Lメモ自己紹介SS第5話「洗練された漆黒・後編」 投稿者:YOSSYFLAME


−おねーちゃん。
 おねーちゃん、ずっと・・・ぼくのそばにいてくれるよね。
 ね?おねーちゃん・・・


「・・・・・・・・・・」
おねーちゃん、かみになにかかいてる。
けっこん?ふーん・・・
おねーちゃん、しあわせそうだね、おめでとう!



「可哀想に・・・」
「失語障害ってことで目をつけられたんでしょうね・・・」
「結婚を楽しみにしてたのに・・・なんでこんな目に・・・」
「まだ、亡くなるには早すぎるというのに・・・」


−なくなる?
 おねーちゃんがなくなっちゃうの?
 うそだよね。
 おねーちゃんはなくなったりしないよね。


「もう、お姉ちゃんはもどってこないの。
遠いお空にいっちゃったの・・・」


−うそだ!
 おねーちゃんがかえってこないなんて!
 あんなにわらっていたのに。
 あんなにしあわせだったのに!!・・・・・
















−放課後、格闘部−
「こんにちはーっ」
いつものように部活に顔を出す。
「ん?葵ちゃん早いな、こんにちは、葵ちゃん。」
「・・・・・・」
「あの?葵ちゃん?」
「・・・・・・」
「(どうしたのかな・・・?)」
本当に記憶が飛んでいるらしい。
「お〜っす!」
「よ、綾香。」
「綾香さん、こんにちは!」
綾香が顔を出すいつもの光景。
「YOSSY、ケガの具合はどう?」
「うーん・・・まだ響くかな・・・?
風見の野郎・・・手加減なしなんだから・・・。」
「だったら休めばいいじゃないですか。」
いつもとは違う、冷たい葵の声。
「・・・あ、そうそう、ちゃんと葵に礼言ったでしょうね?」
と、綾香がにやけて言えば、
「お礼なんかいいです。綾香さんに言われてしただけですから。」
「葵?」
「葵ちゃん?」
「すみません、今日は体調が悪いので休ませてもらいます。」
すたすたすたすた・・・・・
返事を聞く前に道場を出ていった葵。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
呆然としている綾香とYOSSY。が、唐突に綾香の表情が変わる。
YOSSYの胸ぐらを掴んで、
「あんた・・・あの子に何をしたの?」
「何もしてないが・・・」
「何もしてなくて、あの子があんな態度をとる訳ないでしょ!!」
殺気が浮かぶ綾香の目。
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
睨み合う二人。
「・・・・・葵に事情を聞いてみるわ、
事と次第によっては、アンタを絶対に許さないわ。」
道場を出てゆく綾香。
「(・・・なんだってんだ、いったい?)」
不満の表情を表に出してつぶやくYOSSY。
「なにかあるなら、誤解はといとかなきゃな・・・」
と、道場を出たすぐ後、一つの影がYOSSYの前に現れた。

「・・・お久しぶりです、YOSSYさん・・・」
「く、葛田さん!?」
転校前からの唯一の知り合いにして、転校のきっかけを作った人物、葛田玖逗夜。
今までも暇があれば捜していたのであるが、今頃自分から出てくるとは?
「・・・会わせたいお方がいます。会ってくれますか・・・」
「いいですけど・・・どなた様で?」
「・・・会えばわかります・・・」
「(うーん・・・葵ちゃんのことも気になるけど・・・
この人、この機を逃したら次はいつ出てくるかわからないもんなあ・・・)」
ちょっと考えた末に、
「わかりました。行きましょう。」



「はあはあはあ・・・」
息を切らせ壁に寄りかかる葵。
「(先輩の馬鹿!一言謝ってくれたら許してあげるのに!)」
(ダァン!)
拳を壁にぶつける。
「(知らないなんて・・・!なんでそんなこと言うの!?)」
そう思って、ふうとため息をつき、額を壁におしつける。
「松原さん?」
「!・・・ティー先輩・・・」
ティーことT−star−reverseが葵の顔をのぞき込む。
「なにかあったんですか?」
優しい微笑みで葵の目を見つめるティー。
見つめられる葵の目がみるみる潤んできて・・・
「・・・ううっ・・・ぐすっ・・・うわぁぁぁぁん!!」
「ま、松原さん!?」
感極まってティーの胸に飛び込み泣きじゃくる葵。
「先輩・・・先輩っ!・・・わぁぁぁぁぁ!!」



