Lメモ 「たまには悩む時も…ある」 投稿者:koseki


  リーフ学園 一年校舎「リズエル」


「ふいぃ〜」
 昼休みの中、kosekiは廊下の窓からグランドを眺める。
 木陰で昼寝をする人、ボール遊びに夢中になる人、さまざまだ。
 それらを見ると、kosekiは平和を実感してほっとする。
 だが、彼が探しているものはそれではない。
 彼の右目は義眼だ、その中に仕込んである望遠鏡の倍率を最大にして、平和なグランドを見まわす。
『あれ?今日は無いのかな?』
 少し寂しさの混ざったため息を吐きながら、kosekiは倍率を戻して、普通に廊下を歩き出す。
 その時、二年校舎『エディフェル』の方角で爆発がおきた。

「ダァ〜〜〜リィ〜〜〜〜〜〜ン私の手作りお弁当を食べて〜〜〜〜〜〜〜」
「いやだぁっ、断固として拒否するっ」
「まってよぉ浩之ちゃぁ〜ん」
「浩之っっ今日こそ僕の愛を受けとめてくれぇぇぇぇぇぇぇぇ」
「始まった始まった」
 学園名物の一つ、藤田浩之を狙う愛の大暴走だ。
 四季、神岸あかり、佐藤雅人らによる藤田浩之のハンティングである。
 時折、薔薇部やエルクゥユウヤなども混ざり、学園に恐怖と破壊を撒き散らす一団である。
 当然、風紀委のブラックリストにも載っているメンバーだが、それを取り締まる気はkosekiには無い。
 それどころか、一傍観者として、この騒動を見守るだけだ。
 そして、kosekiの視線は常に赤毛の先輩にあった。
「ふぅ………今日も元気そうですねぇ」
 ため息をつく。
 安堵とは違う、寂しさや辛さが混じったため息だ。
「どうしました?ため息なんてついて…」
「は、ははい???」
 気が付くと、kosekiの後ろに眼鏡をかけた白衣の男が立っていた。
 胸のポケットには、銀色の小瓶が入っている。
 よく、登山家などが持っている酒の瓶だ。
 kosekiは、少し考えると…
「え〜と……………………………………とりあえず反省室まで来てもらえますか?」
 と、いきなりkosekiはその白衣の男の右手首をつかむ。
「なんですか?、いきなり」
「あ、ぼく、一応風紀委員ですので…」
「ふむ、困りましたねぇ」
 白衣の男は、そう言うと残った左手で頭を掻く。
「大人だから…と言う事で見逃してくれませんか?」
 そう言うと、右手で小瓶をポケットから取り出し、中身を口に含む。
 いつの間にか、しっかり握っていたはずの男の右手が抜けていた。
「あ、あれ?」
「それより、なにか悩み事があるのですか?」
「え、いや、まぁ……………」
「もしよろしければ、私が相談にのりますよ?」
「………あの、あなた…誰ですか?」
「ああ、私はNTTT、この学園の校医ですよ」







 Lメモ 「たまには悩む時も…ある」





 

「学園の校医の名前くらいは覚えていて欲しいですねぇ」
「すみません…」
 第三保健室。
 相談室ともいわれるここが、NTTTの職場である。
「ああ、その辺の椅子にでも座ってください………コーヒーと紅茶、どちらが良いですか?」
「あ、すみません、じゃ紅茶でお願いします」
「はい、どうぞ………」
「………おいしい………」
「そう言ってもらえると嬉しいですね、どうです?落ちつきましたか?」
「は、はい、どうもありがとうございます」
「で、どうです?そろそろ本題の方に移りませんか?」
「あ、あの……………この事、誰にも言わないで貰えますか?」
「もちろん、秘密は守ります」
「じ、実は、すっすっ好きな人がいるんです……」
「ほう、それはいいねぇ」
「でも、その人には好きな男の人がいて、それでその男の人もその人を好きみたいで……」
「へぇ、恋敵がいるのか」
「こ、恋敵なんてそんな…」
「で、その人に告白はしたのですか?」
「いえ、その、あの……………」
「ふむ、少し待っててください」
 紅茶が無くなったのに気がつき、NTTTは流し台で新しい紅茶を入れ始める。
「はい、お待たせしました、どうぞ」
「あ、どうも………………さっきより美味しいですね、この紅茶」
「隠し味を加えましたから、で、どうです?この際告白してみては?」
「え、で、でも…………」
「いつかは通らなければならない道です、別に困る事は無いでしょう?」
「でも、あの人は……」
「好きな人がいる…といっても恋人同士と言う訳では無いんでしょう、なら、まだチャンスはあるじゃないですか」
「………そうでしょうか?」
「ほら、ここで悩んでいても思いは伝わりませんよ」
「うう……」
「ほら、男ならこんな時に勇気を出さないでどうしますか、さぁ」
「……はいっっ、行って来ます!!!」
「あ〜それから……」

