Lメモ・学園男女混合テニス大会! 第22章 「不調…!?」  投稿者:YOSSYFLAME
『えー、大会本部より連絡です。
第7ブロック一回戦第3試合の、夢幻来夢、柏木初音組  対  Hi−wait、月島瑠香組の試合は、
Cコートにて行いますので、準備方よろしくお願いします。
なお、第8ブロック一回戦第3試合の、デコイ、長岡志保組  対  秋山登、日吉かおり組戦は
そのままDコートで行います。
繰り返します――』





「だって、行こうか、夢幻くん。」
「ああ。
…見てれやゆき!  すぐにお前らんトコいったるからな!」
意気揚々とCコートに向かう来夢。
「…ブロック決勝か…」
未知なる期待に胸躍らせるゆき。



第7ブロック一回戦第3試合。
下馬評ならば、全体的な運動能力に勝る来夢組が有利と目されている。
しかし、試合は予想を覆す大混戦になっていたのである。

「いりゃあぁぁぁぁぁ!」
ドバシッ!
来夢の格闘張り振り切りリターンが鋭い軌道を描いて突き進む!
パンッ!
それを無難に打ち返す瑠香。
パシッ!
そのリターンを落ち着いて返す初音。
パン!
これまた無難に返すHi−Wait。
…あー、つまり、
とてつもなく地味な試合が展開されていたのである。





「ちょっと!  なんであんなのが返せないのよっ!」
「じゃあテメエが返してみやがれや!」
「あ、あのー…、試合、進行したいんですが…」

第8ブロック一回戦第3試合・秋山登組vsデコイ組。
序盤はデコイ組が押し気味に試合を進めている…のだが、

「しょっ!」
スパンッ!
デコイの切れのあるサーブが、秋山の足元に綺麗に決まる。
「へー、アフロのわりになかなかやるじゃない、手下B。」
「その呼び方やめろよ…、それになんだその”アフロのわりに”っていうのは…」

両者とも、なにかと問題があるようで…




――再び7ブロック第3試合。

「ゲーム!  夢幻、柏木組、4−4!」

「よし!  いけるでこの試合!」
「うんっ!」
はっきり言ってしまえば、テニスに関しては全くの素人の二人。
しかしそれでも、来夢の独特の格闘センスと吸収力のよさで、
はじめこそやや押されていた試合をも、だんだんと自分のペースにすることができた。

「だあっ!  このままだと俺の存在は、
”ただひなたのバスターを食らっただけの男”としてテニス大会史に残っちまうじゃねえかっ!」
「あれ?  違ったんですか?」
「…瑠香、貴様随分偉くなったもんだなあ…、あぁ?」
「わわわわっ、すみませんすみません、冗談です冗談っ!」
こめかみに青筋など立てているHi−Waitに対し、慌てて弁明する瑠香。
「それよりも、このままだとちょっとまずいですね…、私、頑張りますねっ!」
元気よく位置につく瑠香。
Hi−Wait組のほとんどのポイントは、この瑠香が奪ったポイントだったりする。
「えーいっ!  正義のしょっとですっ!」
極めて直線的な瑠香のサーブ。
「しゃらくせえやあっ!」
バキャッ!
鋭いフックのような来夢のリターン!
「なんのっ!」
負けじと、Hi−Waitがリターンを返すが、そこにはなんと初音がいたりする。

ぱくっ。

ゆきと組んで、あの東雲恋すら退けた初音の得意技・ボレーが、この試合でも大当たり。
来夢の大雑把ではあるが、豪快なショットと繊細な初音のショット。

「ゲーム!  夢幻、柏木組、5−4!」

「やったね初音ちゃん、夢幻くん、あと1ゲームだよ!」
「ケ!  暗躍生徒会いうもんやからどれだけの実力かと思ったら、
どれもこれもたいしたことのない奴らやなあ!」
聞こえよがしに挑発する来夢。さすがにそれはヤバイと制止するゆきと初音ではあるが、
「なんですって!  勝ちも決まってないのに、その言い方はないでしょうっ!」
案の定激昂する瑠香。
「Hi−Waitさんっ、悔しくないんですか、そこまで言われて!?」
「………。」
「Hi−Waitさん!?」
「…ま、いいんじゃないのか?」
「………っ!」
思わずそっぽを向いてしまう瑠香。
いよいよリーチがかけられたとは言え、そんななげやりな態度をとるような男ではないはずだ。
今、自分の目の前にいるHi−Waitという男は。
確かに試合序盤から元気がなく、
さっきの態度にしても、どこか無理してるらしい節があったりする。
そのカラ元気にしても、この試合リーチがかけられて、ついにポッキリ支えられているものが折れてしまったのだろうか?
だとしたら、さっきの態度はちょっとなかったのかと、瑠香は思ったりする。
「あの…」
「ん?」
「元気出してくださいねっ…
何があったかは私にはわかりませんが、でも、やれることは全力でやりましょう!
つらいかもしれないですけど…、ね?」
心底心配してくれている瑠香の気持ちが痛いほど伝わってくる。
「…ああ、心配かけてすまない。」
そんな瑠香に対してしてやれること、それはただ、彼女に応えて笑ってやることだけ――



