Lメモ他伝 act1 節分スペシャル 「復讐するは我にあり。」 投稿者:YOSSYFLAME
「美加香。」
「はい。」
風見ひなたと赤十字美加香。
ただならぬ気迫を内に秘め、歩を進める。
「・・・今ならまだ、引き返せますよ。」
鬼畜がモットーのこの男らしくもない慈愛の目で美加香を見つめる風見。
美加香はそんな風見に向かって、首を横に2、3度振った後、にっこりと笑いかけた。
まるで全てを捧げたもののような笑顔で。
「私は、ひなたさんとともに。」
はっきりと。
風見は美加香の綺麗な黒髪を軽く、くしゃっ、と一撫でして、そして、
「・・・行きましょう。」






Lメモ他伝  act1  節分スペシャル 「復讐するは我にあり。」






「師匠!  御命頂戴いたします!!」
「西山さんっ!  ひなたさんのために死んでくださいっ!」
「この馬鹿弟子があぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
SS不敗流の庵。
西山の庵に夜襲をかけ、彼らは火を放った!
敵襲!?
西山は即座に体勢を整えた。
そして、鬼の力を全解放して襲撃者に備える西山。
しかし、
まさにその機を伺っていたかのように、彼の眼前に姿をあらわし名乗り出た襲撃者。
――風見ひなたと赤十字美加香。
「はあぁぁぁっ!」
美加香をカタバルトにして闇夜高く舞い上がる風見。
月の光を背にして風見が吠える。
「外道メテオーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」
その咆哮が聞こえるか否か。
西山に向かって無数の暗器が降り注がれる!
そう――



豆。



「風見ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!  貴様何のつもりだあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ふ、師匠は学にも通じていると思っていましたが意外!
今日は節分!  今日は大義名分の元、鬼を狩ってもいい日なんですよっ!」
「その通り!」
風見の弁舌に答えたのは美加香ではなかった。
長身の白衣の男。
愛用のサブマシンガン”スコーピオン”を手に、彼の心の師にあえて牙をむく男。
「悠ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!  貴様もか!!」
「・・・今までの借り、今日を持ってすべて返済してもらう! 覚悟!」
スコーピオン一斉射撃!!(ただし弾は豆)
「くっ!」
三対一。
しかも自分は不意をつかれている。
体勢を立て直そうと、一旦退く事を決めた西山の眼前には、
「こ、これは!」
闇の中から闇が生まれる。
”漆蒼のマント”と呼ばれるその中から生まれゆく闇。
闇の中から出ずるもの。



豆。



「紫音!  貴様かっ!!」
「ある意味正解ですがね。僕は光ですよ。貴方の弟子の結城光。・・・ですよ。」
「何?  ならなぜ光がこの変なマントを使えるんだ!?」
「・・・変なって・・・(汗)
まあそれはそれとして、どういうわけか一時的に意識を共有できるようになれたんですよ。
今の僕は光でもあり・・・紫音でもある。」
変なマントと言われたことにやや傷つきながらも、淡々と答える光(紫音)。
「とにかく。」
光(紫音)がはっきりと告げた。
「今日は節分ですからね。鬼には退場してもらいましょうかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
闇の中から生み出される無数の豆が西山を襲う!



「――フ。」
『!?』
不敵な笑み。
自らが師と仰ぐ男の酷薄な笑みに気圧される風見達。
「・・・何故、毎年毎年”節分”なるものがあると思う?」
西山の問いに答えるものはない。淡々と続ける西山。
「何故なら・・・



数百年経った今現在でも、未だに鬼を征伐するには至っていないからだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



――ゴオッ!!
西山の文字どおり”鬼気迫る”咆哮に気圧される風見、美加香、悠、光(紫音)。
「今度はこちらから行くぞ、覚悟しろ馬鹿弟子共がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
『くっ!・・・しゃらくせえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!』

その日、SS不敗流の庵には血の雨(豆の雨?)が降ったとか降っていないとか。







「はあ、はあ、はあ、はあ、・・・」
学園最強の一人と呼ばれている男。
その名声故にこれ程の敵を迎え撃たなくてはならない現状を彼は決して後悔していない。
彼にとって”敵”とは”友”と同義なのだから。
それにしても多すぎる。
正直彼も若干疲れを感じている。
しかし、彼は退くわけにはいかない。
彼の想い人のため、愛故に。



――数刻前。鶴来屋周辺、数十キロメートル付近。


『柏木千鶴!  貴様を・・・狩る!!』

目標地点、鶴来屋会長室に向かい闘気をむきだしにし今にも襲いかからんとする狩猟者。

柳川裕也。
EDGE。
M・K

柳川は狩猟者の本能故に。
EDGE、M・Kは耕一への愛故に。



――鶴来屋会長室。

「・・・ふふ、おバカさん。」
会長室の椅子。
選ばれたものだけが座ることのできる椅子に座っている。
普段のおっとりした優しい雰囲気など何処にいってしまったのか。
キレる。
怜悧な美。
そういって差し支えない女性。

