別段、何が違うわけでもない。 相変わらずの夏の陽光や、寝そべっている芝、聞こえてくる喧噪やなんかに も──著しい違いはない。…強いて言えば、普段よりも多少静かと言うところ か。だが、それも大した意味を持つことではない。 …しかし、彼はその分少し──本当に少しとしか言いようのない程なのだが ──物足りなさを感じていた。 ──だが騒ごうにも、きっかけがいない。 例えば、手っ取り早いのは柏木家の姉妹──特に楓辺りを行方不明にでもす れば騒ぎは起こるだろう。確実に。……しかし事後処理が面倒だ。そう言う仕 事も──建前上なのかも知れないが──やらねばならないだろう。いくら臨時 書記とはいえ──任される役なのだから(いくら何でも健やかにそこまで手伝 わせるわけにはいかないし、美和子や由紀がそんなことを自分に押し付けない わけがないのだ)。 他に、自分にはあまり関係なく騒ぎを起こす方法はないだろうか──?と、 彼、Runeは芝に寝そべりつつ考える。 『茶道部』を廃部にするなどいきなり発言してみる…とか──苦笑しつつ、 Runeはいろいろと考えていた。例えばこれだって、それなりの騒ぎは起き る。科学部が潰れただけで相当なものなのだから、人気の高いこの部がもしも 潰れるようなことになったら面白いだろう。──しかし根回しが少々面倒かも 知れない。そもそも、騒ぎの収拾をつける方法があまり考えつかない。 ──ともかく面倒ばかりだ。 誤解を起こさせて生徒会、ジャッジ、ダーク十三使徒、エルクゥ同盟、アフ ロ同盟、第二購買部、来栖川警備保障、強化人間、教師、草…をぶつけ合わす とか──そんなことも考えてみたが、そもそもどうやって戦争を起こさせるの だ(というか、どうやってギャグ、シリアス、コメディ、ダークを同じ土俵で 闘わせるのだ)?考えるのは面倒だ。 ──手っ取り早く、そしてやられても裏のない悪役…か。 アンパンマンに対すバイキンマンといったところか。純粋にそう考えればバ イキンマンファンは多いのだから人数が増えてもいいモノだと思うが。 (──都合の良いこと書くが、筆者は入ろうとはしていないだろう?) (楽屋落ちはいけませんが…はい…その通りです…) とは言え、いないものは少なくとも今現在では致し方ないとも考えられる。 ──…仕方ない、少し寝て考えよう…。 というか、カロリーも勿体ないのだし。 「──あの……Runeさん」 ふと気がついたとき、Runeはそんな声に顔を突っつかれていた。もとい、 そんな声の主に何か毛の生えたもので突っつかれていた。声+毛の生えたもの= ゆきとモップ。そんな解答に至ると、すぐさま彼は大声で叫んだ。 「我掲げるはあかりの白刃☆」 なんで☆が──とゆきが突っ込もうとした瞬間、彼は具象に切り刻まれてい た。はっきり言って軟弱な坊やには過ぎた攻撃だ。彼は吹っ飛ばされたあげく 学校の窓に突っ込み実はそこが女子更衣室で着替えていた今度は本物のあかり に蹴りをかまされ地球一周旅行を光の倍のスピードで行って(因みにこの途中 beakerと歩いていた少女B(坂下よっっ!!)と佐藤昌斗と蹴りの練習 をやっていた青い人(青い人って言わないでぇぇぇぇぇ!!)を吹っ飛ばした のは言うまでもない)漸く帰ってきたときには既に形をなくしていたのだか五 分ほどして元の姿に戻ってしまった。因みに、少し(形をなくしていたとき に)土が混ざったらしく身体が茶化気味であるのは機密事項だ。 ──で、そんなことには一向に構わずRuneが気持ちよさそうに伸びをし ながら呟く。 「んーーー────やっぱ寝起きには魔術を一発だよな」 訳わからん。──ゆきは冷や汗気味に思った。因みに、いろいろありすぎて 既に怒る気力すら持っていなかったりする。 Runeは伸びを終えてからゆきに振り返ると、 「で、人の快眠の邪魔をしてまで俺に言うことはなんだ?」 と、不機嫌そうな表情で言う。…ゆきは心底疲れたように(というか疲れて なかったらそれこそ化け物だと思うのは筆者だけ?)嘆息に似た溜息をつくと、 ゆっくりと言い始めた。 「……エッと…。Runeさんが、今まで、寝ていた、ところを、今から、僕 が、掃除をするので、どいてて欲しいなー、と、思ったん、ですけど」 「読点が多い面倒くさい却下さよなら」 「そ、そんな…それじゃあ話が進みません…」 「…わかったよ」 Runeは口論をするのも面倒になってそう言うと、ぼーっと辺りを見た。 アスファルトの道から学校の壁から滑りそうなほどぴかぴかと輝いている。っ ていうか浮気好きで有名な少年Hはもう既に滑ってる。 「──……おっ!…俺は…主役の…藤田…浩之だぞ…」 そんな呻きも聞こえるがもう既にわざとなので無視することにしているRune。 「──どーでもいーんだが」 Runeは、ぴかぴかの道を眺めながら呟いた。因みに今はマルチがスクリ ーンセーヴァーよろしくレミィに狩られそうになっている。