Lメモ・学園男女混合テニス大会! 第18章 「過去の絆から未来(さき)への絆へと」  投稿者:YOSSYFLAME

この世界に、もし、『永遠』というものがあるとすれば、
俺は、あのころの永遠を求むかもしれない――



試合コートから少し離れた、生徒もあまりとおらない芝生に、九条和馬はいた。
昔馴染んだラケットを手で弄びながら、彼は物思いに耽っていた。
彼のパートナー、河島はるかは、今頃更衣室で更衣をしている。
凄まじく時間にルーズな彼女だが、そのあたりのところも、既に盛り込み済みであったりする。
傍目には、”優勝候補ナンバーワン”といわれている二人。
しかし、和馬にとって、そんなものはどうでもよかった。…わけではない。
菅生誠治の呼びかけに呼応して集まった一部の3年生集団。
彼らが目指しているものは一つ。

『思い出作りのための優勝、そして賞品獲得でさらなる思い出を。』

ポーン…
ポーン…
ボールをラケットで軽く弄ぶ。
「(………………)」
思いふける和馬。
彼とて普通の3年生だったりする。
同級生と共に何かに打ち込み、その結果に一喜一憂。
そして、同じ目的のために全力を尽くした仲間達と、泣き、笑い、そして、かけがえのない思い出を作る。

「(…はるかさん)」

一人ごちる。



『テニス』



彼らにとってその単語は、並みならぬ意味を持っていた。
和馬が憧れていた。
はるかが本当に好きだった。
今は亡き、”あの人”。
その”彼”が本当に愛し、和馬を、はるかを、巻き込んで。
”彼”の一部と言っても過言ではない、”テニス”。
楽しかった。
そんなあの人について行くことが、かけがえのない時間だった。



――突然だった。

”彼”との別れ。
もう二度と会うことのない。
あまりにも突然の――別れ。



――

「あ。」
「…はるかさん。」
しばし思いふけっていた和馬の前に、はるかが現れた。
久々のテニスウェアは、なんともサマになっている。



――

彼らが楽しそうに繰り出す、テニスボールの弾む音がしなくなった。
”彼”が永遠の旅路について数年。
はるかは、もう、あの軽快なリズムでボールを弾ませることはなくなった。



――

「さてと、練習しようか。」
「ん。」
人の少ない晴れた青空の下、綺麗に整備された芝生でウォーミングアップをはじめる二人。
綺麗な軌跡を描き、軽快な音を奏でる硬球。



――

痛ましかった。
心から好きだった最愛の兄の死。
と、共に、はるかがテニスを捨てたことが、和馬にとって本当に痛ましかった。
和馬も、はるかの周囲の人間も、そんな彼女を見るに痛ましかった。



それから、はるかがラケットを再び握るまで、まさに紆余曲折。
数え切れないくらいの過程と、数え切れないくらいの心の律動。…数え切れないくらいの心の触れ合い。
かくして、はるかはラケットを再び握った。








――――そして、

和馬は思うのだ。
このテニス大会、はるかにあげたい贈り物。

『テニス』

この単語にまつわる思い出に、いい思い出を加えてやりたい。
”彼”の出来事を忘れられる訳もないし、忘れさせる気など毛頭ない。
しかし、
それだけでは、あまりにも寂しすぎやしないだろうか。

優勝する。それだけの実力も自分達にはある。
誠治の企画した”思い出作り”。
はるかのために、一枚噛む決意をした和馬。



歓声の渦巻く中、コートに一歩を踏み出す。
かつては二度と踏み込むことはないと思っていたコートに、しっかりと一歩を踏み出す。
対戦相手の橋本と来栖川芹香の姿が見える。
彼らも、”思い出作り”の同志ではあるが、…手抜きはしない。
全力で闘うことこそ、礼儀なのであるから。

「ん。」

もう、迷いはない。
好きな人の舞台で闘える嬉しさを胸に、
はるかの短い激に送られ、和馬は大きく、大きく振りかぶった――










どさっ。

「…あ、脈がない。」





      橋本×来栖川芹香組…2回戦進出!
      九条和馬×河島はるか組…和馬、吐血による失血KO。





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ごしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!



ゆかり:こんにちは、広瀬ゆかりです!
        えっと、今作のコンセプトは、『河島はるかを包む絆』…なんですが、
        表現出来たでしょうか?
        よっしーは用事があってこられないそうですが、
        意見質問など、容赦なくどんどんぶつけてやってください、いやホントに(深々)。
        次回は、ルミラ戦その後と、まだしていない試合を入れようと思います。
        呆れないで見てやってください。(べこり)



九条和馬さん、今大会へのご参加、誠にありがとうございました。