試立Leaf学園
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突発ショートショートL6「ある文化祭に」
  投稿日:2008年6月20日(金)00時30分 投稿者:希亜 削除



 カチューシャにつけられた大きな兎耳が頭の上で揺れ、ストレートにおろさ
れた長い黒髪で本来の耳を隠す。
 カラーコンタクトによる紅い瞳が辺りを映し、シャープにアレンジされた空色
のエプロンドレスに身を包む。
 ティーセットを入れたバスケットを、両手で抱えるようにして持っている。
 その所作も含めて、背筋を伸ばし凛としたウサミミメイド姿の人物が、学園祭
の準備でにぎわう学園内を一路漫研の部室へと歩いていた。

「お待たせしました」
 その言葉と仕草に、綾芽は思わず息をのんだ。
 紅いカラーコンタクトの瞳に、その音の主を写してスマイルを浮かべた希亜は、
慣れた手つきでバスケットの中からティーセットを配置して行く。
 そこにいるのが女装した希亜だと、少なくとも知識としては分かってはいるのだ。
だがその人物には、いつもの希亜ののほほんとした雰囲気は微塵もなかった。
 音もなく、そして迷い無く配置されたティーセットに、今度はポットから紅茶が
注がれる。
「どうぞ」
「…あ、うん」
 綾芽は希亜の様子に戸惑いながらも、促されるままにカップに手を伸ばした。
 鼻腔をくすぐる香りを感じながら、口に含む。
 希亜は綾芽のその様子を見て、向かい側の席に優雅に座る。
 綾芽の味覚や嗅覚が、いつもの希亜の紅茶だと告げると、ようやく目の前の
女装した彼が希亜であると安心できた。
「そんな格好しているから、飲むまで不安だったんだよ?」
「ちょっと、驚かせたかった物ですからぁ」
 口をとがらせる彼女に、彼はいつもののんびりとした口調に戻して答えた。
「それにしても良く化けたよねー、衣装あわせの時は普通のメイドさんだと思っ
てたのに」
「もちろん、魔法は使ってないんですよ〜。でも悪ノリする知人の協力で、この
クオリティーのコスになりましたぁ」
「…凄すぎると思うよ?」
 彼女の目から見ても、彼のコスプレ… と言うよりは変装の域に達しているそ
れは堂に入っていた。
 確かに化粧等、彼女自身もレクチャーしたりしたが、大きなウサミミに朱い瞳、
そしてシャープにアレンジされたエプロンドレスという装いを、凛とした所作で
全て纏め上げているのである。
 まぁ、普通に凛とした女性に見えてしまう辺りは、彼自身衣装あわせの時に、
床に両手を着いてかなりのショックを受けていたのだが…
 現在の化けきった希亜を見ると、流石に漫研部員だよねーと変に納得してし
まう。
 さて、希亜のメイドスタイルに対して、綾芽はいつもの和装ではなく三揃えの
スーツ姿である。ステッキとシルクハットも用意されており、丁度二人で主と従
者という構図が成り立つようになっていた。
「些か安直ではあるんですけどね〜」
「でも。これってコスプレと言うには、良い生地を使ってない?」
「折角ですから少し良い物を選んでみました。コスプレでなくとも普段着として
着ていられるようにして貰ってますよ〜。 …あ、クリーニングには出せるので
安心してください」
 さらりととんでもない事を言う希亜に、綾芽は思わず着ている物へと視線を落
とす。
 確かにいつも着慣れている袴ほどではないが、動きにストレスを感じさせる物
はない。
 どんな仮装をするかを決めた直後。Rising Arrowにてひとっ飛びし、希亜の
行きつけのお店に連れて行かれて、そのまま採寸に応じたのは覚えているが…
「まさか、こんな事になるなんて、思わなかったよー」
 先日一通り着てみて、姿見に映った自分がまるでタラカヅカみたいと思って
しまった辺り、随分希亜に感化されたかなと笑ってしまった事を思い出す。
「でも、これで明日のコンテストの準備は完璧だね」
「はい旦那様」
「もー」
「でもぉ… この年でこのコスが完璧に変装の域に達するというのは… 流石に…
 ちょっと… ショックですよぉ〜」
 また衣装合わせを思い出してブルーに沈む希亜に、綾芽は慰みの言葉をか
ける。
 全校あげて準備に勤しんでいる学園祭。このお祭りに際し、何かしようと言い
出したのは綾芽で、希亜はそれに対して幾つかの選択肢を提供したのだ。
 だが、まさか希亜自身が女装するハメになるとは思わなかった訳で…
「ここまで来たら優勝を目指してがんばるのみだよ」
「そですね」
 お互いに微笑み合う、明日は学園祭本番なのだ。