その後方にはセリ スの影も勿論見えるが。 「──あれ、モップで掃除したのか?」 勿論、ゆきは答えることが出来ない。それと、今は滑るはずの道をTaSが 平然と猛スピードで疾走している。流石アフロである…と言ったところか? 「それと」 もう一度、辺りを見回しながら呟くRune。あ、今度は秋山登に梓が追い かけられてる。 「お前、『ここ』って俺が寝てるのは芝生のうえじゃねえか」 屋上から楓と西山と瑞穂と岩下がそれとなく下の滑るアスファルト騒ぎを見 ているが別段どうしようというわけでもないようだ。だってこれは掃除の成果 なのだから。 ゆきはRuneの問いに、さも当然のように答える。 「別に…出来るんだから掃除したって良いじゃないですか」 確かに、Runeの周りの芝は艶を持っている。これは滑らないらしいが。 ──そのかわり、風見にやられた祐介が芝生に刺さっているのだが……どうや ら二人は気がつかないでいることにしたようだ。 「そう言う問題か……?」 呆れた顔でそう言うRune。しかし、多少満足ではあったのかも知れない、 小さいとは言え、それなりの騒ぎは起きているのだから。 ──ゆき…か、使いようによっては…? Runeの独り言。だがそのお陰で彼は気がつかない、雛山理緒が滑ったの はまあ普段からだから良いとして『あの』川島はるかが何故か「すって〜〜〜 ん」と盛大に(理緒につまづいて)転んだことに。因みに、それが辺りに人を 呼び、更に転んでしまう被害者を増やすことになってしまっている。 ──そうだな…試してみるか…。 Runeは何となく思いついたことを実行に移すことにした。思わず笑みで 顔が歪む。そのとき、道路では笛音とティーナが滑る道路を利用してソリをや っていた。勿論、ソリの素材はDボックスなのだよ我斗損(爆)君。 「おい、ゆき…ちょっと後ろを向け」 唐突にRuneに言われ、驚きつつもゆきは素直に後ろを振り返る。因みに そこでゆきが見たものは、笛音とティーナに対抗してスキーをやっているM・ Kの姿だった。注目のスキー板は彼女の奴隷の矢島・橋本だ。ご愁傷様。 「おおーーいいっ!!M・Kーー、その辺にしとかないと大事な奴隷がいなく なっちゃうぞ…………!(どがっっっっっ)──────────」 どことなく諦めた印象のあるつっこみをゆきが言った瞬間────何か鈍い 衝撃によって、彼の意識は飛ぶことになる……Runeに、後ろから思いっき り殴られたのだ。貧弱な坊やことゆきにとって、彼の素手の拳で十分気絶でき るのだ。──変な日本語だが……。 「ゆきちゃんっ!大変だよっっ!!早く起きてっっっ!!!」 毎度毎度のことだが、ゆきの登場シーンは寝ていたり気絶していたりするこ とが多い。必然的に、初音がこういう科白を吐くのは多くなるのだ。まあ、と もかくゆきはその一声で目を覚ました。 「はい、…ええと、おはよう初音ちゃん──」 目を半分だけ開けた状態で、更に寝ぼけてそんなことを呟くゆき。というか、 本当は抱きついてしまいたいのを我慢していただけだったりする。 「────どうも、何かあったの……?」 滅茶苦茶な日本語だが、慣れきっている初音にはそれだけで通用する。初音 はゆきを覚醒させようと彼の身体を揺り動かしながら言った。 「エッと、よく分かんないんだけどなんか変な人たちがたくさん来てるのっ! !なんか、ぴかぴかに光ってて、それでみんな同じ顔してて…」 慌てていて要領を得ないが、それでもゆきは大慌てで跳ねるように立ち上が った。──彼だからこそ、それがなんであるかに気がついたのだ。 「は──初音ちゃんっ!!それ、何処にいる??」 そして、初音が驚くほどの狼狽ようでそう言う。 「ええ??あ、あの、校門のところだけど────」 「そうっ、ありがとうっ!初音ちゃんは、危ないから図書館にでも逃げていて っ!」 「う、うん。ゆ、ゆきちゃんは…?」 「僕は──そいつらを止めなきゃっ!!」 そして、初音の返事を待たずに校門の方に駆け出す。──少し残っている道 路の艶につまづきながらだが…。 「……ゆきちゃん………?」 初音は呟いた。彼女は気がついたのだ──先ほどのゆきの顔が一年前の修学 旅行の…あの事件(『ゆきの独り言(独りよがりとも言う)』前中後編参照) の時に似ていることに。…だがどうすることも出来ず、初音は後ろ髪を引かれ る思いで翻すと図書館に向かった。 ──相変わらず陽光は照りつけるが、人は二つに別れることになっていた。 先の、…ゆきと初音のように…。…いや…?──少しそれは違うようだ。も う一つ、パターンがあった。 暗い部屋──外からの光と、視線と、喧噪を一切遮断した部屋──。そこに、 男が2人いる。片方は満足を、片方は不機嫌な皮肉を笑みにしている。 「……ゆきが漸く目を覚ましたか…。これで勝負は決まったな。いくら彼が最 弱貧弱男だとしても、戦力にかわりはない」 満足な笑みをあげる男──Runeはそう呟くと、もう一人の男に視線を投 げる。