Lメモ? 「戦闘開始」 投稿者:koseki



  1月1日 朝 N市 某新聞屋


 幾人もの従業員が、やつれた顔をして長いテーブルを囲んでいる。
 普段、チラシや新聞が置かれているそのテーブルには、人数分の升が置かれている。
「諸君、ついにこの日がやって来た…」
 上座に座る男が、升を手にした。
 つやつやと、健康そうな男の顔を見て、従業員の殺気が上昇する。
「確かに、今まで少しは苦しかったかもしれぬ、辛かったかもしれぬ」
 睡眠時間一時間、労働時間19時間、ついでに飯抜きの状況が少し辛いだけで済むのかは多分に謎で
ある。
「だがっ、それも今日で終わりだっ」
 上座の男は後ろの引き戸を開いた。
 食卓に並ぶ、クリキントン、鯛、赤飯、そして、ビール。
 長テーブルを囲んでいた男女の目の色が、変わる。
「諸君、これが最後の戦いであるっ! 今、この壁を乗り越えねば我々に正月と言う文字は無いっ!! 
総員心して職務に励んで欲しい!!! ブロージット!!!」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「応っっっっっっっっっっっっっっっっっっっ」」」」」」
」」」」」」」」」」」」」」
 升に注がれた日本酒を一気に飲み干し、野獣と化した従業員達は一斉にバイクに乗りこんで出撃して
いった。
「頼むぞ………諸君……」






 飲酒運転で警察に全員逮捕されたのは、それから数分後の事である………




  Lメモ? 「戦闘開始」




「と、言う訳でピンチよ! koseki君」
「自業自得のような気がするんですけど〜」
 店には、酒を飲めない高校生二人が取り残されていた。
 叫ぶのは理緒、泣くのはkoseki、目の前には、配る人が居なくなった新聞が山のように積まれて
いる。
「でも所長は逃げちゃったし、私達が配るしかないじゃない」
「それはそうなんですけどね…」
 目の前に新聞を一部、開いてみる。
 本紙0.5Cm、正月特別ページ2Cm、チラシ、1Cm……計3Cm5mm。
 それに部数をかけると。
「計算しない方がいいよ、多分…」
「…そうみたいですね…」
 通常、一区域の部数は200から300部ある。
「……じゃ、せめて私達の区域だけでも終わらせよう、他の区域はそれからね」
「は〜い」



  3:10分 koseki


 普段と違って、正月は新聞が少し早く着く。
 必要な記事を前もって書いているからだが、おかげで早く出れる、が。
「……全然積めない……」
 通常、100部から150部積める特製自転車(タイヤ周り、フレーム強化 BY柳川裕也)でも
50部か60部くらいが精一杯である。
「先に行くね」
「あ、はい〜」
 素早く理緒が店を出る。
 流石に、去年も正月配達を体験しているだけあって慣れたものだ。
「……ぼくも早く行こう」
 座高と同じ位まで積み、ゴム紐で固定する。
 そして、思いっきりペダルをこいだ。

「……あれ??……」
 自転車は、ぴくりともしない。
「おかしいなぁ、普段と同じ位の高さなのに…」
 kosekiが後ろを振り向くと、荷台の上に人が座っていた。
「こんばんは〜〜 開けましておめでとうございますぅ〜〜」
「って、何処から湧きましたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ??!!」
 叫びながら放ったキャノン砲の砲弾は、彼のペットである猫が手に持っていた風呂敷に包まれて地
に落ちた。
 水野 響、リーフ学園一年生で、あまり信じられないがSS不敗流の一人である。
「はっはっは、明けましておめでとう、koseki君」
「ひなたさん! これは貴方の差し金ですかっ!!」
「何で新年早々そんな事をしなければいけないんですか、ほら、水野君帰りますよ」
「あ、はいです〜〜」
「ちょっと、う、動かさないでくださいぃぃぃぃぃ」
 自転車は少しの衝撃でも倒れそうな、危険な状態である。
 ポンッと、水野は気軽に荷台から飛び降りた。
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!??」
 案の定、自転車は倒れ、kosekiは新聞の下敷きになった。
「……何で……こんな目に……」
「大丈夫? ねぇ、大丈夫??」
 ルーティが棒で突っつきながら聞いてくるが、答える元気はない。
「さぁ、ルーティも帰りますよ、家で美加香がおせちを用意して待ってるんですから」
 ルーティに話し掛けるひなたの目は本当にやさしい。
「あの〜………起こしてもらえると助かるんですけど〜」
「そのくらい自分で起き上がれないんですかこの根性無し、それでも男ですか??」
 kosekiに対しては、非常に冷たいようだ。
「お、起きれますよっ……えい、えぃ、くぅぅぅぅぅ」
 だんだん泣きかかってきたが、ひなたは気にしない。
「さぁ、帰りますよ」