「ひなたさんったら、やーみいさんの試合があったことすっかり忘れてたなんてっ!」
「仕方がないでしょう!  師匠と岩下さんの死闘を見せられた後なら、
誰だってしばらくは余韻が残りますよ!」
西山組vs岩下組の試合を見終わってから、飲み物でも買ってくつろいでいた風見ひなたと赤十字美加香。
すっかりくつろいでしまって、親友Hi−waitの試合を忘れていたのである。
慌てて会場に猛ダッシュで突っ走る二人。
「とにかく急ぎましょう!
もしかしてもう試合は終わってるかもしれませんけどっ!」
「まあ、僕のバスターには及びませんが、あれでもやーみいはテニスに関しては実力者!
そう案ずることもないでしょう!」
「…そう思います?」
声のトーンが低くなっている美加香。
「瑠香ちゃんに聞いたんですけど、最近どこか元気がないらしいんです、やーみいさん。
もしかしたら、それが原因で不覚を…」

げしっ!

そんな美加香の頭を思いっきり小突く風見。
「ふん、あのやーみいがそんなことで落ち込むタマなものですか!
ほーら見てご覧なさい!  今まさに勝ち名乗りを受けようとするやーみいの姿が――」





風見が指を指した先。
おそらく負けた悔しさからであろうか。
そこには、一組の男女が呆然とコートに立ち尽くしていた――

「ゲーム!
アンド、マッチ・ウォン・バイ――





――Hi−Wait、月島組!  ゲームポイント、7−5!」





「そんな…」
立ち尽くすゆき。
まさかまさかの自滅試合。
ことごとくボールはラインを割り、
マトモにコートに入ることなく、それだけで逆転されてしまったのである。

「…テニスはほんのささいなことで簡単に勝敗がひっくり返る繊細なスポーツよ。」

「東雲さん、宇治くんも…」
東雲恋と宇治丁。
彼らもこの試合を観戦していたのであろうか?
「随分あの人との対決にこだわってたようだけど…さっきも言った通り、テニスなんて水物。
彼…夢幻くんはよくやったわ。
ただ、試合の流れが彼に味方しなかっただけ。」
「東雲さん…」
実際ゆき自信も、恋との試合で4ゲーム差をひっくり返しての逆転勝利をあげている。
それだけに、恋の言葉にはかなりの重みを感じるのである。
ただ、その恋が、厳しい表情でHi−Waitの方を睨み据えているのが、妙に印象深かった。





握手を終え、意外に落ち込んでいないかの様子で戻ってくる来夢と初音。
「いやあ、とちっちまったわあ。」
苦笑混じりで話す来夢。
「でもま、こんなこともあるってもんやな、明るくいこうや明るく!」
まだ自分とのペアが残ってる初音はともかく、意外なほどに立ち直りの早い来夢。
かえって初音の方を慰めてやらなければいけないくらいだと感じた。
「ごめんね、夢幻くん、ミスしちゃって…」
「なん、気にすんなって、ミスしたのはお互い様やっ!」
落ち込む初音の肩を叩きながら笑いかける来夢。
「ゆき。」
「ん?」
「俺らの仇、とってくれやなっ!」
そう言って、ゆきの右手をガッチリ握る来夢。
「(………あ。)」
ゆきは感じた。
握られた右手にかけられた圧力の違いを。
そう、悔しくない訳なんかない。
それを押し殺して、あえて明るく激励してくれているんだ。
ゆきは握られた来夢の右手を、彼以上にガッチリ握って、そして言った。

「うん。…勝つよ。」



      Hi-wait×月島瑠香組…2回戦進出!
      夢幻来夢×柏木初音組…1回戦敗退。





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どおもお、YOSSYです。

ゆかり:こんにちは、広瀬ゆかりです!
        …ところで、随分と切ない試合になっちゃったわね。
よっし:西山組vs岩下組の必殺技の応酬の後だから、それに増してね。
ゆかり:でも、この試合、いろいろあるわね。
よっし:ま、そうだな。詳細は後にさせてもらうことにして、
        次回で本当に1回戦全ての試合が終わります。
        デコイ、長岡志保組  vs  秋山登、日吉かおり組、決着編です!
ゆかり:この2チームの闘い、待っていてくださいね!
        それではこの辺で今日は失礼いたします(ぺこん)



夢幻来夢さん、Hi-waitさん、今大会へのご参加、誠にありがとうございました。