Lメモ自伝 ACT1 第一話「寂しげな少女」 投稿者:YOSSYFLAME


夜。
繁華街。
ここに奴はいた。
いつものように竹刀袋をかかえて。

「捜したなあ・・・ここにたむろしてた訳だ・・・」
奴が声をかけた相手。
十数人のいかにもガラの悪い男達がそこにいた。
奴を睨む男達。
粋がって奴の肩を突きとばすチンピラ。
いや、突きとばそうとしていた、というのが正解だったかもしれない。
なぜなら、突きとばす基盤となる腕はすでに男のものではなくなっていたのだから。
絶叫をあげる男。
しかし、繁華街の喧噪にその絶叫はかき消される。
男達が思い思いの凶器を持って奴を囲む。
その一瞬後、囲んでいた男達全てが無力化する。
手首を吹き飛ばされた男が奥の男に助けを求める。
奥の男。いや、奥の化け物といった風情の奇怪な大男が奴を睨む。
化け物の腕がすさまじい威力をもって奴の喉笛を襲う。
喉笛をえぐり取る寸前、奴は消えた。
「(能力者か・・・)」
奴が在籍している学園にも似たような連中はいる。
ただし、その化け物と連中には比べようもない差があった。
実戦経験の差、修練、努力の差。そして内に秘めてる魂の差。
奴の目の前にいる化け物。
どうやら自らの能力に溺れ、下衆共とツルんで女達を凌辱しつくしていたのだろう。
一瞬。
化け物が喉笛をえぐり取るその一瞬前、奴は化け物の首を吹き飛ばしていた。
34秒。
この下衆共を三途の川に叩き落とすのに要した時間。
長居は禁物。
奴は風のようにこの場を去った。



Lメモ自伝 ACT1 第一話「寂しげな少女」



「・・・・・・・」
YOSSYが何のあてもなく繁華街をうろつく。
わずかに左腕から出血がうかがえる。
「やっぱり能力者相手に無傷とはいかないか・・・」
油断である。
「ま、うちの強者に比べたらカスみたいなレベルだけど。」
うそぶくYOSSYの肩を叩く影が一つ。
「やっほ〜☆、YOSSYクン、元気〜っ☆」
「し、東雲さん?」
ショートカットのジーンズスタイル。YOSSYのよく知っている少女、
Leaf学園2年、東雲恋。
なにか良いことがあったのかニコニコしながらYOSSYを上目で見つめている。
と、思っていたのだが、
「うわっ、酒くせえ、一体どのくらい飲んでんだよ。」
「いーじゃない、固いこといいっこなし☆」
どうやら酒に酔って機嫌がいいようだ。
「どーしたの?こーんなところで会うなんて。」
「俺が聞きてえよ。女の子が一人でこんな時間まで遊んでるんじゃないの、帰るぞ。」
「・・・・・・」
YOSSYが恋の腕を掴んで連れていこうとする。と、恋の顔色が変わり、
「・・・っせえな、あんたにゃ関係ないだろ!」
「関係あるもないも、こんなとこ教師や風紀委員会に見つかったらコトだぞ、お前!」
風紀委員会要注意人物登録者がなに偉そうに説教している。
ちなみに罪状は覗きうんぬんの軽犯罪である。
「離せよ、おい、大声出すぞ!」
「ちょっと待てっ、もうちょっと冷静に・・・!」

「きゃああぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」

本気で大声を出した恋。
「助けてくださいっ!この人、痴漢なんです!」
と言って、YOSSYを指さす。
「ちょっと待て!俺は覗きは・・・しないでもないが、痴漢なんてしたことないぞ!
しかもこの場でなんて・・・!」
うろたえるYOSSYにとどめを刺すかのように、
「ぐすっ・・・ぐすっ・・・ひっく・・・」
突然泣き出す恋。いや、泣き真似をする恋。
可愛げでグラマーな美少女と、竹刀袋なんか持ち歩いてる美形ともいえないムサイ男。
さて問題です。この場合、まわりの人達はどちらの言うことを信用するでしょうか?