 kosekiが、新聞をどければ普通に起きあがれるということに気がついたのは、それから
10分後のことである。


  3:50分 雛山理緒

「うわー、もうこんな時間なのに……」
 神社がある裏山はいまだ初詣の客で埋め尽くされていた。
 そして、その客を狙って屋台や出店が参道の脇に展開する。
 理緒が配達する場所も、そんな出店の一つであった。
「あ、理緒さん、待ってましたよ」
 beaker、第二購買部の店長であり、最近は拝み屋のような仕事もしているらしい。
 恋人と噂される坂下好恵や、沙留斗、きたみちもどるといった第二購買部のメンバーも
全員お揃いのはっぴを着て、所狭しと走っている。
「beaker君お待たせ、はい、じゃあスポーツ紙50部と一般紙5部…………だよね」
「はい、確かに、じゃあこれを着てもらえますか?」
「え? このはっぴを?」
「ええ、ちょうど人手が足りなくて困っていたんですよ、さぁ、急いで!」
「ちょ、ちょっと、beaker君、私まだ仕事が」
「一時間、いや、三十分だけでいいですからお願いしますよ」
「で、でも」
「バイト料ははずみますから」
「まだ…あまり配ってないのにぃ〜」
 そう呟きながらも、結局はっぴを受け取る理緒。
「じゃあ理緒さん、よその屋台に物資の配達をお願いしますね」
 目の前には、ヤキソバやラーメンのスープの元が詰まっている缶などが山積みになった
リヤカーが一台おいてあった。
「さぁ〜皆様よってらっしゃい見てらっしゃい、ついでに買ってもらえるとなお嬉しい第
二購買部の初売りだよぉぉ〜」
「ええぇぇ、これを配るのぉぉ〜」

 …第二購買部は、今年も繁盛しているようだ。


  3:5?分  koseki

 神社とは対照的に、このあたりの住宅地はかなり静かである。
 その中にある一つのマンション 十階建ての高級マンションだ の前にkosekiの自転車
は急停止した。
 そして、最上階目指して全速力で走る。 
 この際装甲が擦れて出る金属音など、気にしている暇は無い。
「ちょっと、うるさいわよっ」
「ごめんなさいっ、急いでるんですっ」
(苦情は……後で考えよう)
 今はそれどころではない。
 二段抜きで階段を駆け上がり、壁に立て掛けてある傘をなぎ倒す。
(あ、後何分だろう?)
 ……新聞屋と、客との契約の中の一つに時間指定というものがある。
 文字通り、指定された時間までに届けなければならないという契約だ。
「くぅ……全力ぅぅぅぅぅぅ」
 背中のバーニァをふかし、階段の吹き抜け部分をまっすぐ飛ぶ。
 目指す部屋に、まだ明かりはついていない。
「今日こそはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 がちゃっ