 天候は晴れ、風も穏やか。
 学園内には様々な出店や出し物が並ぶ。
 生徒達や関係者達はそれぞれに装い、このお祭りが始まるのを待っていた。
 やがて放送が入り、開始へのカウントダウンが始まる。
 正式な名称は学園祭ではないのだが、たいして気にとめることも無いのか、
大半の参加者は学園祭と呼んでいる。
 カウントダウンの声は、一桁代に入って全校を包み込むようなどよめきとなり、
ゼロへと向かう。
 全校で一斉に告げられたゼロを合図に、特設のゲートが開き学園祭会場へ
と来客者がなだれ込んで行く。
 その一般の来客に混じってキア・ユーナの姿があった。
 本革のブーツに黒のタイツ、グレーのスカートに、所属する部隊のエンブレム
が施された青いブレザーを着た彼、キアも来客の一人としてこのお祭りの喧噪
の中へと紛れて行く。
 彼の性別は男なのだが、周りの誰もが彼を不審に思うことなく、彼を少女とし
て認識していた。
 人の流れに乗ってキアも進み、入り口の案内付近で配られている学園祭の
パンフレットを受け取る。
「ありがとう」
 生徒の一人からパンフレットをもらい、丁寧にそう返す。
「さて、会えると良いんですが」
「ご来場の皆様に申し上げます。こちらは学園祭実行委員会です…」
 全校に向けて放送されるのは、今回の学園祭における各コンテストの案内だ。
 パンフレットにも案内と投票用紙が挟んであり、その説明も兼ねておよそ30
分毎に案内を流すことになっている。
 キアはその放送の内容を聞き流しながら、パンフレットのページをめくって行く。
 そして五月雨堂の出店を見つけると、真っ直ぐにその場へと足を進めた。


 中庭に設けられたスペースには、関係社会人達の出店が並ぶ。
 その中の一件。比較的小物のアンティークの中から、学園祭向けの比較的
安い物を選んで陳列してあるのが、五月雨堂の学園祭参加の出店である。
 特に迷うことなく到着したキアは、お目当ての人物がいない事に気付き、
五月雨堂のエプロンを掛けた男性店員に尋ねてみた。
「ああ、あの二人なら今日はコンテストに出るから、そっちの方に行っているよ」
 宮田健太郎は開始直後に来た少女にそう答える。
 もちろん少女とは女装したキアの事である。
「仮装コンテストだったかな、そのパンフレットに乗ってると思うけど」
 キアは健太郎に言われるままにパンフレットのページをめくり、仮装コンテスト
のページにたどり着く。
 書かれている説明を読んで…
「…なお出場者はシングルまたはペアで行動し、黄色いワッペンを胸に付けて
います。最も良いと思われるペアの番号を投票用紙にご記入下さい?」
 キアは最後まで読んで、とりあえず一呼吸して健太郎へと視線を上げる。
「こんなのに参加なさっておられるのですか!?」
 思わず声を上げるキアに、キョトンとしてしまった健太郎だが、ぽんと手を打って。
「やっぱり、スフィーの世界の人かぁ」
「な、なっ…」
「俺は宮田健太郎、こっちのスフィーの保護者だ」
 慌てるキアに健太郎はそう告げる。
「も、申し遅れました。姫様宛の手紙を預かっております、キアと申します。つき
ましては手紙を直接届けるよう厳命されておりますので、ご協力をいただけな
いでしょうか」
 急に畏ったキアの申し出に、健太郎は今日は学園祭だからかな、等と思い
つつ言葉を返す。
「それは参ったな…、俺はここで店番をしなきゃならないから離れられない。戻っ
てきたら伝えて置くけど、探しに行った方が早いと思うよ」
「そうですか、では一回り探してみます」
「気をつけてー」
 キアが行ってしばらくして、ふと健太郎は、本当にあの世界から来たのかと思
い直し。
 同時に、スフィーの件は迷子の呼び出しをしてもらったら早かったかなと、
スフィーに対してやや不謹慎なことを考えるのだった。
 因みに希亜と名前が同じだと不思議に思うのは、さらに小一時間ほど先の、
客の波が一段落してからの事であった。