答えなんていうのもバカバカしい。
かといって、恋をほっておくのもなんだと思い、強引に彼女の腰を抱え、
自慢の超機動力でこの場から消えた。
「離してよ、エッチ!」
恋が叫ぶが、高速移動しているため、周りにはわからない。
YOSSYはそのまま駅へと走っていった。


−某駅−
「なんとか終電には間に合ったな・・・」
YOSSYがほっと一息ついた。その横でふてくされている恋。
「余計なことしないでよ!あたし、アンタみたいな人、大っ嫌い!」
「・・・いいかげんにしろよ、お前。人が下手に出てりゃいい気になりやがって・・・」
元々女好きで温厚なYOSSYではあるが、結構熱くなりやすい面があり(キレはしないけど)、
ましてや今日は「狩り」の直後なのである。無意識のうちに血がたかぶってるのが見える。
「何?殴るの?やってみなさいよ!女の子を暴力で服従させてみなさいよ!」
気のせいだろうか、そう言った恋の顔が一瞬悲しみを彩ったことは。
しかし、それはそれこれはこれ、完全に頭にきているYOSSYも文句を言い返す。
端から見たら完全な痴話喧嘩である。(もちろん二人には同級生以上の関係はない。)
「はいはい、喧嘩はそこまでそこまで。」
パンパンと手を叩き、二人に近寄る一人の女性。
「千鶴さん!?」
どうやら酒を飲んでるらしく、ほんのり赤く染まった顔でニコニコ二人を見つめる千鶴。
「YOSSY君、恋ちゃんは私が連れて帰るから、今日はいいわ、ありがとう。」
「は、はあ・・・」
自分の学校の教師にそう言われてはYOSSYも黙らずをえない。
だが、恋がおさまるまい。そう思って恋の方を見ると、借りてきた猫のようにおとなしくなっている。
「明日、お話を聞かせてもらえる?」
普段は年甲斐もなく(やべ)セーラー服を着て1年生の授業にまざっているとか、
EDGE、M・K、隆雨ひづきの最強1年生集団を堂々敵に回し柏木耕一争奪戦を繰り広げているとか、
学園の最終兵器と謳われるジン・ジャザムを顎でつかってるとか、
学園エアコン故障事件、1年生授業参観の黒幕だとか、
学園最大の邪悪であり、実は学園最凶であるとか(そろそろやばくなってきた)、
なんか超絶な噂が飛び交っている千鶴さんではあるが、今の顔は本当に真面目な、いや、
恋のことを気遣っているような優しく慈悲に溢れた目をしていた。
「じゃ、またね。」
恋を連れて電車に乗り込む千鶴。
「・・・!」
YOSSYはふと気づいてしまったのだ。
今にも泣きそうな恋の顔を。
これでも名うてのナンパ師である。表面上だけど恋のことも知っている。
YOSSYと口喧嘩した程度で泣くような女の子ではないはずだ。
「・・・・・ちょっと悪いことしたかな。」
少し胸が痛むYOSSYであった。



−翌日、部活が終わった後の剣道部部室−
「どうぞ、茶でもだしますから。」
「あ、いいの、気をつかわなくても。」
昨日の約束通り、千鶴はやってきた。
YOSSYは、てっきり生徒指導室にでも連れてかれて説教をくらうのかと思っていたら、
剣道部部室でいいとのことだった。
「じゃ、昨日のことを聞かせてもらえる?」
YOSSYは一応のことを話した。
「ふ〜ん・・・わかったわ、でも気をつけてね、見つかったのが私だからよかったけど・・・」
「ちょっと待ってください、千鶴さん。」
千鶴を引き留めるYOSSY。
「貴女と東雲さんの・・・いいえ、なんでもないです。」
他人のことにむやみに口を挟むのはちょっとアレかな・・・と思い、もうこれ以上追求しなかった。
YOSSYの気持ちを察したのか、千鶴は笑って、
「恋ちゃんと仲良くしてあげてね。」とだけいって部室から出ていった。
「(仲良くねえ・・・)」
去り際の恋の顔が甦る。
「難しいなあ・・・」
ナンパ師らしからぬ弱気なセリフが口から漏れる。

「あっ・・・」

二人同時に出した驚きの声。
ばったりぶつかったYOSSYと恋。
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
お互い黙ったまま一言も話さない。
その均衡を破ったのは意外にも恋の方だった。
「千鶴さんとどんな話をしたの?」と。

「ま、そーいうことだ。」
夕暮れの校舎前。校門に寄りかかって聞いている恋に簡潔に話すYOSSY。
「・・・昨日はちょっと悪かったな。」
バツが悪そうに恋に詫びるYOSSY。
「ちょっと。」
YOSSYの左腕を強引に引き寄せる恋。
「やっぱり・・・」
ちょっと怒った顔をしてYOSSYを睨む恋。なんのことやらわからないYOSSY。
「昨日からケガしてたよね、左腕。全然応急処置がなってないよ。ちょっと来て。」
そういって保健室にYOSSYを引っ張り込む恋。
強引ながらもちょっと暖かみが感じられるYOSSYであった。