「・・・ここです。」
「茶道室?」
葛田に案内された場所はごく普通の茶道室だった。
「・・・・・!」
感じる。
部屋の奥から凶々しい暗黒の気が立ちこめているのを。
いや、違う。
上座に座る漆黒に身を包んだ男から「それ」が放たれていたのを察した。
「(!・・・こいつは?)」
見たことがある。
綾香と昼食をとっていた二人のうち一人だ。
あのときも漆黒に身を包み、肩にカラスをとまらせていた。
「(綾香も男の趣味悪いよなあ・・・、少なくとも外面は・・・)」

「ようこそ、YOSSYFLAME君。」
「あ、どうも・・・」
あっけにとられたのか、笑顔で、というわけにもいかない挨拶。
「我が名はハイドラント、よろしくな。」
そういって右手を差し出す。
「こちらこそ、よろしくお願いしますね。」
右手で握り返すYOSSY。
「利き腕か?」
「右手ですか?そうですけど。」
表情を変えないそのままで、
「いやにあっさり利き腕を預けるのだな。」
「・・・そういえばそうですね。」
愛想笑いを浮かべるYOSSY。
しかし、笑い返すでもなく、不快さを出すでもなく、ただ無言の沈黙。
「(やりずらい男だなあ・・・)」

「粗茶ですが。」
ハイドラントの秘書(?)が茶を差し出してくれた。
「菓子もあるぞ。」
「どうもです。それじゃいただきます。」
無造作にイチゴ大福に手を出し、茶をすする。
「うまいですねえ。どこの大福ですか?」
にこにこ笑いながら尋ねるYOSSY。しかし、無言のハイドラント。
「どうしたんですか?・・・ああ、客だからって全部は食べませんよ。
どうぞ、僕に構わず。」
と、ハイドラントに皿を差し出す。
「君を見損なったかもな。」
ポツリとつぶやくハイドラント。
「はい?」
「握手といい、この茶菓子といい・・・なにかがあるとは考えないのか。」
「考えてますよ。」
不可解。
この無表情男が初めて見せた表情である。
「・・・そうすると、君は私を信用しているのか?」
やや不機嫌な表情で尋ねるハイドラント。
「んー・・・、どこをどう考えても貴方が本気で僕を貶めるとは考えられないんですよ。」
「・・・・・・・・」
「「今」の貴方が「今」の僕を毒殺する理由もないでしょう?
信用じゃなくて、利害の問題ですよ。」
にこりと笑うYOSSY。
「ふっ・・・」
笑み。
初めての好意的(?)な表情に、ついつられて笑うYOSSYであった。

「で、僕を呼びだした用件は?
まさか敵中心得の講義が目的で僕を呼んだ訳じゃないでしょ?」
ハイドラントは何も言わず、TVのスイッチをONにした。
「(今頃は主婦層が中心のワイドショーがやってるはずだが・・・)」

『・・・、というわけで、一月前に発生した、青少年集団惨殺事件の犯人の手がかりはまだ
いっこうにつかめておりません・・・』

いかにもワイドショー向けのネタである。
ちょっとたつと、物知りの文化人気取りの評論家が出てきて、

『チーマー同士の抗争でしょうかねえ・・・
最近の若い者は短絡的で・・・』

「(くすっ)」

こないだは、別の評論家が「中毒者の犯行」とかいってたな・・・
切り口を見れば解りそうなものだろが・・・

ここではじめてハイドラントが機嫌の良さそうな口調で、
「綺麗な仕事をするじゃないか。」
にやりと笑うYOSSY。
「まあね・・・」
「葛田から聞いた。男は無論、逃げる女や許しを乞う女まで殺したそうだな。
ウチでは殺人者はそこそこいるが・・・、女を斬った奴、しかもすべて急所を外して殺すとはな。
巷の評判では女には優しいと聞いたが?」
「優しいですよお、僕は。」
と、いつもと変わらぬ表情で傍らに控える女に笑いかけるYOSSY。
「一つ訂正していいですか?」
「・・・・・・・・」
「俺は女の子を殺したことなんかただの一度もありませんよ。」
ハイドラントが興味深そうに、
「では、「あれ」は男だというのか?」
「男性でも女性でも殺したことなんかないですよ。
僕がやってるのは・・・、」