「どうよ、このコスプレ!!」
 学園の一角、廊下に何気なく設けられている姿見の前で、自信満々に言い
切るスフィー。
 彼女は子供向けテレビアニメの、お子さまは魔女、通称お小魔女の格好をし
ている。
 胸にはコンテスト出場者を表す黄色いワッペン、手には市販のステッキを持っ
てご満悦だ。
 ただ、どう見てもお子様が変身セットに身を包んでいるようにしか見えないと
いう、微笑ましさはぬぐいきれなかったが…
 それとは対照的に、リアンは少し恥ずかしそうに制服を着て歩いている。
 彼女は高等部の在籍ではないのだが、会場はコスプレOKと言う事で、制服
を借りているのだ。
 こちらはエントリーしてはいないので、別段ワッペンを付けているわけでもなく、
スフィーのお守りとして一緒について回っているのだった。


 中庭を一回りして、校舎の中へ入る。
 パンフレットの地図のページを開いたまま、一筆書きの要領で通路を回ること
にした。
 デフォルメされた校舎の地図が分かり易く書かれてはいるが、既に大勢の来
賓と生徒で人の流れに乗らないと進めないところも出てきていた。
「ふー」
 人混みから逃れるように、休憩用に設けられた教室に入る。
 教室の真ん中に用意された休憩用の椅子に座り、一息ついてキアは辺りを
見渡す。
 その教室の壁にはいくつもの絵が並べられており、端の方に協力美術部&
漫研&有志一同と掲示してあった。
 どの絵も暖かみのある絵であり、いつのまにかキアはそれら絵を一つずつ見
て回っていた。
「この絵って…」
「はい」
 丁度今、キアが見ている絵について話しているのが耳に入った。どうやら
一人はこの絵の作者で、もう一人はこの絵のモデルらしい。
 夕焼けに映える草原で、ゆったりと風に身を任せている、こちらの世界の
民族衣装を着た女性の絵だ。
 キアには色遣いや構図が、モデルへの暖かみ溢れる心情を描いているよう
に感じた。
 こんな絵を描く人とはどんな人なのだろうと、半ば感動と、半ば興味本位で
隣の絵へと動きながら、後ろで仲むつまじく話している二人を視界に入れた…

 思考停止。

 そう表現するのがもっとも適当だったと、後日キアは笑いながら思い返すこと
になる。
 スーツでしっかりと決めた男装の女生徒と、飾り物だろうウサギ耳を付けた紅
い目のメイドが、周りからは別次元的な世界を醸し出している様子をはっきりと
視認した…
 したのだが、そのあまりの周りからのかけ離れ具合に、思考停止に陥ってしまっ
たのだ。
 メイドの方から何度か「大丈夫ですか?」と声をかけられたところで何とか気
を持ち直したが、心の奥まで見透かすような紅い瞳と視線が合うと、脱兎の如
く教室から飛び出した。
「な、な、な…」
 先程の教室から少し離れた場所で、落ち着こうと必死になる。
 事前に得ていた情報と照らし合わせ、仮装コンテストが開かれていることを
思い出すと、あの二人も胸元に黄色いワッペンがあったこともあわせて、気持ち
はあっさりと落ち着いた。
 またキアが事前に得ていた情報の中に、コスプレという項目があったのも幸い
していた、同じく情報にこの学園の特色も関わっていた。
 同時に、自分はああいうのが苦手ではないだろうかと、あのコスプレを思い出
して考えてしまうのだった。

 自分の女装の事は完全に棚の上に上げて…

 気をひき締め直して、キアは当初の目的に戻ることにした。
 幾つかの出店や展示を経て、またふらりと教室に入る。
 今度の展示はいくつものパネルとその説明が掲げられていた。
 パンフレットに目を落とし、ここがミステリ研の物だと確認する。
 大陸毎に発見地や目撃地などが分かり易く示されており、内容自体も一般
的に知られている物やマイナーな物まで、様々な物が示されている。
 勿論キアにとってはそれら全てが新鮮な情報であり、自分の世界とは違う世
界でのミステリーに興味を持ったのか、キアは閲覧者の中へと混じってゆく。
「勿体ないですねー」
 今なお燃え続ける、北米の廃棄された石炭鉱山の紹介を呼んだキアはそう
感想を述べた。
 これらの掲示されている内容は、とても一般的であるが、それ以上に多岐に
わたる。その広く深い情報量に圧倒された。
 同時に、嫌でもここが別世界なんだと再認させられる。
 そうして閲覧していると、ふと声をかけられた。
「もしかして、キアさん?」
 振り返ると、AIAUS逃亡事件の際の現地の協力者の一人がいた。
「カリン久しぶりです」
 短かったとは言え、戦友の記憶とは忘れづらい物である。
「今日も、女装なんだね」
 花梨はキアの服をまじまじと見つめて、疲れたようにそう言った。
「こちらの世界で怪しまれないような装束を選びましたので」
「ふーん、やっぱりそっちの人なんだ。それじゃあ…」
 出来るだけ一般人を装うキアに、花梨の矢継ぎ早な質問が怒濤の勢いで投
げかけられる。もっとも花梨はキアを逸般人としてとらえているので、質問の方
もそれだけ容赦がなかった。
 防戦一方のキアがまじめに撤退を考え始めた頃になって、もう一人の戦友の
姿が希亜の視界に入ってきた。
「おっ?」
「タカアキ」
「久しぶりだな、ってずいぶん疲れた顔してるけど大丈夫か?」
「ちょっとカリンの質問責めにあって」
 げっそりとした表情を隠しつつそう言ったつもりのキア、対照的にご満悦な花梨。
 その二人の様子に貴明は笑い出さずに入られなかった。


