Lメモ他伝 ACT2 「広瀬ゆかりのある一夜」 投稿者:YOSSYFLAME
「馬鹿!  あなたなんにもわかってないじゃない!
彼がどうしてそんなこと言ったのか、彼女がどうしてあんなことをしたのか!
これっぽっちもわかってない!」

「うん、わからないな。」

「でしょうね、あなたはそういう・・・・・・・・きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「ずいぶんとオーバーだなあ、広瀬君。」
「つ、つ、つ、つ、月島先輩・・・っ。・・・驚かせないでくださいっ!」
「ああ、ごめんごめん、呼んだけど反応がなかったし、こっちも用があったものでね、
かってに上がらせてもらった。」
「もう・・・!」






Lメモ他伝  ACT2  「広瀬ゆかりのある一夜」







ここはリーフ学園風紀委員長室。
既に黄昏時のこの時間帯。残っている風紀委員も夜間巡回当番を残し、ほとんどいない。
ことっ。
「どうぞ。」
「悪いな、君に入れてもらうとはね。」
「そんなに私自らお茶を入れるのは変ですか?」
やや拗ねたようにふくれるゆかり。
月島の揶揄もある意味もっともな話で、必ず誰かが常駐している委員長室。
ゆかり自ら茶を入れるケースなど、めったになかったのであるから。
「巡回当番呼び出して、お茶入れてってそれだけの用事だなんて、さすがに彼らも怒りますからね。」
人使いの荒さで定評のある彼女にしてみれば、ずいぶんと優しいセリフである。
もっとも、彼女の趣味でお茶ではなく、常駐されてるのはコーヒーだが。
「で、いつもこんなことをやっているのかい?」
相変わらずの落ち着いた優しげな笑みをゆかりに投げかけながら問う月島。
「そ、それは・・・。私、女優ですから。」
客用の席にゆったりと腰を下ろす月島に対して、ゆかりはお茶棚に寄りかかって話をしている。
悪戯がばれてしぶしぶ白状するような悪ガキのように、
顔を赤く染めてそっぽを向いて怒ったような顔で答えるゆかり。
”努力してるところは他人には見せたくない”
そんな妙なプライドが彼女にはある。
「そ、それはともかく・・・御用件は何でしょう?」
動揺している心を顔から消すようにして問い掛けるゆかり。
「うん、そのことなんだけどね。君も気づいているだろ?
最近の風紀委の影響力が以前に比べて低下していることを。」
「・・・・・・」
「まあ、それでもたいしたものでもないんだけどね。
ただ、委員長の君には現状を知ってほしくてね。」
「はい・・・。」
別段責めているわけでもない月島の口調に、神妙に頷くゆかり。
そのまま思いつめたような顔になってしまう。
もっとも月島の方からしてみれば、風紀委の影響低下問題など、さほどの問題でもない。
一種の暇つぶしみたいなものである。
それどころか、学園にある程度の絶え間ない刺激が必要だと考えている彼からしてみたら、
風紀委の勢力が強力になられてもある意味困るのではある。
が、それはおくびに出さず。
「また僕と組んでみるかい?」
「その体制が以前見事に潰されたんじゃないですか?」
苦笑しながら言葉を返すゆかり。
ゆかりの前任の風紀委員長は、まさしく、”完成された”という表現がふさわしかった。
その彼が風紀委を引退した時に、月島によって推挙されたのがゆかりなのである。
就任当時は針の穴すら通さないような苛烈な恐怖統治を実行し、成果を上げていたのだが、
その圧政に堪忍袋の緒が切れた学園生徒の、目に見え出した反抗に加え、
月島の権力をかさに着て、自分の思惑の遥か外で
好き勝手振る舞う風紀委員会生徒指導部に嫌気が差し
とうとうゆかり自らその指針を放棄すると共に、生徒指導部を強制解散させ、後盾の月島とも訣別。
が、
「まあ、それは冗談だけど、ま、そんなに思いつめないで。」
「はい・・・」
「あの怪物共を完璧に押さえることなんて、神にも不可能なんだから。」
「全然励ましになってないじゃないですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

何故かゆかりは、この愉快犯的気質をもつ、裏がありつかみ所のない先輩を憎めなかった。



「ふう・・・」
月島が去った後、お気に入りのコーヒーを飲みながら一人考えにふけるゆかり
「やっぱりナメられてるのかなあ・・・」
ことん。
コーヒーを置き、疲れたように椅子にもたれかかる。



