Lメモ  女々しい野郎の歌 投稿者:koseki




  二月十八日金曜日 午後5:20分

 朝から不安そうな色をしていた天気は夕方ついに崩れ、試立リーフ学園から
下校する生徒たちに冷たい雨をプレゼントする。
 校門前の道は色とりどりの傘が花を咲かせ、空の色とは正反対に気分を明る
くしてくれる。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ今何分ですか? kosekiさんっ!!」
「多分もう十五分は過ぎてますよぉぉ」

 …そんな中、傘も刺さずに人の流れに反って走る人達が居た。

「ああっもう! kosekiさんがジェーン年鑑なんか読むから、こんなに遅くな
ってしまったじゃないですかっ」
「えぇぇぇぇぇぇ〜ぼくのせいですかぁ〜」
 kosekiと呼ばれた、肩に巨大な大砲を装備した男が情けない声で抗議する。
『東西…その右手に抱えたクトゥルフ神話の本は何ですか、それを探すために
三十分もかけて…お使いの最中だって言うのに…』
 東西と呼ばれた男の懐から、五センチほどの小さな精霊が顔を出す。
「命っ、うるさいっ」
『責任を押し付けるのは良くない事ですよ』
「そう言うお前だって雨が降ってくるから濡れたくないって、お店でごねてた
じゃないか」
「もぉ〜 こんな所で喧嘩しないでくださいよぉ〜」
「くっ……取り合えず急ぎますよ、これ以上遅れたらえっじさんに何されるか
解ったものじゃない…」
 じゃれ合う二人、その後ろを買い物袋を担いで走っていたkosekiは、ふと立
ち止まった。
「…………あれ?」
 下校口に立つ二人の男女、あれは…
「琴音さんと………浩之さん??」
 クラスメートの女子と、先輩男子だ。
 二人は何やら話し込んだ後、仲良く並んで雨の中を下校していく。
 …そして、その彼らを見つめる一人の女性がいた。
「……………あかりさん……………」
 一人校門に立つ彼女の目には、小さな涙が浮かんでいた……
 



  Lメモ  女々しい野郎の歌



「泣いてた? あの神岸あかりがか?」
「『あの』って……部長…それはないですよ」
 大半の生徒が帰り、部活動が活発になってくる午後五時十二分。
 エッジのお使いも何とか警告程度で許してもらったkosekiは、そのまま科学
部部長、ジン・ジャザムに付いて隠密行動と、偵察行動の訓練を受けていた。
 ………まぁ、要するに千鶴校長に依頼された柏木耕一教師の監視である。
「いや……でもどちらかって言えば、そのまま殴りに行くような女じゃなかっ
たか? あいつ」
「………何か、根本的に間違っているような気がしませんか?」
「剣士の癖に強力な魔法も使いこなすし、前に藤田が猫楓を拾うかどうか悩ん
でた時なんか素手で電柱を殴り倒すほどの怪力の持ち主だ、一度戦ってみたい
と思ってるんだがな」
「あの時は…お玉も使ってたような気がしましたけど…」
「大差ないだろ?」
「まぁそうですけど…でも、あかりさんがそんな力を出すのは」
「藤田が絡んでる時…だろ、まぁ、あいつも大変だよな」
「(大変って意味じゃ、部長も大差ないと思いますけど〜)」
 大人しく双眼鏡を持って監視を続ける。
 耕一は今、丁度トイレに入ったところだった。
「あかりさんが浩之さんを好きなのは皆知ってますけど…肝心の浩之さんはど
うなんでしょうね?」
「んあ? まぁ…嫌いだったらとっくに逃げ出してるんじゃねーか? 神岸と
いる限り、あいつに自由なんて殆ど無いからな」
「でも…あかりさん、あんなに浩之さんのことを思ってるのに…あんな悲しそ
うな顔して……」
「………お前も、もう少し器用に生きれたら楽だったのにな」
「え?」
「いいか、良く覚えて置けよ」
「あっはい…」
「人を好きになるのに理由は必要無い、が、一度告白して、それで駄目だった
らキッパリあきらめるんだな」
「………でも…もしあきらめることが出来なかったら?」
「そん時は…いつの日か振り向かせるために足掻いて足掻いて、足掻きまくる
んだな、そうすれば、いつの日か報われるさ…きっとな」
「………はいっ!」
「ちっ、俺は恋愛相談員じゃねえぞ、それより耕一センセはどこだ? まさか
見失ってないだろうな??」
「誰を見失うって? そんなに騒いでればいやでも気がつくぞ」
 いつのまにか二人の背後に立っている耕一、ポケットにしまう花柄のハンカ
チがぷりてぃだ。
「ってこうなったら千鶴さんとの契約は破棄だっ!! このうまそうな獲物!
俺がもらった!!」
「まったく…たまには付き合ってやるか」
 鬼化する耕一、全武装フル装備で対抗するジン、一瞬で三学年校舎は火の海
に変わる。
 そんな中…
「……はい、頑張ってみます」
 一人、kosekiはそう呟いていた。