 貴明に案内されながら、キアは学園祭の中を進んでゆく。無論、スフィーの
姿を探す事も平行してである。
 ただ、屋台の味や、各種催し物に翻弄されるのは、仕方のないことかもしれ
ない。
 いか焼きの生地に包まれたプリプリとした烏賊の食感を楽しみながら、貴明
の隣を歩くキア。その表情はご満悦の少女のそれであり、何も知らなければド
キリとさせられる物があっただろう。
 だが貴明にしても花梨にしても、キアが女装している事を知っている。さらに
貴明は女性に対して苦手意識があり、花梨は興味の対象としてしかキアを見
ていない。これではせっかくの女装したキアの容姿も全く意味をなさないので
ある。二人にとっては、せいぜい上手く化けた物だと思う程度だった。
 だからこそ、この際は余計な思考に惑わされることなく、純粋にこのお祭りを
楽しむことが出来るのだろう。
 結局、一回りして貴明達と別れ、五月雨堂の出店に戻ってきた時には、学
園祭もたけなわになっていた。
「ああ、戻って来た」
 店先に近づくキアに気づいた健太郎が、店の奥へと呼びかける。出てきた
スフィー… と思わしき人物の姿を見て…
 姿を見て、キアは頭を抱えたくなった。
 やはり、こう言うのは苦手なんだなと再認識するキア。

 当然、自分の事は因果地平の彼方である。

「深く考えないでやってくれ、今日はお祭りなんだ」
 健太郎の慰めに幾分か納得したキアは、スフィーの前で跪く。
「スフィー様」
「何よ」
 お祭りの場を白けさせるような畏まった挨拶、その様子にスフィーは不機嫌
に答える。
「王国軍特務部隊所属のキア・ユーナと申します。国王陛下よりのお手紙を
お届けに参りました」
 そう言ってキアは封された手紙を差し出す。
「世界を越えて来るのに、いったいどれだけの労力が必要なのか、分からない
訳でもないでしょうに…」
 手紙という言葉に若干の違和感を覚えつつ、ぶつぶつと文句を言いながら、
スフィーは手紙を受け取り、魔法によって認証を済ませて開封する。
 そのコスプレに似合わぬほどに百面相を浮かべ、最後まで読み切ると黙って
店の奥へと消えた。
 キアも健太郎も、手紙に一体何が書いてあったのだろうかと思うが、二人が思
考に沈む前に、奥からリアンの驚く声が聞こえた。


 宮田家リビング。
「少しかかるようだから、飯食っていくと良いよ」
 エプロン姿の健太郎がそう言って食事の支度に入る。
 彼が冷蔵庫から材料を取り出したところで、再び声がかけられた。
「そう言えば、知り合いに同じ名前の人物がいるんだけど。知り合いかい?」
「同じ名前ですか?」
「ああ、希亜っていうグエンディーナとこちらの魔法使いの合いの子みたいな奴」
「確かに同じ名前ですね。その方はグエンディーナの人間なのですか?」
「いや、生まれは関西だって言ってたから、こっちの人間だな」
「そうですか」
 それから希亜のこと、こちらでのスフィーとリアンのこと。
 等々話をしていて、ふと健太郎の料理するその分量が多いことに気づいた。
少なくともキアの基準で八人分近い量はある。
「つかぬ事をお聞きしますが、今日は誰か来られるのですか?」
「いや、今家にいる四人分だけだけど。
 …ああ、スフィーが人間ディスポーザーかって位によく食べるからな」
「ちょっと、誰が人間ディスポーザーよ! せめて人間ブラックホール位にしてよ」
「スフィー、それだと対数ベースで悪化しているぞ?」
「そっちの方が強力でしょう?」
 無い胸を張り自信満々でそう答えるちびっ子スフィーに、健太郎は吹き出す。
 一方キアは敬愛する彼女の屈託のない姿に安心する反面、このやりとりに一
抹の不安を覚えないでもなかった。