−保健室−
「・・・あつっ!」
「ほら、痛がらないの!全く、ちゃんと消毒しないと!」
「面目ない・・・」
無愛想な顔で雑ながらも的確な応急処置を行う恋の技術に感心すると共に、苦笑が漏れる。
「それにしても上手いな、手慣れてるよ。」
「・・・お兄ちゃんによくやってたから・・・」
褒めたつもりでいたのだが、顔が曇る恋。YOSSYはまたもや慌てて、
「あ、いや、ごめん、悪かった・・・」
「いいよ、気にしなくて・・・」
とは言うものの、依然暗い表情の恋。
「(困ったなあ・・・こういうときは・・・)」
(ピーン!)
よからぬナンパ思考回路が答えを導き出した。
いきなり恋を胸に抱き寄せ、
「・・・今夜は帰さないよ・・・」
と、耳元で囁き・・・
(ぱあぁん)
「な、な、何するの!?変態!」
真っ赤になって思いっきりYOSSYに平手打ちをかました恋。
「変態ってお前・・・ちょっと抱き寄せて耳元で愛を囁いただけだろ!?」
「なんであたしがアンタなんかに愛を囁かれなくちゃならないのよ!」
「いわれてみれば確かにそうだけど・・・」
「まったく、初めて会ったときと何にも進歩してないんだから!」
「そういえばそうだったな・・・」
ふう、とため息をつき。
「全く、アンタといると落ち込んでる暇もありゃしない・・・」
そういって軽い笑みをもらす恋。
「(へえ・・・こーいう表情もできるんだ・・・)」
初めて見る恋の笑顔にけっこういい魅力を感じるYOSSYであった。

「はい、終わり!」
恋の応急処置が終わった。見違えるようにピシッと出来ている。
「悪いな、東雲・・・」
「昨日の借りは返したからね。」
どこまでも憎まれ口の恋。
「じゃ、お礼っていうのもなんだが、飯でも食っていかないか?」
ようやくナンパ師の本性が現れて来たYOSSY。ここぞとばかりに恋を口説くが、
「嫌。」
あっさりフラれるYOSSY。また一人で繁華街出歩くなよというYOSSYの言葉に、
「家にはちゃんと帰るよ、今日は。」
すたすたと帰路に就く恋。と、不意に振り向いて、
「・・・今日は・・・、素直になれそうだから・・・」
と照れ笑いを夕日に浮かべ、恋は帰っていった。

「ったく、誰に素直になるか知らないけどね・・・」
フラれた割には晴れ晴れとした気持ちで帰路に就くYOSSYでありました。



第2話へ続く。



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どうもお、YOSSYです。

お待ちかね(誰も待ってない)新シリーズ「Lメモ自伝ACT1」の第一話です。
今回は、Lメモ屈指のグラマー少女(をい)、東雲恋ちゃんが主役のシリアスストーリーです。

まあ、まだ書き足りない部分はありますが、別に恋ちゃんが出るのは今回が最後ではないですから、
まあ、東雲忍さんや、他の方々の協力をいただいて、書かせてもらおうと思ってます。
みなさん、よろしくお願いします。

それにしても、今回は出演者たったの三人。シリアスですねえ・・・
あ、あと、YOSSYはそんなに真面目じゃないです。
ただ、ばれないように飲むずるい男ですので、あのとき本編の恋を止めたのです。
(あと、やっぱり無意識に気が立ってたというのもありますね。あの後だし・・・)

「能力者」について。
Leaf学園に在籍、関連していない、SS使い、オリキャラ、リーフキャラ並の才能をもった連中を
YOSSYはこう呼んでいます。
たいていの能力者はYOSSYの実力を主張する意味のかませ犬です。
大抵は自分の才能に溺れ、修練を怠っている輩ですので、学園非一般生徒なら誰でも倒せるでしょう。

恒例のお礼レス〜
東雲忍さん、この度はありがとうございました。
次は忍に是非出演してもらいたいので、ぜひよろしくお願いします。m(..)m

佐藤昌斗さん
ありがとうございます!初めての長編主役!(かな?)\(^。^)/
全力で全国三千万のLeaf学園女生徒ファンのために死力をつくしたいと思います!(爆)
(でも書くのは僕じゃない(^^))
こちらこそよろしくお願いします。m(..)m

ではまたっ、YOSSYでした。