「遅かったな」
 kosekiの目の前で、扉は開いた。
「あぅ……ディルクセンさん………」
「では、契約通り今日の新聞の代金を置いていってもらうぞ」
「ディルクセンさん……そんな大人気無い……」
「4時までに新聞が部屋に届かなかった場合はその日の新聞代を返金する、それが契約
だったよな」
「…………はい……………」
 しぶしぶ、ポケットからお金を取り出す。
 当然、このような支出は配達担当者の負担である。
「うむ、確かに…………今年もタダで読ませてくれるのを期待しているぞ」
「嫌ですよ、そんなの……疲れた……」
 たまには、こんな客もいる。


  4:26分 雛山理緒

「XY-MEN君、明けましておめでと〜」
 XY-MENの屋台、もう、時間も遅いせいか、カウンターは泥酔した親父たちが舟をこい
でいる。
「あ、理緒ちゃんおめでとう、新聞はその辺に置いておいてくれ」
「その辺って…まぁ、いいけど…」
 周りを見てみるが、ビールビンやおでんの皿が散乱していて空いている場所は無い。
 仕方がないので、その辺で寝ている親父の背中に置いた。
「ん、んんぁ」
 不気味な声を出す。
「……気持ち悪い」
「それより、そのリヤカーは何だ?」
「あ、そうそう、beaker君のところにスープの元頼んでたでしょ、持ってきたよ」
「おっ、ようやく来たか…おいオッサン、ラーメン作るぞ! 待ってたんだろっ」
「んぁ? らーめん??」
 一人の親父が、ゆっくりと反応する。
「そう、小麦粉を練って、それを茹でたものを温かいスープに入れた食い物だ、食いた
いんだろ?」
「ん…」
 ほかの親父達は、まだボーっとしている。
「味噌、醤油、とんこつ、どれだ?」
「みそぉ」
「しょーゆー」
「てんぷらー」
 XY-MENは次々メモを取っていく、ふざけたやつには重い蹴りをお見舞いして、また眠
ってもらった。
「うし、五分で作るから待ってろよ、あ、理緒ちゃんも食っていくか?」
「う〜〜〜〜」
「お、おい、何で泣くっ……って、ああ、仕事中か」
「…うん、ごめんね」
「そうだな、7時くらいまでに終わったらまたこいって、そんときゃおでんでも包んで
やるよ」
「ほんとっ、ありがとう!」
「いいっていいって、おい、オッサン、まず料金千円、払えるか?」
「おー、任せとけっ、わかぞー」
 まだ酔っているのか、言動があやふやである。
「……ぼったくりじゃないの?」
「これだから酒飲み相手の商売は止められねぇ、あ、風紀委の連中には内緒だぜ、見回
りで何人か来ているらしいからよ」
「そういう問題じゃないと思うけど…」

 飲み屋と言うのは、たいていこんな物である(偏見??)


  4:32分 ?

 一瞬の閃光。
 それに続く爆音。
 ただ、それだけでアパートの一室が消え去った。
「どう? 殺ったかな?」
「わからないわ、でも、これだけ火薬を使ったんだから…」
 3人の女性が、崩れ落ちていくアパートの下でのん気にお茶をすすっていた。
「…あ」
 一人が声を上げる。
 それと同時に、三人は思う方向に散る。
 直後、三人のいた場所を、熱線が焼き払った。
「おーやるやる☆」
 崩壊したアパートの煙の中から、鬼のような形相をした男が一人出てきた。
 ジン・ジャザム。
 煙で灰色に汚れた白いブレザーの下は、まだパジャマ。
 だが、手に持っているバズーカやらトマホークやらは本物だろう。
「あ、ジンちゃんやほやほー☆」
「『やほやほー☆』じゃねぇっ! 貴様ら何のつもりだっ!!」
「夜遊び☆」
「愛の語らい☆」
「新年の挨拶です」
「沈めっ、ゲッタートマホォォォォォォク!」
 手に持ったトマホークがうなりを上げて三人に迫る。
「なによー素直に答えただけじゃない」
 渾身の力をこめて投げたトマホークは、三人の中の一人、EDGEによって叩き落とさ
れた。
「何しに来たと聞いているっ!」
「柳川先生の要請で参りました」
「…は? 何の用なんだ、電芹」
「Y2Kの影響が無いか、チェックしたいと言っておりました」
「そうそう、だから私達メカニック四天王がわざわざジンちゃんを迎えに来たの」
「四天王って…三人しかいないじゃないか、たけるは?」
「たけるさんは寮において来ました」
 電芹(セリオ@電柱)が、その名の通り電柱の影に隠れながら言う。
「夜遊びは美容の大敵ですから」
「いや、別に異常は無いぜ、さっきみたいに火気管制も好調だし…」
 殺気を感じてジンは後ろに飛ぶ。
 先ほどまでジンが立っていた場所が、粉々に砕け、クレーターに変わる。
「四季……新年早々、良い度胸だな」
「どうでも良いからあそぼ、ダァーリン☆」
「ええぃ、貴様等なんかと遊んでられるかッつーかそれが本音だなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
 ジンの体からミサイルが撃ち出され、辺りに破壊を撒き散らした。