 食事の用意が終わったところでリアンもキッチンに入ってきた。手にはこちら
ではありふれた便せんを持っている。
「姉さん、封をするけど忘れ物はありませんか?」
「大丈夫だよー」
 スフィーの返事を確認して、リアンは魔法による封をする。
 そうして、便せんをキアに差し出した。
「ではお願いしますね」
「はっ! 確かにお預かりいたしました、必ず陛下にお届けいたします」
 居住まいを正し、キアは大仰に便せんを受け取ると、それを胸元へしまい込
んだ。
「さぁ、食べようぜ」
 特に気にしていないのか、この状況に慣れたのか、健太郎はそう言ってご飯
をよそおう。

 健太郎の厚意を受けて、食事に着いたキアは後悔した。
 主に目の前の食欲魔人に対してである。
 キア自身、スフィーの人となりを全く知らない訳ではないが、目の前で次々と
消えて行くおかずとご飯の前に、胸焼けがしそうになってくる。
 軍隊生活で大食いや早食いは気にならないキアではあったが、目の前で次
々と消えて行くおかずとご飯という現実に、それらはあっさりと吹き飛ばされた。
 ちらりと健太郎とリアンの様子をうかがうが、そこには平然と食事を続ける健
太郎とリアンの姿があるだけだった。
 半ば諦めるようにして、これがここの日常なのだと受け入れ、彼自身も食事に
手を着け始めた。
 口の中に広がる味を、どこか懐かしく感じながら、キアも何時しか食事の輪の
中に溶け込んでいた。


 後日の放課後、カフェテラス。
「写真が出来ましたよ〜」
 相変わらずののんびりとした口調でそう言って、希亜は木製の写真たてを
綾芽に渡す。
 受け取った写真たての中には、セピア色に写る男装紳士の姿の綾芽と、
ウサミミメイド姿の希亜があった。
「半世紀ぐらい昔の写真みたいだね」
「はい、カラーのもありますよぉ」
 今度は封筒の中からカラーの写真を渡す。
「うわぁ、今見てもこれって女の子に見えるね」
「うぅ〜、良く化けたという事にしておいてください」
「…やっぱり恥ずかしかった?」
「当たり前です!」
 珍しく強く言う希亜をなだめる綾芽が、ふとこちらに歩いてくるスフィーとリアン
の姿に気付く。
「ねえ、あれ希亜君のお師匠さんだよ」
「え? ほんとだ」
 指摘されて振り返り、希亜は二人に手を振る。
「こんにちわ〜、この前の学園祭の写真出来たんですよぉ」
 そう言って、四人で写真を見ながら話に花を咲かせる。
 スフィーのお子魔女や綾芽の男装、希亜の女装ウサミミメイドやリアンの制服姿。
 そして、グエンディーナからやってきたキアの事を…

 最後にコンテストの結果は、そこそこ一般受けしたスフィーが23組中8位、
趣味に走った綾芽・希亜組が13位の結果に終わっているのを追記しておく。







キャスト(登場順)
悠 綾芽
キア・ユーナ
宮田 健太郎
スフィー
リアン
笹森 花梨
河野 貴明




投稿動作確認
  投稿日:2008年4月5日(土)14時27分 投稿者:XY−MEN 削除


確認。



平穏無事
  投稿日:2008年3月14日(金)23時52分 投稿者:koseki 削除


「朝刊ー、ちょ〜か〜ん〜お〜わ〜り〜♪」
「koseki君おつかれさまー」
「理緒さんおつかれさまです〜」
「二度寝して遅刻しちゃダメだよ?」
「今日は委員会の早番なのでこのまま登校なのです〜(しょんぼり)」
「あはは、がんばってね〜」
「は〜い、いってきま〜す」
 
 

 
「や、どうもご無沙汰しておりました。
光陰矢のごとしとか、月日のたつのも夢の内とかいいますけれど、最後に登場してからもう何年
ぶりになりますか。いやぁ何とも早いもので、僕なんか役柄忘れちゃってもー
あんまり暇なんで、たまには一日を綴ってみようかとも思いましてね?
まァ尺が短いので手に汗握るバトルとか、感動的な超大作とかは期待しないでくださいよ?
ま、僕にそんなの期待する人もいないでしょうけど、ね」
 
