体育祭Lメモ「棒倒し&棒引き(中の上)」 投稿者:ゆき
三年
 ジンとセリスは……生きていた。
 数百回のリセットと集団リンチと『おーのー』と弱すぎるボス達を倒し、最後に意図的にとしか考えられ
ないような間違え方をされたスタッフロールを麻薬的快感の中で見たあと、見事現世に帰還したのだ。
「……俺、今ほど生きてて良かったって感じたことねえかも…」
「それはそれで哀しいけど…同じく」
 二人は、血でかさかさになった顔を拭いながら、やっぱり泣いた。
「あ、ジン先輩、セリスさん」
 ──と、いきなり二人の後ろの方から声がかかった。振り向くと、一人で棒を支えているゆきが、不思議
そうな顔をしている。
「……?」
「……(どうやらぼく達、図らずも一年生のところまで来てしまったみたいだね)」
「……(そうみてえだな……。でもよ、俺ぜってー、デス様のおかげだとは思わないからな)」
「……(右に同じ)」
「……あのー、二人でなに話してるんですかぁ…?」
 ゆらゆらと安定しない棒を必死に支えながら、もう一度ゆきが言うと、ジンはニッコリ笑って、
「いや、よくお前一人で支えてられるなと」
 と、微笑ましそうに言った。
「と、言うわけでさくさくっと旗をいただくよ」
 続けてセリスが言い、ゆきに近寄ろうとしたとき、セリス達を追い抜いて十人ほどの草メンバー(初音に
漫画を見せる同級生や、香奈子の科白に爆笑する生徒など)が一斉に棒めがけて飛びかかった。
バシュゥゥゥゥゥゥゥゥ!
 が、ゆきから四メートルの辺りで壁に当たったかの様に止まり、その上その見えない壁に流れる電流をし
こたま喰らってその場に(美味しそうに…もとい、こんがりと焦げて)倒れた。
「おお、フィールドだ」
 それを見ていたジンが煎餅などかみかみしながら呟くと、
「ああ!マネしたなぁぁぁ!!」
 セリスはそう叫んで壁に近寄り、自分もフィールドを広げる。
「マネですけどマネじゃないですーー(何だそれ)。こっちは攻撃用だもーん」
「結局パチじゃないかぁぁぁぁ!!」
 二つのフィールドが互いを拒絶しあい、反動で紫電が辺りに飛び交う。そのとばっちりにあい、罪もない
アリ(千葉県 太郎  推定年齢五十八歳  公務員 『係長昇進目指して頑張ります』)が美しく儚い一生の
幕を閉じた。
「だぁぁぁぁぁ、セリスさんしつこいですよーー!」
「しつこいのはきみだーーーーーー!!!」
 今度はその反動で、どうやら初音にバズーカを喰らわされてここまで吹っ飛んできたらしい生徒(藤田浩
之(仮))がもう既に閉じさせられていた一生に最後のとどめを刺された。
(浩之(仮):っぐしょう……筆者…必ず殺す…)
「たまには僕だって勝ちたいですーーー!」
「君は負け役で十分だーーー!」
 またしてもこの反動で、さり気なくリーフ学園を制圧しようなどと企んでいたダリエリが不慮の事故とい
う形で亡くなられたが考えてみるとまるで関係ない。あ、死んでるから死なないか。
 そんな二人のやり取りを、饅頭などはみはみしながら見ていたジンではあったが、いい加減飽きてしまっ
たらしい。彼は溜息をついてから言った。
「なあ、セリスよ────────────」
「なんだっ?今忙しいから手短に──────」
 だが、ジンはその言葉を最後まで聞かないうちに、ジェットスクランダーを構えると躊躇うことなくそれ
を放った。
ずどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん(やる気なさげな音)
「うきゃん☆」
 当然、ゆきは吹っ飛ばされて何処かお山の向こうのその又奥辺りにでも愛を探しに──じゃない、その辺
の茂みの中へ飛んでいった。
「────なにもそんなことしなくてもなあ…」
 ジンは、がりがりと頭を掻きながら呟いた。デスをクリアした人々は、どこか悟っている風に、少なくと
もそれをやっていない他人には見える。

