Lメモ・学園男女混合テニス大会! 第19章 「龍虎激突!」  投稿者:YOSSYFLAME
「おい!  たける、しっかりしろ!」
「たけるさんっ!」
自らの親友の電芹に抱かれて憔悴しきっている川越たける。
一回戦で、ルミラ×神凪組の圧倒的力の差を埋めるため、
パートナーの長瀬祐介の電波によって身体機能を増幅させたたける。
しかし、その代償はあまりに大きかった。
限界以上の能力を無理矢理引き出したたけるは、もはや満身創痍。
秋山や電芹の必死の呼びかけにも反応する気配がない。
「たける、おい、たける!」
「たけるさんっ!  しっかりしてくださいっ!」



「…ふう、そんなことだろうと思ったわ。」

「「ルミラっ!」」
そんなたけるのところに無遠慮に近づいていったのは、さっきまで死闘を繰り広げた相手、ルミラ。
「人間のくせに、自分の限界をわきまえないからそうなるの…」
言い終わる前に、胸倉を掴まれる。
「貴様ぁっ!」
「あ、秋山さんっ!」
激昂する秋山に、そんな彼を止めようとする電芹。
しかしながら、全く意に介さぬようにたけるの額に手をかざすルミラ。
「…離しなさいな。今からこのコに魔力を注ぎ込むから。」
「…何!?」
驚嘆する秋山達をよそに、ルミラが魔力のオーラでたけるを包み、そして注ぐ。
「どういう訳かこの子、私…っていうか、魔族の魔力と妙に波長が合うのよね。人間にしては結構珍しいことよ。
ともあれ、これで彼女は回復する筈。」
そう言って魔力を注ぎ続けるルミラ。
そして…

「ん…んっ…」

「たける!」
「たけるさんっ!」
顔色がみるみるうちに良くなりつつあるたける。
その様子を見ながら、安心したようにルミラが呟く。
「これで身体機能も回復したでしょ。」
「有り難い。」
「ルミラさん、ありがとうございます。」
「いいのよ、私もこの子、気に入ったからするんだし。
ただ、ある程度の適性があるとは言え、やっぱり私たちの魔力治癒は、人間には劇薬級であることには変わりがないの。
そんなそんなホイホイできる治療じゃないからね……」
そう言いつつ、
「この子に伝えておいて。」
「え?」
「とっても楽しかったって。
そして、私たちを倒したからには、優勝しなきゃ承知しないって。」
本来のあっけらかんとした笑みを浮かべ、いつもの軽口を残し、ルミラは去っていった――




そして――




『Dコート第8ブロック一回戦第2試合、岩下、藍原組vs西山、柏木楓組、まもなく開始いたします。
  繰り返します。Dコート第8ブロック一回戦――』

「…信さん。」
もう数十分になろうか。
藍原瑞穂がパートナーの岩下信をずっと見つめているのは。
そして、岩下はその数十分、延々と壁打ちを続けていたのである。
いや、
SOSに送ってもらった瑞穂が、彼のもとに着いたとき、すでに彼は黙々と練習をしていたのである。
鬼気迫るような表情で、正確無比、ただ一点を狙いすましたようなショット…
とまではいかない。彼とてそれほどテニスにこなれている訳ではないのであるから。
しかし、この練習の目的は、そんな些細なものではない。
”闘争心”
戦闘モードのスイッチを入れるため、エンジンを温めるのが真の目的。

「信さん、時間です。」
いつもの調子で瑞穂が言う。
その瞬間、岩下の腕に”気”が溜まる!



しゅぱぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーんっ!