「さて、今日は学園における公的な武装集団こと風紀委員会の日常について。
好きでしょ? 戦闘。
僕は嫌いだけど」
 
「僕たち風紀委員会のお仕事といえば、本来は花壇の清掃とか、校内に残る生徒の追い出しとか、
エロ本隠匿者の摘発私的制裁といったところですがここは試立学園
テストケースであることを盾に取った、常軌を大幅に逸した治外法権の結果武装するわ魔法使う
わバイオハザードは起こすわ衛星軌道には戦艦浮かべるわちょっと撃ち合おうかとまぁ好き放題
やっちゃって
当然被害も甚大。
あんまり好きにやった結果学園側も匙投げて。
 
『学生のことは学生がやりなさい!』
 
という鶴の一声によって学園内の治安維持組織、風紀委員会が結成されることとなったのです。
まぁ、岩下さんのジャッジやきたみちもどるさんの校内巡回班の方が戦闘力は高いんですけどね〜
実際にどんなお仕事をしているのかといいますとー」
 
 

 校門前 

 
「おはよう」「Dセリオォォォォォォォッ! 今日こそ決着つけてやるッッ!!」「なにやらず
いぶん久しぶりですが、昨日も決着は付いたと思いますが?」「やかましいッ!喰らえ必殺!」
「おーっす」「はい、オセンにキャラメル〜。ラムネもありますよー」「さぁ今朝の大一番もジ
ン・ジャザムとDセリオ、グレン○ガンを見てテンションアップ中のジンが勝つかいつものように
Dセリオがあしらうか! 一口100円からさぁ張った張った!」「あ、オレDセリオに二口」「いや
ジンだろう、一口だが」「今日は服装検査がありますから、裏ボタンなどを改造している方はお
早めに第2購買部までどうぞー」
 
「えー、このように混沌とした登校風景をさばききるのがまず朝のお仕事ですねって、神海
さん賭博行為はやめてください。beakerさんもギャラリーにジュース売らないでって抜き打
ち検査なのになんでばれてるんですか!? ってか部長そろそろ校門閉めたいんですけどぉ〜。」
「邪魔をするなkoseki! 漢ならなぁ、出会った以上戦わねばならん相手がいるんだ!」
「難儀な性格だよねぇ、おはよう先いくね」
「あ、ゆきさんおはようございます〜」
「先にいくな無視するなぁッッ!? ええい黙ってそこで見てろ!」
 
「Dセリオ! 歯ぁ食いしばれぇッッ!!」
「あきらめの悪い人ですね」
 
右手のドリルを振りかざし突進するジンにDセリオは3線のレーザーを放つ。
一発は思いっきり狙いがそれてDセリオの足下を深々とえぐった、残る二本はジンの装甲に風
穴を開ける。
しかし浅い、正面装甲こそ貫通しているがその程度でジン・ジャザムは止まらない。
 
「無茶で無謀と笑われようと、意地が支えのケンカ道!」
 
だがジン・ジャザムがその程度で終わるとはDセリオも思ってはいない。
 
「ですがその傷ついた装甲でこれを受け止められますか?」
 
MOAB。
それはまさに鉄柱であった。
どこから取り出したのか長さ約九メートル、重さ9トンという火薬のかたまり。
本来なら空中投下するべき代物を、あろう事かDセリオは片手でジンに投げつける。
 
「全員口を開いて伏せてっ!」
 
kosekiの叫びに少し遅れ、強烈な閃光と爆風が巻き起こり、強烈な風は宙に舞いキノコ雲を形
成する。
無事なのはM・Aフィールドを張ってマルチをかばっているセリスと足下の穴に逃げ込んだDセリ
オのみ。
後に残ったのは吹き飛ばされたkoseki以下風紀委の面々と罪もない学生たち、そして……
 
「爆風は上に向かう、よって逃げるなら頭を低くするか穴を掘る、化学の実験だよなぁ?」
 
ぼろぼろになりながらも右手のドリルをかざすジン・ジャザム。
対しDセリオは穴の中。
 
「………誤算でした、一応考えてはいたのですね」
「科学部部長をなめるなッ! 必殺! ギガドリルブレイクッ!!!!!!」
 
勝者、ジン・ジャザム 
 
「強靭!無敵!最強! 粉砕!玉砕!大喝采! フハハハハハハハ!」
「ジ・ン・君☆」
「ち、千鶴さん!?」
「朝からゴミとかミサイルとかまき散らしちゃダメだってなんべん言えば解るのかな?☆」
「ちょ、千鶴さん包丁はダメ、ダメ装甲の隙間に突き立てないでああ切れる切れるアーッ!!!」
 