――回想、その日の昼休み。

「だからもう一度言ってくれよ、セリス君。」
「・・・マルチのパンを返せと言っているんだよ。」
購買部前で激しく睨み合うセリスとハイドラント。
セリス側には岩下信と天神貴姫が油断なく臨戦態勢に入っている。
片やハイドラント側も葛田玖逗夜と神凪遼刃が挑発するような笑みを浮かべている。
「はあ?  購買部の鉄則は”早い者勝ち”ではないのか?」
「ふざけるな!  先に並んでいたマルチを故意につまみ出しただろうが!」
「そんなことしてたっけ〜?」
『さあ?』
13使徒メンバーの悪びれない物言いに
冷静さは失わないものの、ジャッジメンバーがかなり殺気立ってるのは傍から見ていてもわかる。
「(すこちゃんすこちゃん。なんか面白いことやってるねえ)」
「うーん、そうだねえ。」
何時の間にか13使徒が奪ったパンのご相伴にあずかっている(窃盗とも言う)
暗躍生徒会・Runeが、学生の殿堂・ヤキソバパンを幸せそうにほおばりながら
健やかと事の成り行きを面白そうに見つめている。
「場合によっては・・・ですね。」
「ま、面倒くさいけどストレス解消になるか。」
ここはここで、エルクゥ同盟、ジン・ジャザムとゆきが
大盛りかけそばなどをすすりながら状況を静観している。
「食堂内では静かに!」
巡回中の風紀委員の注意など、一触即発状態の彼らには全く聞こえていない。
「・・・・・・・・・・」

「どうあっても返さないと言うんだな?」
凄みのあるセリスの物言いに、しかしハイドラントは、
「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
「んぐんぐんぐんぐ・・・食っちゃった(はぁと)」

ぶちん!

「マルチのパンを奪って食ったねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
シュン!
凄まじい殺気をぶつけながらセリスが跳躍した!
「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
空中からビームモップを振り下ろすセリス!
魔術発動の構えをし迎え撃つハイドラント!



キキキキキィィィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!
(フォークでガラスの皿を強烈に引っかく不快音)



『ひいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ〜〜〜〜〜っ・・・・!!!!!」』
どしゃあ!
もんどりうって墜落するセリス。
向かいではハイドラントが頭を抱えて悶え苦しんでいる。
もちろん彼らだけではなく、食堂中の人間が地獄の交響曲に魂を吸い取られていた。

「食事中はお静かに。」

冷静な顔で、ことんと皿とフォークをテーブルに戻し、
食後のコーヒーを自販機から買って、一気にぐぐいと飲み干すゆかり。



――再び風紀委員長室。

「でも・・・」
そう、
最近、再び食堂を始めとする各場所での騒ぎが多発しているのである。
わざわざ自分が出張らなくては収められない騒動もちらほらと出てきつつある。
正直、これ以上無意味に学園の治安が荒れると、さすがに歯止めが難しくなる。
ゆかり自身だって、女優業もある今、風紀活動にばかりかまけられない。
「そうだ・・・練習やらなくちゃ・・・」
新しいドラマのセリフの練習。
ゆかりは風紀委員棟を出て音楽室へ向かう。
夜間練習するにはもってこいの場所。
ふと周りを見回すゆかり。
「(今度こそ、誰もいないわよね・・・)」
夜間巡回班にはばれないように出てきたはず。
ここなら、声も遮断されて、誰はばかることなくおもいっきり練習が出来る!
「よし!」



――深夜・学園廊下

「(ちいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!)」
静かなる刺客2名。
彼らは今、任務失敗の危機に立たされていた。
くいくい。
無言で指を動かし挑発する男。・・・結城光、いや、結城紫音。
「(くたばれやぁ!)」
片方の男がナイフで紫音に襲い掛かる。
速い!
しかし、紫音はマントを翻し・・・
「(何!?)」
・・・一瞬のうちに男の背後を取る。
「・・・光に殺しの業をかぶらせることもあるまい。」
音もなく倒れる刺客の片割れ。
「(獲った!)」
瞬間!
もう一人の刺客が背後から斬りかかる!
「(な・・・!?)」
斬りかかった刺客に覆い被さるマント。
そのまま男の首に絡み付き、同時に動きすら封じ込める。
無言で男に近づき、胸倉を掴んで静かに、しかしながら凄みを利かせて問い掛ける紫音。
「何故あいつを狙う?」
男は話す必要などないと言った。
無言で首のマントを締めにかかる紫音。
しかしながら、男は尚も続けて言った。
今から死ぬ奴に何を話しても口の無駄だと。

「(しまった――!)」
影のように、影に紛れて、紫音に襲い掛かる刺客。
「(3人目がいたとは――)」



『縛!!』



「が・・・がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「――――?」
突如光の結界が巻き起こり、男を捕捉し、呪縛する。

