学園祭Lメモ「楓祭’98/閑話休題『ヒロイン達の大ピンチ!(陰謀編)』」 投稿者:YOSSYFLAME
「これは・・・?」
「魔風穴ですね・・・!」
「またやっかいなところに・・・」
「僕達だけじゃどうしようもできませんね・・・」
魔風穴とは、霊的な場所に原因もなくいきなり風が吹きぬける現象の原因である魔力空間である。
神社や寺などで、隙間風が入らないようなところで吹き抜ける風があれば、
それは魔風穴が近くに存在する証拠である。
ちなみに魔風穴から吹き抜ける風には、ごく微量の瘴気が含まれているが、
たいていはすぐに分解され、空間に影響を与えることはない。
「芹香さんがこないとちょっとねえ・・・」
「部長はどうしたんですか?」
「部長なら『いい機会だから霊界の友人のところに遊びに行ってくる』と、芹香さんが。」
「ほんとに地縛霊ですか?  あの人。」
「それはともかく。」
「まあ、害もないみたいだし、ほら、例の・・・」
「ああ、綾香さんのスカートが?」
「あれも以降はないみたいだし、ほっといても大丈夫か。」
「そうだな、それじゃまた営業を開始しますか?」
「そうですね、その方が楽できていいし。」
そんなわけでオカルト研究会メンバー、東西、トリプルG、神凪遼刃ら午後の留守番組は
すたすたと控え室に帰っていった。展示を再開するために。
しかし、
「(予定通りの展開だな。)」
端正な顔に凶々しい微笑を浮かべていた神凪遼刃の存在に、東西もトリプルGも気がつかなかった。





学園祭Lメモ「楓祭’98/閑話休題『ヒロイン達の大ピンチ!(陰謀編)』」





オカルト研究会副部長・来栖川芹香は、学園一の魔道知識、魔力容量を併せ持つ
才色兼備の魔術師、いや、彼女の特性からすると”魔女”と呼んだ方がふさわしいだろう。
彼女が得意とするのは現界、異界を問わず、現象を操る儀式魔術である。
雨雲、風などを召喚する天候系の召喚魔術(俗に言う”雨乞いの儀式”みたいなもの)から、
精霊、天使から、妖魔、悪魔、異世界の生物、果ては怪物や魔王まで召喚できる。
まさしく芹香先輩は凄まじくも可愛い☆ダークネス・ウィッチなのであったりする。
しかし、しかしである。
彼女の儀式魔術は見事の一語に尽きるのだが、
どこかツメが甘かったりする。
どっかこっか欠陥が出てきてパニックになることも時としてあるため、
魔風穴くらいのトラブルはいつものことと誰も気にはしなくなっていた。
しかし、皮肉にも今回の芹香の亜空間召喚術は完璧だった。
ということは、当然人工の亜空間であるこのお化け屋敷に魔風穴が存在することなどありえない。
・・・誰かが人為的に創り出さない限りは。

そのことに気づいている人間は誰一人としていなかった。
そう、この男達を除いては。



「しっかし、今回は神凪さんのおかげで助かりましたね。」
その一人が第二購買部四天王、”アフロティックストーカー”デコイである。
彼の理想は”あらゆるジャンルでの写真による芸術の追求”。
そのためなら手段を問わないちょっと困ったちゃんではあるが。
それはそれとして、彼は第二購買部に女生徒の盗撮写真を卸すという仕事があった。
今回、どうも最近品薄の盗撮生写真”セガランク”を撮影すべく
神凪遼刃の協力により”魔風穴”を作り、
学園の女生徒達に”真下からの突風でスカートが捲れて下着が見えてしまう”Hな罠を仕掛けたのである。
今さっき、生写真Aランク人気(第二購買部調べ)の来栖川綾香の艶姿を捉えたばかりのデコイ。
闇に潜んで気配を隠し、次なる獲物を狙うべくその”眼”を輝かせていた。



――Case2  〜広瀬ゆかり〜

「よう広瀬、今暇か?」
「・・・あのね、暇なわけないでしょーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
現役女優にして学園の風紀委員長・広瀬ゆかりに声をかけたYOSSYであるが、
「見てわからない!?  私は今巡回をやってるの!  じゅ・ん・か・いっ!」
「んなもんサボれよ。」
「・・・喧嘩売ってるみたいね。」
ぐぐっ、と、ゆかりの拳に力がこめられる。
「今はね、アンタなんかの相手してる程暇じゃないの、とっとと、消え――。」
そのニヤついた面に鉄拳を叩き込もうとした瞬間、ゆかりの拳がYOSSYの眼前で止まった。
「・・・何よこれ。」
「お化け屋敷のチケット。」
チケットもまたゆかりの眼前でひらひらと揺れている。
「一緒に行こ♪」
あっけらかんな笑顔で誘うYOSSY。
「お前最近無理し過ぎてるだろ?、たまには息抜きしなくちゃ。」
「だ、誰が無理させてるのよっ!」
「広瀬。」
「!・・・、な、なによ・・・」
一転真面目な顔で諭すYOSSY。
確かに最近のゆかりは普段の風紀取り締まり、芸能活動に加え、
屋外ステージライブのための歌と踊りのレッスンなど激務に追われに追われていた。
「これやるからさ、行かないか?  息抜きに。」
ゆかりの顔から硬さがとれていき、しばし考えた末、
「・・・うん、わかった。」