 そして数分後。

「……ずいぶんスッキリしましたね〜」
「ワシの……ワシのマンションが……………」
 後には、配達先が無くなって喜ぶkosekiと、マンションの残骸を見つめて放心するオ
ーナーだけが残された。


  4:55分  雛山理緒

「よし、これでbeaker君のほうは終わりかな?」
 ようやくリヤカーの中身が無くなった。
 配達もこれからは集合ポストに入れるだけでいいアパートが多い、これなら後一時間
もかからないで終わるだろう。
 リヤカーを返し、町に向かおうとした時。
「あれ?」
 何やら神社の裏で声がする。
「もうこんな時間なのに…何してるんだろ?」
 こっそりと建物の影からのぞく。
 そこに居たのは、二人の男と巫女さんが一人、その中の一人が、しきりに巫女さんの
周りを飛び回っている。
「おい陸奥、ポーズなんてどうでもいいだろうが早く取ろうぜ」
「ま、待ってください右かな、左かな後ろの立っていたほうが良いかなそれとも腕を組
んで………はぅぅ」
 巫女は、何故かリーフ学園のHMX−13セリオだ。
「デコイ君おはよう、なにしてるの?」
「ん? ああ理緒か、いやな、そこの陸奥にセリオと写真を撮ってほしいと頼まれてき
たんだけど……」
 セリオの足元で、陸奥は鼻を押さえてしゃがみこんでいた。
「さっきから一時間、ずっとこの調子でよ」
「……大変だね」
(落ち着け、落ち着くんだ、陸奥崇! せっかく社会勉強だ、文化の勉強だと言って巫
女さんののバイトを引き受けてもらったんだろうが、これ以外セリオといっしょに新年
を迎える方法は無かったんだ、しかもデコイ先輩に写真を取ってもらえるんだぞ!!
こんなチャンスは二度とない、いや、ありえない、落ち着け、落ち着けよ〜)
 …ゆっくりと、陸奥が立ち上がる。
「おっ、いいのか?」
「ハイ、スミマセンオネガイシマス」
「…ねぇ、睦君、大丈夫??」
 陸奥は答えない。
 そして、セリオの右隣に立った。
「よーし撮るぞ、動くなよ」
 デコイがカメラを構える。

 パシャッ

 ストロボがようやく二人を照らした。
「ようやく終わったか…もう初日の出の時間じゃないか…せっかくいい場所で取ろうと
思って準備してたのに」
「へーえ、デコイ君ってそんな写真も撮るんだ」
「お日様が出ていたほうが晴れ着の女の娘の写りがイイじゃないか」
「あー、そう言うことね」

「……オワッタ?」
 気が抜けたのか、陸奥は地面に座りこんだ。
「陸奥さん」
「はい?」
 今まで、困ったような顔をして立っていたセリオが陸奥を見る。
「遅れてしまいましたが、明けましておめでとうございます、今年もよろしくお願いし
ます」
 何気ない、社交辞令。
「……しまった!」
 陸奥が、赤い物を空中に撒き散らしながら倒れたのは、その直後である。