すると、不機嫌な声が部屋に響いた。 「いったい、お前は何がしたい。分かり切っていることだろう?仮に俺達が全 戦力を投じたとしても、お前達に勝てる見込みなど万に一つもないということ を……………!!!!」 そして、彼を取り巻く『生物以外の物体達』も憤ったような視線をRune に浴びせかける。だが、Runeは動じずに──あくまでも悪役ぶって──答 えを返す。 「それで構わないんですよ」 ──そう、それで構わないんです…。苦笑混じりに続ける。 「要は、大群で弱い悪役が欲しかったんですよ。誰も危険にさらすことなく、 それでいてそれなりに時間がかかり長く楽しめる悪役が…。それに、今外で闘 っている連中とあなたの取り巻きだけならばコメディでの使用も可能ですし、 あなたが出ればシリアスにも対応できる。理想に結構近いんですよ──」 Runeは咽を鳴らした。いつもの不機嫌な顔ではなく、心底この状況を楽 しんでいる…。だがそうまで愚弄されても、男と生物以外の物体達は彼に手を 出さなかった。いや…だせなかった。本能的に…彼に畏れを感じていたのだ。 「──ねえ、そう思いませんか?オリジナルのタケダテルオさん?」 タケダテルオと、取り巻きのメタルタケダテルオ(改)達は…答えなかった。 ただ、悔しさに唇を噛んでいた。 外にいるメタオ達の全滅が伝えられたのは、それから約五分後のことだった。 そのニュースを聞いたタケダテルオ達は、ただ無言で部屋の外に出ていった。 闘うというわけではなく、居たたまれなくなったのだろう。そうRuneは解 釈した。 ──だが、彼等はその呪縛からは逃れられない。 Runeは、手に持ったグラス──ただ、今回は過ちを繰り返さないために グレープジュースだが──を弄びながら思う。 ──俺がゆきの頭の中にいるアイツ等を具象させ、存在させたのだから。── やられ役となるために…。だから、アイツ等は元いた場所には帰れないし、悪 役をやめることもできない。 Runeは嗤った。 これからは自分の手を煩わすことなく、汎用性の高い悪役達が騒ぎを起こし てくれる──と。 外は相変わらず陽光が照っていることだろう。 外は再び平和──?──が戻っているだろう。 だが、明日からはイベントが無意味に発生するだろう。 そう、何も考えず、ただ無意味に── … お し ま い … (原案/M・K 原作・文/ゆき) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− (題名おもいっきりパクリやん) ええと、ともかくあがりました。 そもそもの始まりは、(Runeさんの暗躍生徒会のやつを読んだあとの) 「私たちも悪役をつくろっ!!」というM・K様の一言でした。 ええ、たったそれだけだったんです。 で、何となくいろいろ考えていて、だったら都合の良い悪役でいいかなとい う考えに。即ち我らが雑魚敵メタオ君一味。 『メタオの逆襲(もしくはメタオ復活)』『魔王降臨』に出ています。分かん なかったら斜め読みで結構ですからどうぞ。 勿論、(少なくともまだ)非公式ですから無視しても結構です。 (悪役不在で困ったときにはどうぞ遠慮なく彼等を) 因みに、メタルタケダテルオ(通称メタオ)はともかく、タケダテルオはオ リジナルキャラではありません。設定は勝手に考えたんだけど…。 (スパロボ的設定。って、知らなかったら解らないじゃないか) 名前:メタルタケダテルオ (通称メタオ) Lv30 格闘:159 回避:189(+120) 反応:179 射撃:139 命中:189(+120) 技量:164 精神:ど根性(体力全回復)・自爆 特殊技能:人工エルクゥ 名前:メタルタケダテルオ(改) (通称メタオ・改) Lv30 格闘:169 回避:203(+120) 反応:186 射撃:149 命中:198(+120) 技量:185 精神:ど根性・自爆 特殊技能:人工エルクゥ 「メタルタケダテルオ・機体の設定」 HP:9800 移動力:5 装甲:1500 EN:210 運動性:120 限界:400 特殊能力:シールド無・暴走 武器:パンチ(攻撃力1500) 名前:オリジナル・タケダテルオ (通称オリジナル) Lv40 格闘:207 回避:237(+160) 反応:196 射撃:177 命中:238(+160) 技量:216 精神:ど根性・自爆・気合い・鉄壁(装甲二倍)・閃き(絶対回避)・魂(ダメージ三倍) 特殊技能:エルクゥ・底力・切り払いLv4 「タケダテルオ・機体(?)の設定) HP:12000 移動力:7 装甲:2200 EN:250 運動性:160 限界:420 特殊能力:シールド無・暴走・鬼化(成功率50パーセント)・自己再生(小) 武器:爪(攻撃力1800) :捨て身(攻撃力2700) (いや、お遊びですけどね、これ)