調理1分、スクラップのできあがり。
 
「………部長、ここはやはり『おのれの力で立ち上がれるか?立てれば良し、立ち上がれなけ
ればそこまでだ』というべきでしょうか?」
「やかましい!」
「はいドロー、つまり掛け金は親の総取りですよ?」
「「「「「「「「「「神海テメェェェェェェェェェェェェッッ!」」」」」」」」」」
 
早朝校門警備結果報告。
遅刻12(全員行方不明)、重傷15(内修理可能1)
 
 

 学園食堂、渡り廊下
 

 
本校の食糧事情はきわめて異常である。
元来教育機関という公の組織でありながら亜空間に存在し登下校は転移装置を要するだの山奥
に隔離されているだのと所在がはっきりとしない本校は、その学生および関係者以外に所在が
理解できないという特殊な環境にある。
結果光熱水道は自前で何とかするにしても食料、わけても多感かつ飢えている学生たちを満足
させるバリュエーションと量を提供することは史上かつ最大の命題であり、難問であった
これを解決したのが本校近所のZZZ商店が経営する第一購買部ー通称学食ーであり、かの商店
こそが本校の生命線を握っていると言っても過言ではない。
量は多く味もそこそこ、なにより安い。
ならば何が問題なのか?
 
「人手がね、足りないのよ」
「足りませんか? XY-MENさん」
「足りんね。考えても見ろ? おやっさんの店はパートも含めても十人といない、当然作れる
量は限られる、パンじゃ腹一杯となると高くなるからな。それに対しこっちはリネットエディ
フェルアズエル三校舎に入転校自由な生徒が不特定多数、これらが一斉に食料を求めて学食に
集うんだ。そりゃ争奪戦になったあげく殴り合ったり魔法ぶっ放して半壊させたりするだろう?」

だからオレのたこ焼き屋も儲かるんだがな、とXY-MEN

「『身の安全が保証されない限り、遺憾ながらしばらくの間営業を停止させていただく』と最
後通牒がきてますけどねぇ〜」
「はっはー、だからオレが委員長の命令で風紀の指揮を取ってるんだろう? わざわざ生徒指
導部の連中まで集めて」
「あ、隼さんおつかれですー」
「ふふふ、今ウチの真籐氏が各所にトラップを仕掛けてますよ」
「任せて大丈夫なんだろうな?」
「ふふふ、俺のプランに問題はありませんよ? あ、終わったらチョココロネ確保で一つ」
「へいへい、っと来たぞ! 一班二班、警棒抜けッ! 走る者、割り込む者、食券を奪う者、
武器を所持し使用する意志有りと見なす者に対しての発砲は任意!」
「「「了解!」」」
 
まず二階から屋根を伝い侵入を試みた不届き者が真籐の罠にかかり宙づりにされる。
学食の窓を突き破ってポーズを決めたTaSがラバー弾の十字砲火を浴びる。
偽造食券を使おうとした生徒が隼のくらげになめ回される。
しかし何より数が多い!
 
「ええいkoseki、直接火力支援」
「は、はいさっ 炸裂点は頭上1Mくらい、えー弾種は」
「さっさとしろ!」
「はいな、いっきま〜す」
 
キャノン砲が鼓膜をたたきつけるような爆音を轟かせ、高圧力で押し出された砲弾が
空中で炸裂する。途端砲弾から白いモノがあふれ、学食中が一寸先も見えない霧に覆
われた。
 
「げほっ、げほっ……テメェ、何を撃った?」
「暴徒鎮圧用のP弾、パウダー弾ってやつです〜 催涙剤を粉末にしたやつで大昔機動隊が
使った逸品ですよ?」
「ほーそうか、じゃあこの真っ白けの粉だらけになった学食で、どうやってメシを食うんだ
テメェは?」
「………おおっ」
「おおっじゃねぇこのがらくた砲台、バラしてキャタピラつけるぞこの野郎! 委員長に怒
られるのは誰だと思ってるんだ!」
「XY-MEN君?」
「げ、委員長……」
「ちょっといいかしら………この責任、誰が取ってくれるのか聞かせてもらえるかしら?」
「いやちょっと、それはkosekiが」
「わざわざディルクセンの生徒指導部から人手を借りて失敗なんて言わないよねぇ? 共同
作戦でもして緊張緩和しろって監査部のとーる君がうるさくしつこくねちっこくいうから受
け入れたのに泥塗ってくれて、時給がさらに下がるかな? それとも任務放棄で500円マイナ
ス? ねぇどっちがいいかなぁ?」
「どっちもいやだー!!!!!!!」
 