「きゃっ!?」
思わず悲鳴をあげる瑞穂。
岩下の手によって放たれたボールは、壁に反射し、宙空高く消えていった。
「……しっ!」
準備万端!  といった面持ちで瑞穂の元にゆっくりと歩んで行く岩下。
そんな彼にそっとタオルを渡す瑞穂。
そして、二人は歩いて行く。
緒戦にして強敵、そして、一度は闘ってみたかった男との戦場に。
二人は何も口をかわすことはない。
口で言葉を紡がなくとも、互いが互いを知っている。






こちらも数十分。
控えテントで瞑想をしている弁髪の男。
ひたすら鎮めている。
そして、集中している。
己が力に囚われぬよう。
高ぶる心を押さえるように。
一度は手合わせをしてみたかった相手。
純粋な格技でないことに物足りなさを感じてはいたが、それはそれで一興。
己が流派の力、存分に発揮させてもらうことにしよう。

傍らに控える少女。
その男の鎮めてる心も、その内の高ぶる心も、全て承知。
優しい眼差しで彼を見つめる。

「英志さん、時間です…」

男は無言で瞑想を解く。
そして、傍らに少女――柏木楓――を伴い、一歩を踏み出す。
そう、修羅の戦場へと――





『すっごーーーーーーーーーーいっ!  超満員!  超満員ですっ!
  一回戦最大のカードと目されている、岩下信、藍原瑞穂組vs西山英志、柏木楓組の
  まさに夢の対決に、観衆も期待を隠せませんっ!』




まさに超満員。
ジャッジのリーダーと、SS不敗流の宗主の直接対決に期待胸躍らせる観衆達。
それだけではなく、多くの選手達も偵察のため選手席に陣取る始末。



「さて、こっちはこっちの試合に全力を尽くそうか、マルチ。」
「はいっ!」
隣のコートで一回戦を闘うセリス、マルチ組。
隣のコートが異様な熱気に包まれようと、なんら動ずる様子すらない。
既に対戦相手のmakkei、川越たける組が向かいのコートで待機している。
たけるの方に疲れが残ってるようだが、強敵には違いない。
そう、セリスには他のことに気を配っている場合ではないのである。
「(信と西山の勝負は…この試合が終わってからの楽しみだ!)」





試合開始前の握手を交わし、それぞれのコートに別れて行く岩下組と西山組。
「サーブ!  西山組!」
ポーン…
ポーン…
無言のままボールを弾ませる西山英志。
彼必殺のSS不敗流に楓からのアレンジが加わった今の彼には、強烈な自負があった。
そう、
”絶対に負けぬ”という自信が。
「いくぞぉ!  岩下ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

しゅぱあぁぁーーんっ!

鋭いサーブが岩下を襲う!
「なかなか鋭いっ!」
しかしながら余裕をもって打ち返す岩下。
「……何っ!!」
その岩下のリターンに完璧に反応している西山!
「とりあえず挨拶代わりだ!  受け取れ!」



バアァン!  ギュロロロロ…………!



SS不敗流をテニスに応用した魔拳!
そのラケットに打ち返されたボールが唸りをあげ、岩下の真正面に!
「信さんっ!」
瑞穂の悲鳴と共に岩下が動いた!
「キレが甘いぜっ!」



ドキャッ!



自らの真正面めがけて放たれた豪球を思い切り振り切り打ち返す岩下!
そのままそのボールは西山のコートに突き刺さる!



「イン!  0−15!」



「…ふ、なかなかやるな、さすが岩下信、といったところか…」
「そっちこそ…、西山英志の実力、この試合で全て見せてもらう!」
まだまだ序の口、といった口調の二人。
そう、この対決は、まさに始まったばかりなのである。




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どおもお、YOSSYです。

ゆかり:こんばんは、広瀬ゆかりです!
よっし:さて、今回のコンセプトはもう、まさに岩下さんvs西山さんの勝負に尽きるでしょう!
ゆかり:まさかこの2組が緒戦で当たるとは思わなかったわねえ…
(注:本当に無作為抽選の結果です・笑)
よっし:互いに本格派同士の対決!  息をつかせぬ勝負になることうけあいですねっ!
ゆかり:でもこの2人、テニスの技術的には完璧というわけでもないでしょう?
よっし:そ。で、今回目立たなかったそれぞれのパートナーが鍵を握ると思うのよ、俺は。
ゆかり:それを踏まえてさて次回は?
よっし:死闘決着なるか!?  岩下組vs西山組!
        そして、目立たないとは言え決して実力は劣らないセリス組vsmakkei組!
        はっきりいって熱いです、この2試合!
ゆかり:あとはあなたの腕(執筆)次第ねっ♪
よっし:あう…


岩下信さん、西山英志さん、セリスさん、makkeiさん、
今大会への参加、誠にありがとうございました。