  二月十九日 午前8:20分 曇り

「あれ? その手紙はどうしたの、浩之」
「ん? ああ、下駄箱に入ってたんだけどな…なぁ雅史、磁石もってねーか?」
「持ってるけど…どうするの?」
「いーから」
 浩之は雅史から磁石の付いたキーホルダを受け取ると、ゆっくりと手紙の上
をなでるようにあてる。
「……反応無し、剃刀入りって訳じゃねーみたいだな」
「……ラブレターか何かじゃないの?」
「そんな色気のあるもんじゃねーだろ、だって、これ男の字だぜ?」
 浩之が見せた封筒の上には、ミミズが暴れているような字が書かれている。
「だって………浩之はもてるから」
「雅史お前はもうイイ出てくんなっ!!」
 渾身の力をこめて雅史を蹴る。
 空いている窓から雅史は外に放り出されることになった、ここ、二階だが。
「え〜と、どれどれ……」
 誰も助けないのも素敵だと思うが、浩之は慎重に手紙の封を切る。
『お話があります、今日の放課後4:30分ころ一年校舎屋上まで来てくださ
い koseki』
「………は?」
 一時間目のチャイムが鳴ったが、雅史はまだ帰ってこなかった。


  一年校舎リネット屋上 午後4:22分

 普段なら夕日が見れる時間帯だが、あいにくの曇りで空は暗い。
 昨日の雨の影響もあって空気は寒く、所々の水溜りが暗い顔をした男を映し
ていた。
「うう〜ん」
 kosekiは時計を見てため息をつく。
「来てくれるかなぁ……」
 来てくれなかったら、自分は本当に間抜けな人間だと思う、誰かに言われる
までも無く、最近は自分でも解っているが。
きぃぃぃぃぃぃ……
 ゆっくりと、鉄製のドアが開く。
「あっ、浩之さん、早かったですね」
「おう、で、話ってのは一体何だ?」
「まぁまぁ取り合えずこれを」
 そう言うと、kosekiは自転車のグリップのような物体を浩之に手渡す。
「何だこれは」
「スタンサーベルって言って、触っても電流が走るだけと言うビームサーベル
の偽物です、じゃ、喧嘩しますか」
「は?」
 kosekiの持ったスタンサーベルが浩之に向けて振り下ろされる。
 とっさに押したボタンがサーベルの発生スイッチらしく、青白い炎が一メー
トルほどの長さに成長し、何とかサーベルを受けとめる浩之。
「待てぇっ! 一体なんだ、いきなりッ!」
 そう言いながらkosekiの腹に蹴りを入れて抜け出し、何とか体制を整える。
「うぐっ…効くなぁ……でも、浩之さんには負けたくないんですよっ!」
 再び切り込むkoseki、だが、不意をついていない以上、彼の行動はあまりに
も遅く、見分けやすかった。
「あかりさんは浩之さんの事が好きなんだっ! それなのに、何で浩之さんは
答えてあげないんですかっ!」
「ちっ、何でてめーなんかにそんな事言われなきゃなんねーんだよっ!!」
 浩之のスタンサーベルがkosekiの右肩に叩き込まれる。
「関係あるっ! ぼくだって…あかりさんが好きなんだっ!!」
 サーベルを左手に持ち替え、大きく横に振る。
 浩之はいったん離れて間合いを取った。
 が、kosekiは思いっきり踏み込む。
「いつもあかりさんが傍で待ってるって言うのに、何で浩之さんは答えてあげ
ないんですかっ!! 貴方がそうなら…あかりさんはぼくが貰うっ」
 頭を狙って振り下ろされたスタンサーベルは、浩之の左手で受け止められた。
「……黙って…聞いてればっ!!」
 浩之のパンチが、kosekiの鳩尾に入る。
「オレがあいつの気持ちに気がついてないと思ったか? ずっとそばに居たん
だ、あかりはお前なんかにゃやれねえっ!!」
 パンチが、キックが的確にkosekiの急所に決まる。
「ならっ何で早く告白しないんですかっ、この臆病者」
 kosekiのフックが綺麗に浩之の顔面に入った。
 ミシッと手の間接が悲鳴を上げるが、気にせず麻痺してない左手で殴りつづ
ける。
「知った…ことかっ!!」
 狙い済ましたようなカウンターがkosekiの顔面にヒットする。
「誰になんと言われようと、オレはあかりが」

ぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ……
 大きな音を立てて、階段のドアが開く。
「え〜と、浩之ちゃん、どこ?」
「んな、あかりっ!?」
「あうぅ失敗、浩之さん、すみません!」
 声が聞こえるや否や、kosekiはバックパックの紐を引く。
 爆発音が起きると、白煙がバックパックからあふれ辺りの視界を奪った。
「え? えええ??」
「ちっ、あかり、そこを動くなよ」
 さっきまでそばに居たはずのkosekiの気配は無い。
 そして、ゆっくりと煙が晴れていった。
「…何でこんなところに」
「何でって、呼んだの浩之ちゃんじゃ……ええっ? ねぇ、どうしたのその怪
我、顔があざだらけだよっ」
「ん? ああ」
 煙が完全に晴れる、屋上には浩之とあかりの二人しか居なかった。
「ああじゃないよ、ねぇ、痛くない? 早く病院に行かないと…」
「なぁあかり」
「え? なに?」
「明日…誕生日だったよな、なにかプレゼントでも買いに行くか?」
「あ……覚えててくれたんだ」
「馬鹿、忘れるかよ…で、何がいい、やっぱ熊か?」
「………ううん、浩之ちゃんが居てくれれば、私はなにもいらないよ………」
 もう時計は五時を回っている、昨日からの雨雲は今ようやく晴れてきていた。


  一年校舎リネット下の花壇

「いててて……」
 、kosekiは周りを見回した。
 落ちる間にクッションになった木の枝が辺りに散乱し、地面にはkosekiと同
じサイズの穴があいている、まぁ、屋上から飛び降りたのに、そのくらいの被
害ですんだのは幸いだろう。
 …しかし、とっさの判断とは言え
「良く死ななかったなぁ……」
「本当、無駄に丈夫でございますね、貴方は」
「ってはいぃぃぃ??」
 kosekiの後ろには、紫のタキシードを着て、山高帽をかぶった変わった男が
立っている。
「えと、…あなたは?」
「ああ、申し遅れました、私ギャラと申します」
「はぁ……ギャラさん…ですか」
「ふむ、風紀委員会でもあるkosekiさまには薔薇部の部員と言ったほうがわか
りやすいですかな?」
「あの、取り合えず今日は非番なんで、事を構えるつもりは無いんですけど…」
「いえいえそんな野暮な用ではありませんよ、それよりなんであんなことをし
たのか、少し教えていただきたくて参ったのですが」
「……見てたんですか」
「ええ、貴方が昨日、校門の前であかり様を見つめていたときからずっと」
「あぅ…あんまり…薔薇部の方に見られても嬉しくないんですけど」
 ギャラの、真剣な目を見てkosekiもまじめに答える。
「ただ…あかりさんが可哀想だったから、何とかして上げたいと思っただけ…
です」
「kosekiさまはあかり様が好きなのではないのですか? 何故そんな真似を」
「一晩冷静に考えてみて解ったんです、ぼくが好きなあかりさんは、結局浩之
さんを好きなあかりさんなんだって、だから、せめて浩之さんの本心を聞き出
したかったんです…」
 声がだんだん小さくなっていく、だが、丁度逆光で顔は良く見えない。
「で、あわよくば目の前で言わせようとあかり様を呼びつけた…ですか、いや
いやなんとも穴の多い作戦でございますな」
 立てますか? と聞いたギャラに、弱々しく首を横に振る。
「あかり様が幸せならそれでいい…ですか?」
「はい…でも」
「でも?」
「あきらめないで…また、頑張ってみようかと思ってますけど」
「……そう言うのは、あきらめてないと言うんですよ」
 ギャラが差し出した手を借りて、kosekiはゆっくりと起きあがる。

「(まぁ……単純と言うのは羨ましいことですね)」
 もう、学園は夜の時間になりつつあった。
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 え〜と………毎度毎度申し訳ございませんと言うかあかりさんの話し方忘れ
てちょっとあせりモードのkosekiです(苦笑)
 で、相変わらず他のLとの整合をまるで考えてませんね……(汗)
 …………う〜、ゴメンナサイ(汗)

(…その前に誕生日Lかなー、これ(笑))

 で〜このLを書く間にお世話になったディルクセン様、東西様、そして程よ
くプレッシャーを与えてくださった神海様、真藤様、そして、使わせてもらっ
たジン様、ギャラ様どうも本当にありがとうございました。
 では、失礼しました(深々)