結局学食は二三日(物理的に)使用不能。
 
「kosekiー! テメェのせいだろーが!」
 
ついでに僕も当分の間罰登板(しくしく)
 
 

 放課後
 

 
「下校時刻を過ぎました〜 校内に残ってる生徒はただちに帰りましょ〜」
 
拍子木が高い澄んだ音を出し校舎に響き渡る。
バレーボール部、格闘部を除けばほぼ文系という本校の特色上、この時間まで残っている
物好きはほぼいない、もっとも

「幻八さんみたいに住み着いてる人は例外だけど〜っと、人が残ってるのは補習があるエ
 ディフェル校舎だけだね〜」

チェックリストの記載が終わり職員室に向かう。
教職員の数に対し圧倒的に生徒が多い以上、このような雑務も必然的に風紀委員の仕事と
なる。

「お? kosekiじゃないか、なにやってるんだ?」
「あら、浩之さん? 補習ですか?」
「逆だよ、志保のやつが補習で捕まってるから待ってるんだ。『帰りは憂さ晴らしにカラ
 オケいくんだから待ってなさいよ!』ってな」
「あは〜、それはご苦労様です。でももう施錠しますし、そろそろ終わるんじゃないです
 か?」

すでに日は地平線に落ち、空は赤から蒼を含んだ黒へ、そして星の煌めく夜へと変わろう
としている。

「もうそんな時間か。そうだ、kosekiもカラオケにいかないか?」
「え〜、今からだと校則の門限時間越えちゃいませんか?」
「風紀委員め、あかりも後で合流するんだけどなー」
「いく、いきます!」
「へーへー、 じゃあ校門で待ってるから早く準備しろよ」
「はーい」
 
浩之と別れ、以上がないことを当直教師に報告して自分の教室へ戻る。
拍子木を所定の位置に戻し、警備日誌をつけるのが一日最後の業務。

今日も楽しかった、明日も楽しいのだろう。

明日はもっとよい日でありますように。
 
「○月○日、平穏無事 kosekiっと」
 
 


おまけ?
 
 
そもそもLメモとは何か。
SSだろうが、Lだろうがみんな作者が好き買ってやるための道具じゃないかというアナタ、
そうそこのアナタのことだよお客さん!
同じじゃないんだよこれが。
 
否、断じて同じであってはいけなかったのだ。
SSの歴史はキャラ萌えの歴史でもあった、いかに他作家との差別化を図るか、いかに自ら
が愛するキャラを押し出すか。
とどのつまりは自分がLeafキャラと愉快に遊ぶにはどうしたらいいのか。
斬新でリアリティあふれるコンセプト、SSの歴史に新たな一ページを刻む企画となるはず
だった。
各作家の趣味を最大限に活用したキャラ設定、Leafキャラを集めた学校へのSS書きの編入、
部活や委員会活動を通しての交流。
厳に戒めるべきは思考停止的かつ他人が使えないようなな「俺つえEEEEEEEEEEEEEEEE」ご
とき没個性書き方であった。
 
体育祭、学園祭、アフロ、テニス、グラップラー
 
ありとあらゆるコンセプトが導入され、複雑な人間関係にSS書きは発狂し、新人は逃亡し、
リスト管理者は疲労困憊し、Lの結果がLで否定されるという捻れも発生し結果混沌とした。
 
オールマイティな企画の結果いかなるストーリーが生まれるのか、非日常の中の日常を書こ
うとすれば「パターン」といわれ、書き続けるにつれ周りとあわせなければならないという
永遠のジレンマ。
しかし、今更それをいっても詮無きこと。
今はただ万感の思いを込めて…
讃えよ 試立Leaf学園!
讃えよ Leaf!
 
私はここで筆を置くも、この学園はまだ終わってはいないのだ
ほら、耳を澄ませば新たなる息吹が………
 
 
「フォーーーッ!」
 
 
………フォーッ?
 
 
 

…………今じゃこのくらいが限界ですというか設定とかいろいろ忘れてます、ごめんもう
無理というかどこかで見たことのある話ばかりのようなというか
題材はミニパト、某ドリルなどでしたー
それでは



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