 ばごぉぉぉんんん

「扉は手で開けるように…って遅かったか………」
 後に残されたのは、人型に穴のあいた扉だけであった。



 リーフ学園  放課後 体育館裏



 kosekiのセンサーに、反応がある。
 このパターンは……人間。
 こんな時間にここに来る人間はあまりいない、呼び出されでもしない限り。
 体が火照るように熱い、心の奥から勇気が湧いてくる。
 だから、kosekiは覚悟を決めた。
 視界に、赤毛の先輩が入ってくる…神岸あかり、kosekiが惚れた人。
 勝負は…一瞬。

「あ、あのああのあああののあのの……………あかりさんっ、付き合って下さい!!」
「ごめんなさい」

 そのまま、何事も無かったかのように通りすぎるあかり。
 そのまま、硬直したkoseki。
 こうして、彼の初恋は終わった…………



 翌日 学園正門



「NTTT先生」
「ああ、相田先生、おはようございます」
「聞きましたよ、一人の少年の恋を終わらせたんですって?」
「人聞きが悪いですねぇ、現実に目覚めさせてあげただけですよ」
「どうせ、ウイスキーでも飲ませて勢い付けさせたんでしょう」
「なかなか鋭い」
 と、NTTTは内ポケットからウイスキーを取り出して飲み始める。
「まったく………まぁ、悶々とかなわぬ恋に悩み続けるよりは良いのかもしれないけど…」
「おや、あそこに見えるのはkoseki君じゃないですか」
 確かに、脇にある掲示板の所にkosekiは立っていた。
 その周りにも、たくさんのギャラリーがいる。
「なんですかね?…どれ」
 NTTTは背伸びして掲示板を覗き見る。
 何という事は無い、いつもの情報特捜部のゴシップ誌だ。
「………さて、相田先生そろそろ職員室に行きますか」
「何だったの?」
「ただのゴシップ話ですよ」

『一年K君、二年の女子にあっさり振られる』
 総天然色でデカデカと張りつけられたタイトルの下に、呆然とする少年が写った写真が載っている。
 一応、目の所に黒い斜線が入ってあるが、その特徴的な姿だ、間違えるわけが無い、kosekiだ。
「コレって…………………やっぱりkoseki君?」
 初音と一緒に登校してきたゆきが、呆然としているkosekiに尋ねてくる。
「…………」
「ご苦労様」
「哀れねぇ」
「無残だな」
「可哀想に」
「わ、わ、悪いかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「だぁぁぁぁ、一年が切れたぞっ!」
「あかりさん、すぅぅぅぅぅぅきぃぃぃぃぃぃぃだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「しつこい人、嫌い 『ライデイン』」

 晴れ渡った空に、一筋の雷が落ちる

どごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん

 後に残ったのは、黒焦げのロボットだけだ。

「なぁ……あんた、諦めた方が幸せに生きれるかもよ?」
「ま…だ…ま…だ…」
 ガクッ
「………死んだか、誰か救急車〜〜でいいのかな?」


「平和ですねぇ」
「韜晦していなさい」
「良いんですよ、私は彼の悩みが取り除かれた時点で満足なんですから」
「また、新しい悩み事が増えたと思うんだけど……」
「その時はまた力になってあげますよ」


 天高く空は晴れ、今日もリーフ学園は平和である。

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 なんか………要らない波風を立ててますか、私(笑)
 いえ……ただ、「『絶対』かなわない恋をした男」になりたかっただけなのですが…
 例えば「ももいろシスターズ」の功野さんみたいに…(知らない人の方が多そうだ(汗笑))
 ああ、ギャラさん辺りからの反撃が楽しみだったりします(待て)

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  オマケ 
 『情報特捜部』部室

志保  「デコイ、なかなかイイ出来だったわよ、あかり関連ってのがちょっと嫌だけどね」
デコイ 「ヘイ、ありがとうございます」
悠 朔 「…なぁ…」
志保  「なによ、部長、廊下なんかに出て」
悠 朔 「どうでもいいが……危ないぞ、そこ」
志保  「え?」

ちゅどどどどどどどどどどどどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉんんんんんんんんんん

志保  「なによなによ、一体なんだって言うのよぉぉ」
デコイ 「何って…爆撃だろうが」
悠 朔 「どうせオマエ、また恨みを買うことでもしたんだろ」


 学園裏山

koseki 「第1段の着弾確認」
ゆき  「ねぇ、やめようよ」
koseki 「まだですゆきさんっ、そこの焼夷弾を取ってください」
ゆき  「僕、もう帰るからねぇ」

 射撃に夢中になっているkosekiと無理やり付き合わされたゆきが
 情報特捜部のメンバーであるシッポの戦闘機に追い掛け回されるのはこれから数分後の事である。

(ゆきさん、デコイさん、悠 朔さんごめんなさい)