一年
 漸くメタオ軍団を倒してレヴェルアップした一年生達は、草メンバー共々三年生の棒に飛びかかった。こ
こまで書いて漸く出される棒倒しの醍醐味である(涙)。
 ──が、普通なら蹴る、殴る、潰す、よじ登る、触る(何処を?)程度で住むのだが、L学園だとそうは
いかない。
「我は放つあかりの白刃」
「人間バリアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
 Runeがやる気なさそうにはなった魔術を、UMAが辺りの人間達を肉の壁にして防ぐ。
「ヒッ、ヒヒヒヒヒヒヒヒキガエル」
「私にの上に登るなぁっっっっっっっっっっっっっっっ!!」
 空によじ登られた岩下が少々取り乱して迎撃する。
「はいはい、お疲れになった方はお茶でもどーぞ」
「やめんかぁぁぁぁぁ!!!!」
 いつのまにどうやってやって来たのやら、まさたは給水所を開いていた。──お茶で。
「日頃の怨みだっ!潰せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
 SS作家の面々が草メンバー達に潰されていたりもする。
 ともかく──
 内容はともかく、見た目は意外と普通に、それは勿論少々の爆発とか初音のバズーカとかも飛んで来たり
はしたわけだが、とは言え正統派にその二つの学年は戦った。戦って、戦って、戦い抜いた。そして──
 あっという間の数分間の後、倒れている人の山の上に、ボロボロになった旗を手に持っている風見が居た。
──これで、少し休める……。
「……その、足をぐりぐりするのをやめろ…」
 その足下でOLHが呻いているが、他人は私怨には干渉しない物だ。──こうやって書いてるが。
──ともかく、後はこれを審判のところへ持って行くだけだ…。
 と、風見が容赦なく足下の人間達を踏み締めながら歩き出したとき。
『一年生、旗を取られたため続行不可能な形態へと変形してもらいまーす』
 スピーカーから、やたらと明るい千鶴の声が響き──
「「「「「な、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」」」(←注:魂の叫び)
 ──一年生達は、とてもここでは書くことができないような──と言うか筆で表すことがまるきり不可能
な──それはそれは恐ろしい物質(?)へと変体した……。
「ゆきちゃん……覚悟しとけよ……」(←注:魂の(略))
 それは、一年生全員からゆきへ対する怨みの声。

二年
 その数分後。
 漸く体勢を立て直した三年生の元へ、再び、今度は二年生達が到着した。どうやら一年生のところへ先に
行ってしまったり薔薇集団に追いかけ回されたりしたようで顔色が悪いが、それよりも寧ろ目が血走ってい
るのが恐い。 
「うらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
 奇跡的に生き残っていたらしいメタオの一人が、二年生の集団へ一人特攻していく…。
どかばきめきゃ
 まるで海が塩辛いかのように、そのメタオはものの数秒で鉄屑へと変わった。
『この戦は……賽の河原の合戦として後世まで歴史の教科書に載ることになるだろう…』
 相変わらずエルクゥユウヤなまま、声だけシリアスに柳川が(当然マイクをぶんどって)言ったのと同じ
か、或いはそれよりも一瞬速く、二年生が──一年生よりも遙かに感情的に──旗に向かって駆け出した。

「取り敢えず俺を踏み台にするんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
 秋山が馬飛びするみたいな体制を作り、きらきらと美しく光る目で皆に言ったが──誰も相手にしてくれ
なかった。

「猫町さん…困ってるんだ」
 人たちがうじゃうじゃと棒に飛び乗ったり、それをはたき落としたりしている最中、雅史は猫町に心底困
ったような風な声で言った。 
「…実際、すごく困っていそうですね」
 状況が状況である、猫町はそれ以外には何も言わずに頷いた。
「猫町さん…それじゃあ…!」
 そういった雅史の目は、恐かった。
 少し怪訝に思った猫町だがもう遅い。
「──人間魚雷になって僕を助けて下さい!!」
「ちょっ、ちょっとまっ──────」
ずこーーーーーーーーーーーーーーーん
 某くにおくん的な人間魚雷となってしまった猫町は、仲間蹴散らしつつぶっ飛ばされ、そのままぼう近く
の人間巻き添えにして漸く止まった。
「……全ては浩之のために…」