「…理緒、新聞」
「……こんなのを拭くために配ってる訳じゃないんだけどなぁ」


  5:24分 koseki

「ドクター、明けましておめでとうございます〜朝刊ですよ〜」
 試立リーフ学園の科学部部室、そこで、柳川はいつも通り何かの研究をしていた。
 相変わらず、正月も何も無い男である。
「おう、丁度いいところに来た、少しそのフラスコを見ていてくれ、沸騰しそうになっ
たら火を止めるんだぞ」
「あの〜ドクター、ぼく、まだ仕事中なんですけど…」
「何、少しだけだ」
 そう言うと、柳川はさっさと奥に入っていってしまった。
「大体、これって何の研究なんですか? 何か…ドリンクみたいですけど…」
「ん? ああ、空を飛ぶ薬だ」
「そら? あの雲や太陽があって永遠の世界に繋がってる?」
「最後はよく解らんが、その空だ…まだ試作段階なんだが以前マウスで実験したときは
30分の空中浮遊に成功した」
「へぇ〜、じゃあ完成したら自由に空を飛べるんですか?」
「うむ、ただ、まだまだ問題がある」
「問題?」
「ああ、空中で自由に身動きできない点と薬が切れるまでは降りれない点、薬が切れた
後、落下して死んでしまう点だな」
「…問題だらけじゃないですか」
「だから問題を解決するために研究している、おい、そろそろ良いのではないか?」
 フラスコは、丁度沸騰してきたところだった。
「あ、火、止めます」
「止めたらこのビンに移してくれ、それで完成だ」
 柳川が出てきて、牛乳ビンのような物を放り投げる。
 …どうやら丁度よいビンが無かったらしい。
「はい、移せばいいんですね」
 ゴム手袋をして、じょうろを手に持ち慎重に液体をフラスコから移しかえる。
「それで……だ、koseki」
「はい?」
「飲め」
「……はい?」
「実験をしなければ成功したかどうかなんて解らないだろうが、だから、飲め」
「でも、でも前までの実験じゃみんな失敗して死んじゃったんですよね」
「安心しろ、おまえなら体のスペアをとってあるから死んでも再生できる」
「そう言う問題じゃ…」
「じゃあ何か、オレの研究がそんなに信頼できないと、そうお前は言うんだな」
「そんあ、信じてますよぉ」
「では、問題はないな」
「あう〜」
 牛乳ビンを見る。
 黒く、ドロドロした液体は、何故かフルーツの匂いがしている。
「飲みやすいようにフルーツで味付けしておいた、繊維も入っているので健康にも良
いぞ」
「味の前に色を何とかしてくださいよぉ〜」
「うるさい、飲め」
「はぁ〜い」
 少し涙ぐみながら、鼻を押さえて一気にのどに流し込む。
 すると、ゆっくりとだが体が浮き始めた。
「え? ええ??」
「よし、成功だっ!」
 kosekiの体は部室の天井すれすれでようやく止まる。
「うむ、計算通りだな、koseki、少し動いてみろ」
「動けっって言われてもどうすれば…」
「頭を使わんか、貴様何のためにバーニアを背負っている」
「あ、そうか、じゃあ動きますよ〜」
「あ、待て、ゆっくり吹かせよ」
「え?」
 いつもの調子でランドセルについているバーニア吹かした。
 …いきなり、ものすごい量のガスが出てkosekiは壁から壁へとバウンドする。
「おいっこら、オレの研究室を壊す気かっ!!」
「そんな事言ってないで止めてくださいよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」

 泣いた所で止まるわけも無く……研究室が崩壊したのは数分後の事である。


  5:49分 店

「あっ、koseki君、そっちは終わった?」
「あぅ理緒さん、まだ全然ですよ。 後三回くらい帰ってこないと終わらないです〜」
 そう答えたkosekiはボロボロだ。
「……大丈夫? じゃあ私は隣の区域を配ってるからね」
「あ、そうか、今日はこれで終われないんですね」
「うん、でも、お酒が抜けた社員から戻ってるらしいから、あまり苦労しないと思う
よ、がんばろっ」
「は〜い」