洗練された漆黒。奥に眠る復讐の炎。
「「外道狩り」ですよ・・・」

(ぞくっ・・・)
背後に控えた葛田と女が一瞬震える。
「震えたか、葛田。」
にやりと笑うハイドラント。
「恥じることはない。ここで震える男こそがこの男と闘えるのだからな。」
強者は強者がわかるという。その事をいっているのであろうか。
「貴方は震えませんね。」
ハイドラントに笑いかけるYOSSY。
「貴方と本気ではやりたくないものです。」
認識している上で震えない。その恐ろしさは十分熟知している。

「風見ひなたは殺害対象とはならなかったのか?
奴も外道で通っているが。」
その質問に思わず吹きだし、
「あれとは全然違いますよ、僕が狩る外道は。
あいつは人間的にも面白い奴です。殺すわけないでしょう。
ま、殺そうと思っても出来るかどうかは甚だ怪しいですけどね。」
「赤十字美加香もいることだし・・・か?」
初めて二人が声を出して笑った。
「あの女の風見を守るための危険感知力は並ではないぞ。」
「みたいですね。」
「最後の君の決め技・・・決まってたら、風見はヤバかったからな。」
「それで万が一の保険、小型爆弾ですか・・・」
「風見を守るためならどんな悪女にもなれる。ある意味我が師匠より怖いかもな。」
「我が師匠って?」
「げ・・・いや、気にするな、忘れてくれ。」



「では、な。」
「ええ・・・」
右手同士の握手。
「最後に聞いていいですか?」と、YOSSY。
「何だ?」

「生きる価値のない人間っているのでしょうかね。」
ハイドラントはニヤリと笑って、結局質問には答えなかった。
「貴方とは仲良くやっていけそうですね。」
YOSSYもニコリと笑いかけた。



「導師・・・」
「何だ?」
「何故、とりこまなかったのですか?」
「無理だな・・・」
「それ」は、対象人物が心にダークを秘めている時にこそ有効となるもの。
「あの男はダークのまま日常生活を送っているからな・・・
ダークを磨いて磨いて、判別できないまでに精巧に加工しているのさ。」
「なるほど・・・」
「ダークでもあり、ナンパ師でもある。性質融合だな。」



「ん?」
帰路の途中、一つの人影がYOSSYの前に立ちふさがった。

「YOSSYさん。」
「ティーさん?」
「松原さん・・・泣いてました。」
「!!」
「詳しいことも聞けないまでに泣いていたんです。」
無表情で淡々と話すティー。
「今は綾香さんに見てもらってます。」
「(俺・・・一体葵ちゃんに何をしたんだ!?)」
「僕は貴方を許せません。」
ティーが静かに戦闘態勢に入って行く。
「(葵ちゃん・・・葵ちゃん!?)」
動揺して戦闘どころではないYOSSY。
「待ってくれ!葵ちゃんに会わせてくれ!彼女と話がしたい!!」
瞬間、神性呪文の杖の一撃がYOSSYの頬を直撃!
「がっ・・・!」
「禁足則不能速!」
「!・・・足の感覚が違う!?」
「貴方の最大の武器、超速を封じました。」
無表情で宣告するティー。YOSSYにとって、足の封印は致命的である。
「面白いものをお見せしましょう。」
そういって呪文の詠唱に入るティー。
「待て!話せばわかる!葵ちゃんに会わせろ!」
何を言ってもティーは聞き入れない。やがて呪文の詠唱が終わり・・・
「なに!」
YOSSYそっくりの影武者が完成した。
「昨日のイメージが残っていましたから助かりました。これは昨日の貴方です。」
「(昨日の俺?)」
「風見戦で凄惨にして残酷な攻撃を繰り出していた貴方の状態を入力しています。
自分の攻撃を心ゆくまで味わいなさい。」
その言葉と同時に影武者が襲いかかった。
凄惨かつ残酷な攻撃。足を封じられているYOSSYに対処方法はない。
なんとか木刀でかわすが、所詮焼け石に水である。
ただ無表情で私刑の様を見ているティー。


(葵ちゃんがそんなに・・・?
・・・・・確かめなくちゃ、自分の目で、耳で!
許してもらえないかもしれないが、それでも構わない!
俺は自分で彼女に謝る!
その為にはコイツを・・・
T−ster−reverseを倒す!悪く思うな!)