「ジンくん。」

傍らに控える男。
闘志と愛に生きる男。

「お願いね。」

女の一言。
無言で部屋を出て行く男。
一人残された女。
傍らを見つめ、彼女は何を思うのか――



「ジィィィィィン!!  邪魔立てするなら貴様も狩るぞっっっ!!!」
『ジン先輩っ!  どいてくださーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーいっ!!』
「退くわけにいくかあぁぁぁぁぁ!  俺は、俺は、ジン・ジャザムだあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
三対一。
完全に鬼化した柳川、EDGE、M・Kを迎え撃つジン。
サイボーグ化した近代エルクゥとはいえ、この戦力差は大きい。
はっきりいって、内心かなりしんどくなっているジン。
しかし、彼は”ジン・ジャザム”である。
”ジン・ジャザム”が”ジン・ジャザム”である限り、
彼に”逃げる事”は決して許されない。
しかし、そんな彼に追いうちをかけるかのように次なる刺客が現れた。

「ジンッッ!  決着をつけに来たぜ!!」
「!!・・・セリス!!」

宿命のライバル、セリス登場。

「今日は節分!  さすれば俺とお前の決着をつけるにふさわしい!
ジン!  俺の挑戦、受けてもらうぞ!」
「(くううっ・・・こんな時に・・・っ!)」
確かに強烈なバトルマニアであるジンにとってセリスとの決着をつけることはやぶさかではない。
だが、今の劣勢でようやく戦いになっている状況を作り出すのがやっとの状態で、
尚もセリスの相手までしなければならないのかと思うと、
さすがのジンも骨が折れる。そんな予感がした。
が、その時、

「チェエヤアぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

セリスはなんと、柳川に斬りかかった!
「セリス!?」
唖然とするジン。
「ジン!  お前との対決は一対一でつける!
・・・今日は節分だしいい機会だ!  柳川!  貴様をまず狩ってからジンとの決着をつけさせてもらうぞ!」
セリスの眼が鋭く輝く!
と、柳川の眼も黒く、闇に沈むように輝く!
「面白い! 柏木千鶴までのオードブルだ!  貴様の命の炎もさぞかし美しいだろうよ!!!」



――すこし離れて、Leaf学園、XY−MENの屋台。

「いやあ、平和だねえ。」
「本当ですね。」
「ゆきちゃん。はいっ。」
「あ・・・初音ちゃん、ありがとう・・・」
「(ふう、幸せだなあ。)」
節分だというのに、誰にも迫害される事もなく、のんきにたこ焼などを食している一団があった。
柏木楓、XY−MEN、柏木初音、ゆき。
でもって、楓の傍らで飼い葉など食している正体不明の馬らしきモノ、JJ。
鬼とはいえ、戦いを好まずおだやかな楓と初音の二人に豆などぶつけるものもなく、

「はーーーーーーーっはっはっはあ! 
今日は節分!  よって綾香を支配下に置けない腹いせに、柏木楓!  貴様を我が支配下に――

まあ、どんな事例にも例外はあるもので。
ただ、その例外、ハイドラントは気づいていなかった。
節分ってことは、鬼だって神経過敏になっていたりするんですよね。
それが気の優しい楓や初音であろうと例外たりえないってことに。
そして彼、ハイドラントのもう一つの誤算。
この鬼娘二人のほかに、エルクゥ同盟のゆきがいたことに。
節分のため、彼の秘められた力がほぼ全開になっていたことに。

セリフが言い終わるのを待つ事なく、ハイドラントの「柏木楓支配化計画」は壊滅した。



――ふたたび鶴来屋付近、

「――うふふ、サウザンドミサイル!」
ちゅどーん。
「どわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ジンせんぱーい!  逃げちゃ駄目だよー!」
「そ、今日は節分なんだから!」
「お前らだって鬼だろうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「――私は鬼ではありませんが。」
「てめえになんか言ってねえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
ちゅどーん。
Dセリオの得意技”サウザンドミサイル”(ただし弾は豆)
を力いっぱい逃げ回りながら、EDGE、M・Kの投げる豆からも懸命に逃げ回っているジン。
セリスが来たあれからすぐ。
嬉々として現れた「キュートな最終破壊兵器」Dセリオ。
セリスの前例もあるように、今現在EDGEとM・Kの二人を相手にしていたジンにとっては
内心、強い味方が来たな、とわずかながら期待していたが、
その期待がまったくの無意味であった事を次の瞬間思い知らされる。
「ジンせんぱーいっ!」
「逃げないでよ〜!」
・・・こともあろうにDセリオ持参の豆を嬉々としてジンにぶつけだす二人。
その上Dセリオまで砲撃してくるのだからたまらない。