  同刻 科学部部室

「まったく、殆どぶち壊しやがって……あっ、作りかけのメガランチャーも…くそっ
明日来たらどんな目に合わせてやろうか……」
 滅茶苦茶に荒れた科学部、その中で柳川が部室を片付けている。
 ふと、一つのボタンに柳川の目が止まった。
「ちょっと待て、確かこのボタンは……」


  5:57分 

「ふぅ、まだ半分もあるよ…」
 普段なら、もう終わっていてもおかしくない時刻である。
 普段より新聞が重いと、自転車にもあまり積めないのでその分時間がかかるのだ。
「ヘィハリアップ、初日の出見に行こうよ」
「HAHAHAHAHAマイケール、慌てる古事記に福来るだぞ、急いでもショーが無いね」
 家族連れが歩いている。
 恐らく裏山に日の出を見に行くのだろう。
「もうそんな時間なんだなぁ…」
 平和そうに歩く家族を見てると、思わずその家族に両肩のキャノン砲を撃ちたく
なるが何とか自制する。
「あ〜あ、部長のマンションみたいに、この町が全部吹き飛んじゃえば配達しなく
ても良いのになぁ」
 ゆっくりと明るくなってきた町の空に、一筋の流れ星が光る。
「あ、流れ星」
(仕事が無くなりますように、お年玉が出ますように、この町が無くなりますよう
に、できればぼくだけでも幸せになれますように)
 必死に流れ星に祈るkoseki。

 ピンポンパンポーン

「ふえ?」
 学校のスピーカーから、いきなり音が鳴り出した。
 町中に響くほどの大音量である。
「あ〜テステス……ゴホンッ、あ〜私は本学園の教師柳川だ、先ほど本校の生徒が
間違ってICBM(大陸弾道弾 主に核ミサイル)の発射ボタンを押した、現在空
に見える物がそうだ。標準はこの町、後一分で命中するそうなので各自、それぞれ
の手段で脱出するように、以上」
「……はい?」
 空の流れ星は、燃え尽きて消える様子は無い。
 それどころかそのままだんだん大きくなってきている。
「あ〜それからkoseki、後で皆によーく謝っておくように」
「……はい??」


 その瞬間。


                                  ピカッ


 爆風と、光の本流が。


                      ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


 この町のすべてをなぎ払った。



 ……そして。





  6:00分 科学部部室

「おいセンセ、いったい何があったんだよ!」
「ん? ジンか」
 柳川がスクリーンから目を離さずに答える。
 スクリーンには爆風で倒壊した建物や火事の現場などが映されている。
 ……もっとも、死者や怪我人はあまり居ないようだ。
「さっきkosekiがそこのスイッチを押してな、昔某国で作ってたミサイルが飛び出したのだ」
 柳川が、手元のスイッチを切る。
 そのスイッチには、校舎外部スピーカーと書いてあった。
「………昔、一体何やってたんだ、あんたは」
「気にするな、それに、少しは綺麗になって良かったじゃないか………もっとも、どうせ明日
には復興しているだろうがな」
 スクリーンの映像が変わる。
 そこではkosekiが町の人間に袋叩きにされていた。
 ………どうやら先ほどの会話をスピーカーから聞いたらしい。
「まぁ………今年も良い年になりそうじゃないか」

 初日の出が、爆風で黒焦げになった校舎を照らしていく。
 ………今年も、この学園は忙しくなりそうである。


___________________________________________

…………え〜と………明けましておめでとうございます(爆死)
……本当は時間測って書こうと思っていたのに、時計を忘れて企画倒れになったkosekiです(笑)

……新年早々ネタにされた方々、ゴメンナサイ(汗笑)
今年もよろしくお願いします〜(ペコリ)