいないけど……」
こめかみに指を当てながら登場する審判員補佐の太田香奈子。
そんな彼女が、ビシイッ!  と、隣の城下を指さす。
「その格好はどうにかせんかいっ!  気色悪いっ!」
「何故です!  僕もバレー部!  バレー部がバレーの格好して何が悪いというのです!」
弾劾する香奈子に真っ向から反論する城下。
「…………何が悪いですって?」
一瞬、香奈子の瞳が殺意に彩られる。



「バレェ違いじゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーー
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラララ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラーーーーーーーーーーーーーッ!」
どっぎゃーーーーーーーーーーーーーん!

再起不能!  To Be Continued!







「終わらせるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「はいはいわかったから、その気色の悪いドレスとトゥシューズは脱いだ脱いだ。」
「ちえっ。」
何か不満があるようだがそれでも素直に従う城下。

かくして波乱の入場が終わり、いよいよ試合が開始された。



「いくよっ!  ひ〜の〜た〜ま〜  サーーーーーーーーーーーーーーーーブッ!」
沙織の必殺技・火の玉スパイクの改良系、火の玉サーブが琴音に襲いかかる!
「…えいっ!」
スパァンッ!
それをなんのことなく返す琴音。
「くっ、これがサイコキネシスかっ…」
城下もそのボールを打ち返し、俄かにラリーが始まる。
「ええいっ!」
そんなラリーに終止符を打ったのは、東西の琴音のサポートによる妙回転ストローク。
しかし、そうそう琴音とてサイコキネシスを使っていてはすぐにガス欠になってしまう。
その隙を突かれ、沙織の火の玉アタックが炸裂してゆく。
こうして一進一退の攻防を繰り返して行く両チームだが、
試合終盤、最後の最後になって琴音のサイコキネシスが全く効かなくなってきたのである。
「ひ〜の〜た〜ま〜  サーーーーーーーーーーーーーーブッ!」
バシッ!
「キャッ!」
琴音のラケットが弾き飛ばされる。
「ゲーム!  城下、新城組、6−5!」
「よっしゃあ!」
互いに手を合わせて喜ぶ沙織と城下。
あと1ゲームをとれば彼らの勝利が決まる。

「(くっそ…、一体どうすれば…)」
悩む東西。
琴音との何度もの調整により、1試合ぐらいの配分ならばサイコキネシスを使えると踏んでいたのであるが、
沙織と城下の猛攻撃により、予想よりだいぶ早くサイコパワーを消費してしまったのである。
疲労感と能力の副作用である睡魔が琴音を襲う。
もう既に意識朦朧の琴音。
方法はないわけでもない。
しかし、この方法はかなりのハイリスクを伴う上に、下手をすれば全てが終わりかねない、
それほどの賭けでもあった。
しかし、成功すれば…
「東西選手、試合放棄ですか?」
審判の注意が飛ぶ。
もう一刻の猶予さえ許されない。
ええい、ままよ!
半ばヤケになって東西は運命の扉を蹴り破った!





「ボインターーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッチ!」




むにゅ。
観客席にまでその擬音が聞こえてきた。
そして、一瞬何が起こったかわからないかのように、瞳を見開いてる琴音。
その一瞬後、落雷が落ちた。



「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」



どっぐぉぉぉぉぉぉぉん………
琴音の周り5メートルのコートがくり貫かれてクレーターと化した。
ところどころのフェンスや照明灯などもところどころぶち割れるありさま。
「東西さん……どういうおつもりですか……」
覚醒はしたが、完全に目が据わっている琴音。
「違うんだ違うんだ琴音ちゃんっ!」
すでに敬語を使うことすら忘れ、うろたえる東西。
「何が違うというんですか…」
すでに何かが違っている琴音。
「めっさ…」

「お姉ちゃんっ!」

東西絶体絶命のピンチ、そして琴音失格のピンチを救ったのは、なんとOLHの幼な妻笛音。
「お姉ちゃん、おしおきはあとだよ、しあいがさき!」
「そうだよ琴音ちゃん、一時の感情に流されてはいけない!お仕置きなら後でゆっくりできるから。」
OLHも必死に琴音の暴走を止める。
「笛音…OLHさん…」
一瞬、琴音の目が正気に戻る。
「わかりました。とりあえず試合に専念します。…とりあえず。」
しかし、そういって沙織達の方を振り向いた琴音の顔は
「…ひいっ!」
既に一種の殺気を漂わせていた。



「い、いくよ琴音ちゃん!  ひ〜の〜た〜ま〜  アターーーーーーーーーーーーーーーーック!」
どきゅっ!
沙織の必殺火の玉アタックが琴音を襲う!

「…滅殺です。」

「えええっ!?」
驚愕する沙織。
火の玉アタックの威力が完全に霧散してしまったのだ!
「…いきます。」
琴音の気合と共に、その腕が目にも止まらぬ速さで振り下ろされる!



「――瞬獄殺!」



ぶしゅぅぅぅぅぅぅぅ!
「どっぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「城下君っ!」
一撃。
気を注入された一弾をくらい、完膚なきまでに吹き飛ばされた城下!
即座に審判が近寄るものの、

「城下選手、試合続行不可能とし、東西、姫川組の勝利といたします!」

「よっしゃあ!」
手放しで喜ぶ東西。
いくつかの偶然のおかげもあろうが、結果的には彼は賭けに勝ったのだ。
非常なハイリスクに覆われた賭けに。
「琴音ちゃん、勝った…」



しかし、彼は忘れていた。
試合に勝とうが何しようが、払わなければいけないものがあったことに。





      東西×姫川琴音組…3回戦進出なるも、3回戦出場できるんでしょうか?
      城下和樹×新城沙織組…2回戦敗退。さて、バレー部再興の夢は…?



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姫川琴音(特別出演):――瞬獄殺!
ぐしゃぐしゃどかばきごしゃぁ!

ゆかり:姫川さん、気が済んだ?
琴音:はい、どうもありがとうございました…
ゆかり:よかった。じゃあ、3回戦頑張ってね。
琴音:…はい。

ゆかり:というわけでこんばんは、広瀬ゆかりです!
        今日もまた私一人でやらせていただきますね。
        今回もまたグラップラーのパクリなんかして…
        beakerさん、本当に申し訳ありませんでした。
        申し訳ないといえば城下さん、本当に申し訳ありませんっ。
        無論このまま終わらせる気は全然ないので、次回は城下さんと新城さんのその後がからんできます。
        果たしてバレー部の運命は……
        さてそれと、次の試合は、セリス×マルチ組vsT-star-reverse×松原葵組の対決です!
        たまにこんなしょうもない試合展開になりますが、見放さず見てやってください。
        では、失礼いたします。



城下和樹さん、今大会への参加、まことにありがとうございました。