「ふざけるな・・・ふざけるなよ・・・!
何が凄惨だ、何が残酷だ!!」


(シュパッ!・・・ブシャッ!)
抜いた・・・。
YOSSYの手に握られているのは凶々しい輝きをもった真剣。
居合い・・・
竹刀袋から出した、そのままの勢いで影武者を一刀両断!
「カハッ・・・!」
その居合いの衝撃波で傷つくティー。片膝をつくほどの大ダメージである。
「貴方は・・・やはり・・・」
息も絶え絶えになりながらも言葉を吐く。
その首に真剣を突きつけるYOSSY。そして・・・

「葵ちゃんに会わせてくれるな?」
にっこりと笑いながらそう言った。

「人に頼み事をする時はそれなりの作法があるでしょう。」
ティーの口から笑いが漏れた。と同時に、倒れるティー。
「おっと。」
倒れるティーを寸前で支え、背中に背負うYOSSY。
「保健室まで連れてってやるか・・・」
と、その途中で小さい人影が・・・

「葵ちゃん?」
そこには複雑な表情で立っている葵の姿があった。
が、傷ついたティーを見て、表情が一変、
「ティー先輩!?・・・ひどいケガ・・・先輩!保健室に行きましょう!お話は後です!」



−保健室−
「ふう・・・これで一安心です・・・」
的確な応急処置をして、ティーをベッドに寝かせた後・・・
「葵ちゃん。」
「・・・先輩。」
「俺、あの時はケガのために何してたか本当にわからないんだ。
だから、図々しいかもしれないけれど、教えてくれないか?俺が何をしたのかを。」
葵は、真っ正面にYOSSYを見て、指を目の間に指して、
「先輩は、私のお尻を触ったんです。」
一息に言った後、みるみる真っ赤になって顔を背ける葵。
「(なあんだ・・・てっきり俺はあ〜んなことや、こ〜んなことをした挙げ句、あまつさえ
とても口には出せないようなことをしたのかと思った・・・)」
安心はしたが、罪は罪。
「ごめんなさいっ!」
葵に頭を下げて謝った。
「いいえ、私も悪かったんです。綾香さんにたしなめられちゃいました。」
綾香が・・・?
「もっと落ち着いて行動しなさいって・・・そうですよね・・・
私のせいでティー先輩がこんな目に・・・」
そう言った葵の目からまた涙が・・・
「わっわっ、泣かないで泣かないで。」
「だって・・・」
「だったらさ、ここで看病してあげなよ。こいつ喜ぶぞ〜。」
「あっ・・・」
「俺に葵ちゃんがキズモノにされたと思って、殺す気でかかってきたからなあ・・・
・・・最後には誤解はとけたみたいだけど。」
真っ赤になってティーの方を見る葵。
「じゃ、俺帰るわ、後はよろしくね〜。」
葵の反論を許さずとっとと出て行くYOSSY。



晴れ渡ったいい天気、ふと、夢を思い出す。
「姉貴・・・」
相貌が暗黒に染まり、普段の面影はない。
「敵をとり続けてやる、姉貴の無念、絶対に晴らしてやる!」







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どおもお、YOSSYです。


いよいよやばくなってきましたねえ(^^;
こーもシリアスオンリーになるとは思いませんでした。

ここではっきりとしたYOSSYのもう一つの顔。
でも、現時点で解っているのはハイドラントと葛田玖逗夜、あともう一人のの三人だけですので、
大筋には影響ありません。(いいのか?自分)

ここで、詫びなければならない点があります。
自分、美味しいところ取り過ぎじゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!。

申し訳ございません。この償いは後日たっぷりさせていただきますので。m(..)m

恒例のお礼レス〜
ハイドラントさん、葛田玖逗夜さん、誠にありがとうございます。m(..)m

さて次回は、
「洗練された漆黒・番外編」をお送りする予定です。
良い目を見るキャラが続出ですので、これは期待して待っててくださいね。(^^)

では、YOSSYでした。(ぺこり)