その頃の浩之
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁ……」
 例の二人に苛められていた。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
おおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「やらせるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
 西山が対峙しているのは……XY−MENだった。
 がっちりと腕をつかみ合い、一歩も引かない。常識を越えた力と力のぶつかり合いだが──しかし本筋と
は全く関係ないので視点をずらそう。

その頃の浩之
「何で蟻ぃぃぃぃぃ!!??」
 命辛々逃げ出した浩之だったが、今度は何故か蟻の大群に襲われていた。

「その辺にへばりついてる(ぴぃーーーー)は何なんでしょうね」
「さあ、考えない方が良いですよ」
 残念ながら戦線を離脱してしまった東雲忍と佐藤昌斗の二人は、一年生(だったもの)を見てそんなこと
を言っていた。

その頃の浩之
「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!なんなんだいきなりぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」
 蟻の大群に体操服を散々ちぎられて半裸となってしまった浩之は、ジャングルに生息していた人喰い族の
【男】達に求婚されていた(【喰う】の意味が違うんだよ、きっと)。
「よるんじゃねぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」

 YOSSYFLAMEは、ひしめく男共をかき分けて上によじ登っていた。この学園にだってそうそう薔
薇は居ないだろう(と願いたい)から、これを良しと思う人間は少ないだろう。
「いかせるものかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
 下から草が飛びついてくる、が、それを逆に踏み台にして一気にYOSSYFLAMEは一番上にまで登
り詰めた。
 人間という不安定な足場を必死に踏みながら、彼は旗を取り、そしてその情報が流れきらないうちにすと
っと地面に降りる────
 そして、そのまま審判の居る朝礼台のところへ一気に駆け出していく!
 だが、
「ファイガ!!」
ずがぁぁぁぁぁん!
「プアヌークの邪険よっ!」
ずどぉぉぉぉぉん!
「みぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」(何か叫んでる科白ばっかり書いてるような気がしてきた…/涙)
 あっさりと葉岡とハイドラントに狙撃される。
 YOSSYFLAMEの手から旗が放れて転がるが、それを取ったのは漁夫の利を狙った悠朔だった。
「……うう、俺って……」
 YOSSYFLAMEの呻きは、第二の爆音に消える。
「ああっ、何をする!!」
 ハイドラントが声と共に魔術を放つ。
「当たるか……って、あれ?」
 だが、それを避けた悠朔の手には既に旗がない、ヘイストを使った葉岡が奪い取ったのだ。
 その隙をついてハイドラントは悠朔を撃墜し、間髪入れずに葉岡に飛びかかる。その手には既に魔術の剣。
「スロウッ!!」
 だが、葉岡も寸でで魔法を唱え、ハイドラントの動きを鈍くするとそれを避けた。
「ストップッ!!」
 立ち上がるかあがらないかのところで、止めの静止魔法をかける。
「しまっ──」
 ハイドラントは毒づいたが、しかしもう動けない。
 葉岡は再び駆け出して、誰もが到達しきれなかった審判の元へ──行く途中で、あまりにも唐突に、まる
でマルチみたいに何もないところで転んだ。
 そして、彼の手を放れた旗はコロコロところがり──
 それは矢島の足下に来て──
 矢島はえーととか呟きながらそれを拾い──
 そのまま、審判の元へ持っていった。

その頃の浩之
 再び逃げ出した浩之だったが、今度は地雷原に引っかかって爆発していた。

『と、言うわけで──得点の換算は後回しで表彰です!』
 千鶴の声と共に、皆の視線が壇上の二人──ジンと矢島に注がれる。
『取り敢えず、TaSさんが願いを聞いてくれます』
 いつの間にか戻っていたTaSが、相変わらずのアフロのまま壇上にあがった。そして、マイクを矢島に
渡す。
「………エーと……俺…その…」
 渡された矢島はもじもじしながら何事かを呟いたが、どうやら誰にも聞き取れなかったらしい。
「はっきり言ってもらわないと願いが聞けマセーーン」
 そう窘めてから笑うTaSを見た瞬間、矢島ははっとして呟いた。
「まさか……『聞いてあげる』だけじゃないっすよね…」
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 全校が凍り付く。
 当然、
「図星デスネー」
 TaSはけらけらと笑った。

                       … 中の下に続いちゃう …

得点  一年:二十点
   二年:四十五点
   三年:六十点