「そうか、じゃさっそく!」
「ありがたくもらうね!  貞本ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」
「はーーーーーーーーい!  何ですか?委員長。」
風紀委員会幹部であり、親友でもある貞本夏樹(実は”草”の一員)を呼ぶゆかり。
「チケットもらったんだ、一緒に行こう!」
「え・・・でも巡回は・・・」
「ちょっとくらいならかまわないわよ!  ね、よっしークン♪」
「いやまあそうだけど、あの〜、俺とは・・・?」
「そうですね!  お供します!」
「せっかくの学園祭、私たちだって楽しまなきゃ損だもんね!」
「・・・あの、いや、だから、ゆかりさん?」
もはや聞いちゃいねえ。
「じゃ、楽しんでくるね、ありがとう!」
「ありがとうございます!」
今までの激務の疲れがとれたかのような笑顔で遊びに向かうゆかりたち。
その背中をアホ面さらして見送るだけのYOSSY。
木枯らしが妙に冷たかったりしたりするのは気のせいであろうか。

 .
 .
 .

「まあいいけどな、これで仕事も完了したし。さてと、次は〜」
ようやく立ち直ったか、YOSSY。



――で、お化け屋敷内部。

「・・・こっ、怖くない怖くない怖くない怖くないっ。」
「い、委員長ぉ・・・」
「だって私は女優だもん☆」
『ふう〜(耳元に息吹きかける亡霊達)』



『キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!』



天下無敵の女優兼風紀委員長もやっぱり女の子。
想像もしていなかったおぞましい妖魔や亡霊の出現。
おまけに耳元に息なんか吹き込まれた日には独特の透き通った悲鳴をあげるしかない。
「(おおおっ!  風紀委員長可愛いなあ〜♪  それに副委員長もなかなか・・・)」
顔をニヤつかせながら、お互いに寄り添って脅えるゆかりと夏樹の仕草を激写して行くデコイ。
はっきりいって趣味が悪い。
しかし、仕方がないのである。
誰だって普段気の強い女の子のそういう仕草ってのは可愛く写るものであり、
さっきの綾香とてそれは例外ではない。
そんな女の子達の意図せず見せる可愛い仕草に男達が興奮をしたところで
誰が咎められるであろうか!  いやない!(作者の個人的見識、しかも反語表現(笑))
「(せめてさっきの綾香さん達が来栖川姉妹のツーショットだったら・・・)」
うむ、確かに作者も見たい。
でも諦めろデコイ。
綾香についてはほとんどこういう場合目つきの悪い野郎共がツーショットに入ってるのだから。

あ、それと、尋常ならぬ恐怖で女優の神通力が麻痺したゆかりたちが見事にデコイの罠にはまり、
突風にスカートを捲られて可愛い悲鳴をあげていたことは明記しておこう(一応今回の主旨だし(笑))。



――Case3  〜新城沙織〜

「オバケは嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

「ま、ま、落ち着いて新城さん。」
「絶対に嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」

・・・これである。とりつくシマもない。
「(仕方がない。ナンパ師のプライドは傷つくが、背に腹は代えられん!)」
コイツはこーいうやつである。
『あ〜もしもし城下くん?  実は頼みが・・・』
PHSである。生意気な。

「哀と勇希の使者、城下和樹、参上ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「・・・あいかわらずやな、アンタ。」
しかも字が違うし。

「ぐすっ・・・えぐっ・・・、ほ、本当にこわくない?」
「大丈夫、こわくないからね〜、さあ死んだ気になって清水の舞台から溶岩にバンジー――」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
城下、大苦戦。
っていうか、人材の選択を誤った気がしないでもない。

「ちょっと待ったあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」
といってるうちに来たよやっぱり。
「女性を無理矢理人気のないところに連れて行くとは言語道断です!」
お化け屋敷は人気がないのが当たり前。
「どうしても我が姫君を連れ去るというなら、私、とーるが貴公らの暴挙を阻む!」
ヒロイックサーガじゃあるまいし。
「・・・面白え!  やれるもんならやってみやがれ!」
YOSSY悪役。しかもザコ敵A。
「覚悟!  飛燕剣一の太刀!」
西洋剣術のくせに”一の太刀”って・・・



「やめてーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」



今まで散々無意味にわめいていた沙織がここぞとばかりに立ちはだかった。
「これ以上血を流して何になるの!?」
あのー、一滴も流してないんですけど、血。
「しかし騎士たるもの死を恐れず姫に尽くすのが信条!!」
「あたしはそんなこと望んでないわ!  そう・・・あたしの望むものは・・・」
「ちょっと待ったあ!  遭いと遊輝の死者、城下和樹をわすれてもらっちゃあ〜」

「(・・・もう好きなだけやってくれ、俺、帰る。)」



――お化け屋敷・魔風穴地点。

「・・・よし、大分瘴気が充満してきたな、これだけ溜まれば十分だ。」
神凪遼刃が魔風穴の前に立って何事かを始めようとしていた。
「ハアァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ・・・!」
神凪の無言呪詛。
言葉は必要ない。ただ、その両腕で魔の印字を切る。
妖術師独特の瘴気吸収法である。
魔風穴から凄まじい量のおぞましい瘴気、妖気が神凪の内部に吸収されてゆく。
「学園祭か・・・」
そう呟いた神凪の口からさもおかしげな含み笑いが漏れる。
「茶番は終わりだ。見ていろ”使い人”・・・、今日が貴様等の命日だ・・・!」



「困りますねえ、そんなことを勝手にされては。」



ずしゃっ!



「かは・・・っ!」
どこからか声が発せられた刹那、
「き、貴様はァ・・・!?」
男の右拳が神凪のどてっ腹にめりこんでいた。
「私は別に正義の味方じゃないし、岩下さん達に義理があるわけでもない。」
微動だにせず、淡々と言葉を続ける男。
「ただね・・・」



「私の邪魔をしてもらっちゃ困るんですよ、神凪さん。」
学園でかつて見せたことがあるのだろうか?  冷酷な笑みを浮かべ冷ややかに神凪を見つめる男。



「と、言ってもすでに聞いてないか。
ばれてなきゃいいんだけどなあ・・・敵は作らないに越したことはありませんからね。」
すでに意識のない神凪を抱えてお化け屋敷を出てゆく。

「もしもし、よっしーさんですか?  こちら、デコイです。」
『おお、どうもお疲れさま〜♪  で、成果はどうです?』
「いやあ、おかげさまで。神凪さんの”魔風穴”、予想以上の威力ですよホントに、
大人気の綾香さんや難攻不落の風紀委員長までバッチリ撮れましたからね〜。」
『そいつはよかったですねえ、俺にも後で見せてくださいね〜♪』
「もちろん。他にも可愛い子が目白押しですぜ、旦那〜。」
『ほほう、そちも悪よのお。』
「いやいや、お代官さまほどではございませんよ。」

なにやってんだコイツら。

「それともう一つ、神凪さんを切りました。」
『ほへ?』
「どうもあの魔風穴を使って岩下さん達を殺ろうとしていたみたいで。」
『マジすか、それ?』
「大マジ。」
『ふむふむ、それで?』
「それで学園祭が中止になったら商売あがったりですからね、なんとか阻止に成功しました。」
『ああ、それはホントにお疲れさまでした〜、で、神凪さんは?』
「保健室に連れて行きました。響子先生が診てくれていると思いますね。」
『それならまあ、で、ケガとかしてません?  デコイさんは。』
「私は大丈夫ですよ、不意打ちの当て身で極めましたから。」
『それはよかった。で、まだ誘おうと思ってるんですが、リクエストあります?』
「そうですね〜、オカルト研のお化け屋敷はすごい人気で、次から次へと来るんですよ、女の子。」
『ああぁぁぁ、いいなあ〜、俺と代わってくれません?』
「嫌です。」
『あ、そ。』
「・・・じゃ、この出し物の黒幕、来栖川先輩をお願いできますか?」
『了解♪』

通信を切った二人。
彼らの悪どい計画はそのまま何の問題もなく進行していくかに思えた。
しかし、デコイもYOSSYも一つ重大な誤算をしていた。
神凪遼刃という男の妖力、それに深遠なまでの執念をあまりにも軽く見過ぎていたことだ。

闇は、すぐ側にまで忍び寄りつつあった。




                                                        To  Be  Continued・・・



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どおもお、YOSSYです。

いやあ、前後編で終わると思ってたのに(^^;
あと2話くらいかかりそうです。
しっかし鬼畜だなYOSSY(^^;

今回のお礼レス〜
城下和樹さん、とーるさん、出演ありがとうございました〜、またお願いいたします。m(_)m

今回の懺悔〜
次回こそ、次回こそ芹香先輩は登場しますんで、先輩萌えの方、申し訳ないですが
今回だけ猶予をくださいっっっっっ!!!m(_)m

あと神凪さん。
申し訳ありませんっっm(_)m

あともう一つ。
”魔風穴”などのオカルト用語は実在しません、僕の創作です。
仕方ねえなという目で見てくれると助かりますm(_)m

では、今日はこのへんで失礼します。