呆然とする紫音の背に――
「結城くん!  大丈夫ですか?」
「・・・あ、ああ・・・」
「そうですか、よかったあ・・・」
何故か十手を構えている
時代劇かぶれなのではないかと思える男が、紫音に親しげに話し掛けてくる。
「(光の知り会いか・・・?  まあいい、適当に話を合わせておこう)」
「ところで、彼らはどうしましょうか?」
十手男が縄で縛って口に猿轡をはめて動けなくした刺客3人組を指差し尋ねる。
「風紀委員にでも引き渡しておく。」
頷く男。
「では、僕はこれで。」
と、別れを告げると風のように消えて行く。
「(で、結局誰だったんだ、あいつ?)」
倒れた刺客を椅子代わりにしながら考える紫音。
世間の関心事にいまいち疎い彼が、
最近転校してきた銭形かぶれの1年生、
makkeiの存在など、知る由もなかった。



「すう・・・、すう・・・」

――音楽室。

「・・・何考えてんだこいつは。」
とりあえず様子見に、音楽室に顔を出してみた紫音の第一声。
余程疲れていたのか、電気も消さず、当然仮眠室にも寮にも帰らずに
音楽室の壁に寄りかかって深い眠りに就いているゆかりの姿を発見したからである。
「すう・・・、すう・・・」
まったくの無防備。
仮に今、殺そうと思えば苦もなく殺せるだろう。
紫音は無言のまま音もなく”漆蒼のマント”を肩から外し――

ふぁさ・・・。

「・・・俺も何をやってるんだか。」



「光ーーーーーーーーー!  何処に行った!  まだ修行は途中だぞーーーーーーーーー!」

音楽室から出た途端聞こえる、光の師匠、西山の声。
「(頃合いだな。俺は寝るわ。光、パス。)」
こうして、結城紫音の短い夜は過ぎていった。



チュン、チュン・・・

――早朝・音楽室。

「んん・・・・ん・・・」
心地のいい朝。
朝の陽射しは何故かやたらと眩しく感じる。
そんな眩しい陽射しに差されて、広瀬ゆかりの一日が始まった。
「やだ、・・・寝ちゃったんだ・・・」
ただし、寮のベットではなく、音楽室の絨毯の上で。
「う〜〜〜〜〜・・・・・。」
寝癖を所々につけながら、眠そうに目をこするゆかり。
そこには、鬼の風紀委員長の姿も、新進気鋭の名女優の姿もない。
「ん・・・何、この変なマント・・・?」
それでも、自分にかけられていたマントのことぐらいは気づくゆかり。

「紫音・・・」

寝起きの悪い身体を起こし、風紀委員棟に戻って行く。
朝一番のコーヒーを飲むために。
めったに表に出てこない、気まぐれな”仲間”に切り出す言葉を考えながら――



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どおもお、YOSSYです。

自分で書いてて思ったんですが、ずいぶんとまあ支離滅裂な内容ですこと(^^;
久しぶりのLメモです。
だいぶ長いスランプがありましたが、それを申し訳程度にも乗り越えて書いて見ました。
みなさま、見放さないでくださいね〜〜〜〜〜。m(_)m

で、見てのとおり、今回の主役は広瀬ゆかり嬢です。
まあ、月島拓也がいいとこ持ってったとか、主役って紫音さんじゃないかとか思われますでしょうが、
すみません。反論できません。(^^;

で、僕が広瀬嬢の設定担当をやらせてもらってるわけなのですが、
やっぱ、嫌いなキャラならわざわざ設定担当なんか名乗り出ないわけで、
本当に魅力的な素晴らしいキャラだと思います。
ただ、せっかく先人さん達がこんな魅力的なキャラを生み出し育ててくれたというのに、
それを引き継ぐ(といっても設定上のマネージャーとしての責任があるだけなのですが)僕の、
一人よがりのキャラに変質しないようにという自戒を込めて、
今回は一切YOSSYFLAMEというキャラを出さずに書いてみました。
うまく表現できないんですが、要するに、
広瀬と絡みたい人は遠慮せずにどんどん来てください。というよりも、
どんどんこの愛すべきキャラにアプローチかけてください、ということがいいたかったのかな、俺?(^^;
(もっとも、YOSSYも広瀬の好敵手、宿敵っていうポジションは主張させてもらいますが(笑))

あと、広瀬嬢に対する意見や質問などがありましたら、どんどんお願いします。
答えられる範囲でならお答えします。
わからなかったら、誰かに聞いて答えますので(笑)。

さてと、今回のお礼レス〜
makkeiさん、はじめまして、YOSSYFLAMEです。
新人さんとは思えないようなL学の楽しさを表現なさってましたね。
同じく新人さんのFENNEKさんの作品と共に、本当に楽しく読ませてもらいました。
今度はYOSSYとおいかけっこでもしてもらおうと思ってますので、
これからもよろしくおねがいします。m(_)m

さてと、この調子で”約束”を果たしましょうかねっ(^^)
では、YOSSYでした。