「――行きますよ!  ファイナルガーディアン(ただし弾は豆)!」
「もう嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



――鶴来屋上空、戦艦冬月。

「さて、撃ってもらいましょうか♪」
にっこりと血に染まった消火器を手に、
その艦の持ち主・冬月俊範に呼びかける、暗躍生徒会・太田香奈子。
「うう・・・しくしく。」
一体俺が何をしたとばかりにむせび泣く冬月。
その彼の肩をぽんぽんと叩いて一応慰める健やか。
「(ごめんなさい冬月様、暗躍生徒会の皆様を艦に招き入れたりなんかしちゃって。
でも、今度、Runeさんからもらったお金で御食事にでも行きましょう。
だからお願い。私を許してくださいね。)」
などということを顔色一つ変えずに考えてやがる女、綾波優喜。
はっきりいって買収された以外の何者でもないのだが、まあ目を瞑ろう。

『ハイパー・メガ粒子砲、発射30秒前!』

「・・・嬉しいか?」
暗躍生徒会・Runeが傍らの男に話し掛ける。
男は泣き濡れた顔を上げようともせずに、ただ頷くだけだ。

『発射20秒前!』

「柳川・・・ジン・ジャザム・・・」
鳴咽交じりの声で男は呪詛を唱える。
固く握られた拳には、多量の血が滲んでいる。
香奈子も、健やかも、冬月も、綾波も、何も言う事はない。
彼の苦しみ、彼の痛み、彼の屈辱をその拳から痛いほど感じられるから。
「いいんだ、今日は節分だからな。」
その男の肩を優しく叩くRune。いつもの彼ならぬ慈愛に溢れた行為。
別にRuneの目の前にいる男が依頼料1万円を暗躍生徒会に支払ったからではない。
大体その金は全額綾波に行き渡る。
依頼料をもらう事はないとは言わないが、暗躍生徒会は金のために騒動を起こしているわけではない。
あくまで純粋な騒動を求めて。

『発射10秒前!  9!  8!  7!  6!  5!』

「節分・・・僕はこの日まで生きていられた事を神さまに感謝したい・・・」
男の拳が強く握られる。その拍子に夥しい血が飛び散る。
しかし、誰もその光景に目を背ける事はない。

『4!  3!  2!  1!』

わずかでも、たとえどのような手段を使ってでもささやかな復讐がしたかった。
そんな彼の”負の心”を一体誰が責められるであろうか。

――科学部1年、”サクリファイス”来栖川空。



『0!  ハイパー・メガ粒子砲、発射!!』






――『今日のニュースです。○△地方、温泉旅館・鶴来屋上空から無数の豆が――』

「ちちうえっ、おまめがふってきたんだって、いいなあ〜」
「そうだね、でも豆ならここにもたくさんあるよ。さあ、静の年の分食べるんだよ。」
「うんっっ!  ・・・でももっとたべたいなあ〜」
「しょうがないなあ〜」








おまけその1

「え〜いっ、耕一さんから離れなさいよ年増っ!」
「そうよ!  お・ば・さ・ん!」
「い・ま・な・ん・て・いったのかなあ、アンタ達〜?」
「(助けてくれ〜!)」

おまけその2

「梓ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「あ〜ん、梓先輩のふかふかおっぱい〜♪」
「あたしの出番これだけかい!この腐れ作者ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!(どげしげしっ)」
「最高だ梓!  10点をやろう!」
「梓先輩ったら照れ屋さん♪」

おまけその3

YOSSY「おい、俺の出番は?」
作者(仮)「無えよそんなもん。」


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どおもお、YOSSYです。

うん、節分ですね。
みなさまがたの御家庭では豆まきをなさっていますか?
僕の家ではしていませんでした。
一人暮らしですし、面倒くさいですから。
でもま、今年は食用豆を買ってきたついでに少しだけやろうと思っています。

今作は節分ってことで、鬼のみなさま全員登場です。
もし抜け落ちてらっしゃる方がおられたら僕に言ってください。
お詫びといってはなんですが、次回の主役として出演していただいてよろしいでしょうか?

あと、鬼のみなさまがやたら暴走してたり、SS不敗のみなさまがやたら暴走してたりするのは、
節分のせいだとでも思ってください(^^)(そんなの理由になるかぁぁぁぁぁ)


今作のお礼レス〜

XY−MENさん、ゆきさん、JJさん。
出演ありがとうございました〜m(_)m
これからもよろしくお願いします。


今作の懺悔〜
えっと、とりあえず、ひどい目にあった方、ごめんなさいぃぃぃぃぃぃぃ!m(_)m


節分、いいですねえ・・・
日本のこういうあどけない文化を大切にしたいですよね。
では、失礼します。YOSSYでした。